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軍師様の悩み事!  作者: エスカルゴ
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皆様おはようございますエルベルトです。

あの後現世に返されたは良いもののかなり眠くて神山マップ駆使してそのへんの洞窟で夜を明かした話する?


「ギシャアアアア」

「おはようアント君。良い朝だね」

「そいつ相手になんの躊躇いもなく朝の挨拶できるご主人様は人間止めてると思う」


昨日ギルが一人でウェルダンに焼いた人間の頭部をガリガリする人間位の大きさがある蟻に片手をあげて朝の挨拶をする。

蟻は食べるのをやめて、ペコリと頭を下げてきた。

こいつ二本足で立ってるんだよ。化物じゃね?


「ごめんね歯磨きタイムに。ちゃんと歯は磨きなよ」

「歯磨きだったの!!!???意外と綺麗好きだった!」


蟻はふるふる頭を振って、大丈夫という旨を伝えてくれる。

優しい。


「あっ意外と優しい……いやなんか朝から騒いでごめん……」


ギルが頬を掻きながら謝る。

いやお前も大概肝座ってるからな?見た目グロスプラッタホラーという最悪の役満状態の蟻に近所の人にやるみたいに話し掛けれるって相当だからな?


蟻は身ぶり手振りでちょっと待っててと伝えると、背を向けて何処かにいってしまった。


「どうしたんだろう」

「さぁな……ってかお前もかなり人間辞めてるよ?」

「えっ」


いやそんな心外そうな顔をされても……

昨日の食べる気の湧かない焼き肉祭りを思い出す。

安全とか色々全く考えずに全力をもってして焼き払ったあの地獄絵図を思い出す。


「論理感が吹っ飛んでるんだよ多分」


殺しても構わんとは言ったが、全員殺せとは一言も言っていない。

引いた。思い出して引いた。

あんな容赦無いとか知らんかったんや~!


「ええっ!あ、あのそりゃはじめてあったときのはすいません!!」


「えっ」


こいつ……自覚がない、だと……!?


ギルさんや、人を蹴るのは確かによくない。

でものう、人を程好く焼き上げるのはさらによくないんだよ……


今回ばかりはさすがにドン引きして、何も言えず思考停止した。

ふつう転生トリップものって容赦無いとか頭おかしいの主人公が一番じゃなかった?

何で僕の従者こんな頭のネジというか常識というか道徳が抜け落ちてるの??


怖……近寄らんとこ。


「あ、蟻さんが帰ってきた。」

「本当だ。あれなにもってんだろ。ギル解る?匂いとかで」

「それが出来るのはご主人様だけかと」


うるせー死んだ瞬間にちょっと鼻が狂っちゃったんだよ。

二・三日したら戻ると思うけど。


やって来た蟻が手に持っているのは……


「林檎?しかも二人分?えっくれるの??」


蟻はこくりと頷いて、ぽんぽんと僕の頭を撫でた。あとギルの頭も。


「あ、ありがとう……ございます……!!!」


多分目に見えて顔が輝いているであろう僕を、優しげな瞳で見守って蟻は自分の家に戻っていった。


「美味しそうな林檎だなぁ。沢山蜜がのってる」


「アント族の畑で採れる果物は一級品だよ。

僕これ孤児院で料理してもらうんだ~!」


「良いなぁ!俺もそうしたい!」


アント族は人間に畑のものをあげるのを嫌がる。

だから美味しそうだと思っても欲しいなどと言わなかった。それが彼等に対して見せられる精一杯の誠意だから。


だから今回もらえたものは、大切に食べようと思う。


そう決意して、洞窟から足を踏み出し、至るところが凍っている山を孤児院方向に下山していった。


帰りはギルとお喋りしながら。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


花魁の仕事になれてきた頃には、ずっと隣にいたエルも楼主としての仕事を覚え、持ち前の賢さで効率よくこなしていた。

未だ楼主見習いではあるけれど、ずっとみてきたアルにはわかる。


……エルは、絶対にここから逃げる気は無いと。


ならば自分も逃げないし、客と一緒に死なないだろう。

駆け落ちも身請けもお断りで、年季が明けたら旅には出るがまた戻ってくる。


「……エル」

「ん?どうした」


だから、ねぇエル


「簪を、頂戴」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


一人で女の子を待っていたら眠ってしまって、慌てて飛び起きたらその子を頭突いた話でもしようか。


「……っ~~!!!」

「……ごめん、エル……」


頭を押さえて呻くエルに、心の底から謝れば、エルはとても驚いた顔をしてこっちを見た。

ちょっと涙目だ。


「…………何。おぼえてんの…………?」


掠れるような小声だった。

驚いた顔でうごいてないはずなのに、泣きそうに歪んで見えるのは、僕の気のせいではないだろう。


……あー、そうだ。


みんなが、覚えているわけないんだ。エルの事。

僕だって覚えてなかったし、エメリーはエルがくるまえと同じような態度だし、覚えてないんだ。皆。


「……それより、心配したよ、ちゃんと」


あのときと同じようで違うように、座り込んだエルを抱き締めた。

泥だらけで、びしょびしょで冷たくて、でも、

"エルベルト"という一人の人間が、腕の中に居る。


自分の体温を分けるようにぎゅうぎゅう抱き締めていれば、背中に腕が回った。

どっちも前の時より少し成長している。

それがとても、嬉しくって、でもちょっと寂しかった。


「ありがとう……」


掠れる声でお礼を言われる。

彼女の頬を伝う熱い水は、まだ溶けていない雪と言うことにしておこう。



「エル、お腹すいてない?ご飯にしよう」


ぱぁと顔を輝かせたエルは、ご飯を食べた瞬間、見たかった笑顔を見せてくれた。

短い……取り敢えず、三歳から四歳終了です!

次からはかなりとんで六歳になるか、番外編かです!

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