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さて、そんな二人、言い合いに夢中で、当の僕がハニービー茶を飲んでほうと一息ついても気が付いていない。
こいつらこんなんで大丈夫か?と思いながらもこれが信頼の証だとして嬉しくなる。
でも流石に気がついてもらえないのはちょっと寂しいので、そろそろ声をかけようと思う。
『何でそうなるのよ!』
『うっせー!!分かんないもんはしかたねーだろ!?』
「何が分からないの?」
『こいつ、結界術が下手で下手で……
印の結びがちが……えっ』
近くを通りすがるときに、然り気無く会話に混ざった。
木の聖霊ちゃんは一瞬なんの疑問も抱かずに解説してくれたのだが、僕が会話に参加していることにやっと疑問を覚えたらしく、ポカンと此方を見ている。
「駄目だよ?教えてくれてるんだから、素直に聞かないと」
『ガキの癖に!大体なんでお前一日に一回は目の前に現れるんだよ!』
『人狼様は毎日ここにいるでしょ。一日に一回は現れるのは私達の方よ!』
「毎日会っちゃうよねぇ。何で~?」
本当にそうなのだ。僕は基本的……というか毎日、この花畑にいる。
ポイントの中でここが一番落ち着いて、手の届く絶景だからだ。
で、この子達は僕が花畑にいると大体やって来る。
風の聖霊君は嫌がっているが、木の聖霊ちゃんはむしろ僕に会いたいようだ。
いくら高位魔獣だからって、別に媚を売らなくても良いのに。
『……あれ、人狼様、そのお茶は何ですか?
魔力の残滓の匂いがします。上質な魔力の塊ですね』
「ハニービー茶だよー。行く手を阻んでたからさくっと駆除したらおじーちゃんが作ってくれたんだ。個人的には蜂蜜の方が好みだけど」
『人狼は甘いもんが好きなのか?』
「うん、好きだよ」
『ふーん……』
僕の返答を聞いた風の聖霊君がなにかを考え込むような動作をした。
あれ、バカにされるものと思ったのだけど。
木の聖霊ちゃんは子供らしいところもあるのですねと癒しスマイルで頭なでなでしてきた。
癒しかよ。同性なのにうっかり惚れそうだよ。
『人狼様、お誕生日っていつですか?』
「六日前にすぎたよ」
『あら。じゃあ明日おめでとう会しなければ』
「明日?」
『そんなこともわかんねーの?これだからガキは!』
さっきまで黙っていたはずの風の聖霊君がバカにしたように騒ぐ。
おーこれこれ、心底これだよ感ある~。
ツンデレな彼の言うところだと、妖精達の間では誕生日の七日後に、よう生きられたねと個人へのおめでとう会をするらしい。
おしちやかな?
話を聞いていると、やはりかれら、そして僕も人間じゃなくなったんだなと思う。
神にじゃないけど神隠し……されちゃったのかな?
何気ない会話のなか、そう思い、誇らしいような寂しいような感覚がした。




