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しとしとと雨が降っている。
前世の言葉を使うのなら、霧雨と言ったものか。
頬が濡れ、ブーツの中にも水がはいってグチャグチャ。
髪は緩く濡れていて、服も体に張り付いている。
運動したことによって熱い筈なのに、体力切れでも起こしたのか胸が冷えていく。
こんなになって、何で僕は女の子一人探してるんだろ。
降ってわいた疑問は、僕の己自身へ向けた嘲笑で解決される。
アルが泣きそうだったから。
フローラねえさまが不安そうだったから
テイクにいさまが苦しそうだったから
ライトが恐がっていたから
セドリックが嫌そうだったから
レスターがすがってきたから
エメリーが笑えていなかったから。
ぜんぶ、ぼくがきらいなかおだ。
だから、僕は自分の為に走っているんだ。
甘くなったなと言う心の中のどす黒い僕の首を飛ばして黙らせた。
嘲笑は何時の間にか、好戦的な笑顔に変わった。
「……ジョアンナちゃんを、返せ!」
瞬間高く高く跳躍し、人狼化した。
ひときわ高い木へと、固い爪を振り下ろす。
重力と身体強化で、雷が落ちたみたいな轟音と共に真っ二つに裂けた木。
その奥に赤い髪が見えた気がして、僕は木の中に降り立った。
……すると。
「いたっ!ジョアンナちゃん!」
ジョアンナちゃんが、大きな木の大きな空洞の中で、丸まっていた。
僕の声に反応しないと言うことは、眠っているのか気絶しているのか、それとも。
「……死んで……無いよね?」
ひくっと口元がひきつった。
まさかねーと思いながら、ジョアンナちゃんの手首を押さえる。
「み、脈が……ないっ!?」
びくっ!と肩を跳ねさせて、急いで脇を確認する。
……テニスボールが挟んである。
「……この悪戯やった奴絶対殺す……」
イラァッとした。通常時にしたら全く驚かない悪戯だが、こんな非常時にやられると、物凄く、ものすごーくイラつく。
何なんだ……態々この樹海擬きに訪れてやることがこんな下らない悪戯なのか……やった奴寧ろ大物だよ。ここで自殺するのは勿体無いよ……
テニスボールを引っ付かんで遥か遠くまで投げる。ご丁寧に脇に二個挟んである。
もういっそ脱力しながらジョアンナちゃんをだきかかえた。
……つったって、ここに来る前言った通り、既に方向感覚を狂わされている。それはジョアンナちゃんも同じことだろう。
起こしたって何の得もない子供を起こすよりかは、寝てるまんま送り返した方が良いだろう。
と、言うことで、実は僕、良いもの持ってきてるんですよねー!
「ふふん!転送陣~!護符バージョン!」
黒い札を懐から取り出す。
実は、いざというときに確実に逃げ出すために、一枚だけいつも僕の部屋に繋げられる護符を持っていたのさ!
やり方は簡単、まずは護符とジョアンナちゃんを用意します
①ジョアンナちゃんに護符をペタッとはる。
②もどれーもどれーと念じる。
③ジョアンナちゃんがひゅんっと転移する。
おしまい☆
一仕事おえたー、と、ふぅっとためいきをつき、今更ながらに気が付いた。
……これじゃ僕、帰れないじゃん。
自分のお馬鹿さ加減に絶望した。まさかこんなに馬鹿だとは思っていなかった。
と犯人は供述しており




