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最近めっちゃ短いですね。
すいません
「まぁいいか。誕生日」
僕はもう何百回めかのため息を吐く。
アルは未だ寝ぼけている。エメリーはさっきバイバイしたばかりだ。
僕はそっと、自分のふにっとしたほっぺをさわさわする。
……表情筋が動いていない。
徐に席から立ち上がると、食堂の扉を潜った。
歩いていくが、今日は渡り廊下で寄り道をした。
ここエストニアの孤児院ウロボロスでは、寒いからなのかたまに雪が降る。
僕は日常的に雪を目にすることは無かったから、ちょっと嬉しい。
その雪で出来た水溜まりに、自分の顔を写してみた。
見事な仏頂面だ。
なんにも興味が湧いてそうにない死んだ魚の様な目とか、ムスリと尖らせた唇とか、そもそも目が半分しか開いてないし、普通の無表情キャラみたく目がとても大きい訳でもないので只とても不機嫌に見えるだけだ。
……こんなんだから、ジョアンナちゃんがあんまり向き合って話してくれないんだろうか。
僕は周りに、自分でたって渡り廊下からこっちを見ているアルしか居ないことを確認し、じっと水の鏡を見詰めた。
……そして、精一杯の愛想でもってにぱっ☆と笑ってみる。
「うん似合わない。やめよやめよ」
ドン引きした。正直気持ち悪かった。
はぁーーーーーーと深~く溜め息をついたら、自分の頬をパン!と両手ではたく。
うしっ、気持ち切り替えよう!
渡り廊下に戻ると、アルが此方を見ていた。
いや見られてるのは知ってたけど。……やっぱアルも引いたのかな。僕の(一応)笑顔。
終始無言で渡り廊下を歩いた。……気まずいんだが。
聖職者の振りをする務めとして、一応神に祈っておく。
それが終われば、あとは人狼化の練習だ。
昨日実戦になったばかりだったので勘は取り戻せているが、人狼化したときにどんな魔法が使えるのかきょうみある。
アルには掃除してもらいながら、人狼化の研究は続いた。
……あれ?無属性魔法、エフェクトと身体強化しか使えないぞ?
空き家の書物で覚えたのは使えるはずなんだがなぁ。
何でこんな無意味な…
いや、身体強化は使えたら便利だな。
無意味繋がりじゃ無いとしたら、何なんだ?
確か、これは僕のオリジナルだろ?
イメージしやすいとか?
いやでも
「エル」
「どうしたアル?」
一瞬で思考を中断し、アルの方に向き直る。
アルは言いにくそうに口をモゴモゴさせたあと、俯いて、顔をあげたと思ったら、頭をブンブン振った。
突然始まった百面相に、僕は戸惑いつつどうした?と声を掛けた。
アルは暫く俯いてぴるぴる震えていたと思ったら、覚悟を決めたように此方にばっと顔を向けた。
「……エル、は、普通に笑ってる方が、可愛い……と思う」
アルは茹で蛸のように真っ赤になっている。
いくら同じ赤でも、人狼化状態の僕らの目の色より現実的で微笑ましい赤だった。
……成る程、さっきの百面相は照れていたんだな。
愛しさが顔に溢れそうになりながら、僕は微笑に留めておいた。頑張ったぞ皆誉めてくれ。
「そうか。ありがとう」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あーーーーー!もーーーーー!」
夜、また人気の無い湖で、僕は浸かっている水面をばしゃばしゃした。
顔は温かさだけではない火照りがある。
顔を押さえ、ぴるぴる震える。
「だから口説き文句なんだってぇ……!」
まさか未だ四歳児にあんなポテンシャルがあるとは思わなかった。
かっこよすぎてはく……!
照れていたせいか何時もより逆上せるのが早い。
勢いよく上がるとくらりとした。
少し不機嫌になりながらも、大きなシャツ(エメリーの)を着て、湖までの扉を開けた。
扉右手が食堂。また喧騒が聞こえたから覗いてみれば、
「お前っ!昨日はよくもボクを騙したな!」
鈍い音と共に、僕の飼い犬……セドリックが殴られているのが見えた。今日はレスター一人だ。
僕は目を細め、食堂のなかに入っていった。




