21
翌朝。
「ほらーアル起きろー。僕教会に行かなきゃなんないんだから」
いつの間にか僕を抱き枕にしていたアルを静かに揺らす。
アルは未だ寝ぼけている。寝汚い奴ー。
今日も今日とて寒い。何ヵ月とか数えてないけどここに来てから最低一ヶ月はたったから、んー、最低後三月で僕の誕生日だなぁ。
この世界の月の表しかたは前世と特に変わらない。違うのは、四月(この世界ではオブライエンの月と言われている)が年越しで、年越しが終われば豊穣祭と言う豊穣の神オブライエンを称える行事があること。
まぁ他にも色々月の名前はあるがめんどいから心のなかでは前世の呼び名でいこう。
誕生日。祝われたいっちゃ祝われたい。
でもどうせ皆知らないし別に良いや。
そんなことよりアルを起こすのに集中しよう。
「アル……起きろってば」
「……ん……え、る?」
何回かアルの体を揺らしまくったら、アルが目を擦りながら起きてきた。おお奇跡。
よいしょっと体を起こすも、アルの腕が布団に引き戻す。
「……またどっか行くの」
「アルさん起きてたんですか!」
「……うるさい」
(理不尽!!)
感情の見えないその声から、昨日の可愛さは見当たらない。
僕はアルに、昨日みたいに抱きついた。
膨れっ面だよ悪いか。
「夜は兎も角、昼は何処に行くにも着いてきて良いから、離せ」
あーもう。と背中とんとんしてやると、アルは嬉しそうにうん、と呟いて起き上がった。
可愛すぎか!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
相変わらず薄暗い朝の食堂にて、隣でねむねむしているアルのせなかを高速とんとんしながらエメリーに今日の悩みを相談した。
「アルが可愛すぎてつらい」
「わー心ッ底どうでもいい」
「エメリー最近僕の扱い雑ッ!エメリーにとって僕はなんなのさっ!」
その言葉を発した瞬間にハッとした。
……やっちまったぁ……。
エメリーは目を細め、ピンク色の唇を蠱惑的に歪める。
僕の頬をいつものさらっとした感触じゃなくて、崇拝か欲望か。確実な熱を持ってゆったりと撫でた。
「……とーぜん、大事な大事な太陽だよ?」
ぽんっと紅に染まる頬に、エメリーが満足そうに笑った。
ふとした瞬間に見せるこれは、エメリーが男だと感じさせる。
ちょっとやめてほしいなぁと思いながら、アルの腕に頭をグリグリしてやった。
「そう言えば、そろそろオブライエンの月だね」
「えっ嘘ぉ」
「……今は、マクガノンの月(三月)だよ?」
マクガノンは武と正義の神。武の神は二柱いて、双子だと言われている。
マクガノンが仕えるのは豊穣の神オブライエン。
武と悪の神であるディーキンは飢餓の神キャドバリーである。
キャドバリーとオブライエンが一年間戦争を続ける。秋冬の間はディーキンが優勢で、春夏の間はオブライエンが優勢。
だから、春夏に近付いたときにはオブライエンの眷族が呼ばれ、秋冬に近付いたときにはディーキンの眷族が月の名に呼ばれるのだ。
4月と12月生まれは豊富な魔力を持っているのだ。4月はオブライエン、12月はディーキンが守護する月だからな。
そして、自分の誕生日にあと一ヶ月も無いと察しました。
説明だけでしたね。次から物語進みます。




