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ちゃぷり、と音をさせて暖かい湖に浸かる。
肩までつかっていちにいさーん。
十まで数えたらへにゃりと脱力した。
一人で服が脱げるようになり、何故か未だにいる男用の湖にも躊躇いもなく入れるようになった。そんな変化は要らない!
時間をずらしているため、まわりに誰も人はいない。
セドリックが何かやらないとも限らないが、僕はそこまで飼い犬の面倒を見る気はない。
「無くなってきたなぁ……心配事」
思えば、最初はギルと主従契約を結んだことでこんなところに来る羽目になったんだっけ。
前世から嫌われものだった僕が、皆と上手くいく筈もないよなぁ。とか思ってたら、あれよあれよと言う間にこんなことになった。
最近話してないけど、フローラねえさまやテイクにいさまに喧嘩売って嫌われたと思ったら、思いの外優しくしてくれるし、欲望のまま妄想に使われることはあるけど、ちびで生意気でひねくれたこんなガキを気にかけてくれていた。
エメリーは怒ると怖いけど基本甘やかしてくれるし僕のことを基本考えている。
アルはクーデレでちょっと傷付きやすくて不思議な子供。厄介だけど悩まされるのもまた楽しく感じた。
セドリックは……よく分かんないけどバーサーカーで考え方が清々しい。これからはセドリックを口説いてみるか。
レスターは可愛いけど毒の籠った視線が少し怖いかな。まぁショタコンとしてはショタの(しかも、男の娘!)冷たい視線とかマジご褒美なんだけどね!
ジョアンナちゃんは……まぁ可愛い可愛い煽り対象かなぁ。
ほんのりと逆上せて赤くなった体を腕だけ外に出して冷やす。
熱くなってきた体にひんやりと冷えた外気がちょうどイイ。
「はぁ……」
頭が冷えると、心配事は新たに次々と浮かんでくる。
次の魔物戦どうする?とか、少数しか兵力は無いのにどうやって強い 魔物達を屠る?とか。
もっと考えないとなぁ。
顔をまたバシャバシャ洗った。
明日からまた頑張ろう!
そんな決意を胸に、いつの間にかおいてあった大きなカッターシャツを着る。
普段使いの洋服はやはり臭い。洗濯はできるのに僕が一着しか持っていないからだ。
素材さえあればいくらでも練金できるのに。
はぁ……と大きくため息をついた。
ガチャリと湖までの扉を閉めて、食堂の大きな扉の前を通っていると。
「や、やめなよぉ……レスター」
「うっるさいなぁ。異人は黙ってなよ。ウーゴ!」
「す、すいません……すいませんすいませんすいませんすいません……!!!!」
変声期後の青年の辿々しいエストニア語と、変声期前の高い少女声の男の子の声と、高く透き通った美少女の声が聞こえた。
チラリとご都合的展開で開いていた扉の奥を見遣ると、亜麻色の髪にぱっちりとした金色の瞳を伏せた清楚系美少女、ワンダちゃんが蹲り、レスターがその前にたっているのを見つけた。
黒髪黒目、黄色い肌……つまり、日本人の姿をしている気弱そうな大柄少年、ウーゴが涙目で止めていた。
……めんどくさい……
眉根をしかめてでるかどうか悩んでいたら、セドリックが上から降りてくるのを確認した。
……ラッキー。セドリックは理不尽なことや曲がったことは結構嫌いなんだと、ご主人様知ってるんだよ?
ってことで、放置!
すたすた上に上がっていくと、セドリックは既にしたに行っていて、僕の部屋の扉の前には金と赤の混じった頭がひとつ。
思わず笑みが零れた。




