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心なしか短い。
「そもそもね、僕がエルベルトを甘やかすのは作戦の成功確率を高くするためだよ!」
「はぁ?……成功確率ぅ?」
エメリーは突然良くわからないことを言った。
エメリーが僕を甘やかすのと、アルとの仲直りは別だと思うのに。
なのに堂々とした顔をするエメリーに、関係あるのかもと思えてくるから不思議だ。
「アルナルドと唯一仲良いエルベルトが、アルナルド以外の人にべったべたのどろっどろに甘やかされていたら、嫉妬してくれるかなっていう僕とフローラねえさまの思惑だよ!」
「フローラねえさまああああ!?」
一体ねえさまは何をやっているのだろうか。寧ろなにも考えてなくてこんなことしたのだろうか。
いけない。フローラねえさまの僕の中のキャラ設定が前世の僕とそっくりになってきたぞしっかりしろ
「ン?て言うか、それだったらアルが仲良い?の僕だけになるんだけど」
「そう言ってるでしょ?大体アルナルドが渾名を許してるのは君だけだよ。エルベルト」
なんだそれ禿萌える。
そういえばアルの事アルナルドって呼んでるの僕だけだった気がする!
新たな事実が発覚してふおおおと興奮していると、チカリと目の奥が光った。
すぅっと少しずつ教会の中が赤く染まっていく。
ステンドグラスの色が、少しずつちがう赤の混じったものとなり、神の像、そして、神の像の近くの木の長椅子に座っていた僕らを照らす。
「……すごい……」
「これを見るのは久し振りだなぁ」
呆けたように目をキラキラと輝かせたエメリーに笑いかけた。
「どう?僕を甘やかさなかったらこんな特典を沢山見せてあげる」
太陽が沈んでしまっても、良い景色は沢山在るよ?
そう声を掛けると、エメリーは眩しそうに目を細めて、ううん、と首を振った。
ゆっくりと隣に座ったエメリーの小さく、僕にとっては大きなてが伸びてくる。
「僕の太陽は、そう簡単には沈まないでしょ?」
幸福そうに、泣くように笑って、エメリーはおでこを僕の額にコツン、とぶつけた。
そこで、僕は、エメリーの太陽が"誰"か漸く解ったわけだ。
解ったのなら、まずはエメリーを安心させないとなぁ。
頬に添えられた手のひらを、両手を使って包み込んだ。
「とーぜんだろ?……エメリーが、全部をくれたらね?」
大人の姿だったらただの口説き文句なのだが、僕らは子供だ。
エメリーはここに着てから一番の笑顔を見せた。
「勿論! 一生涯、使ってくれるんだよね?」
僕は挑発的に口の端を吊り上げて見せた。
「ハッ……嫌だと思っても離してやんねーよ!」
最強軍師と右腕、爆誕の瞬間である。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回予告(?)
「アルナルド、ちょっと教会見てきて」
「ん」
『嫌だと思っても、離してやんねーよ!』
「エル……?」
『ありがと!一生涯、そばに居させてね!』
「えっ……エメリー……?」
見られましたね!




