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エメリーと行動を共にすることになりましたエルベルトでーす。
エメリーはふんわりと柔らかそうな細く薄い茶色に、綺麗な銀の瞳をしている美少年だ。
そこの見えない笑顔と女の子のような姿が特徴で、とても可愛らしい。
アルナルドは食事は別のところでとっているためほぼ知り合いのいない食堂で一番頼りになりそうなエメリーのところに相談にいったら、相変わらず胡散臭い笑顔で押してダメなら引いてみろ作戦を提案してきた。
色々計算してみて成功しそうだと結論を出し、その提案を許可してみて数日……
「エルベルトー、何処に行くの~?」
「エルベルトー、一緒にいこうよ~」
「エルベルトー、水浴び行こー。」
「エルベルトー、」
「エルベルトー、」
「エルベルトー、」
しつこいのだ。
教会にいってもエルベルトエルベルトとちょこちょこ後ろをついてきやがって。
水浴びでも脱ぐのをすっかり躊躇わなくなったから良いものの昔の僕だったら間違いなくブチ切れていた、脱ぎにくそうだから脱がせると言うイベントも起こしてきやがるし周りの視線痛いし。
おはようからお休みまで冗談じゃなくずっと一緒等と言う寒々しい状況だ。
おかげさまで羞恥心なんか跡形もなく消えたよ。
いくら僕がショタコンのド変態の自覚があるとはいえ、これは酷い。
「エルベルト、一緒に寝よう?」
「嫌なんだけど」
「良いんだね、やったぁ」
大きなサイズの枕を抱え、ラフなシャツに着替えたエメリーがしっとりと濡れた髪、上気した頬で聞いてくる。断っても気弱そうな外見から想像もつかないごり押しで許可を取られることを自覚していながら取り敢えず断ってみる。
「嫌ダメって」
「じゃぁ早くお部屋に行こう!」
聞いてねぇ。
視線でちょいちょいあがりはじめた周りの子供に助けを求めるが、ジョアンナはアルを見るのに夢中だし、肝心のアルは遠いところにいて此方を見やがらねぇし、フローラねえさまはガッツポーズをしているし、テイクにいさまは手を振っているし、レスターはアルに絡みに行っているし、誰も役に立ちやしねぇ
大柄な黒髪の男の子……ウーゴは顔をそらすし、マジこいつらなんやねん。
脳内で悪態をついている間もエメリーに信じられない力で引き摺られていく。
この数日間こんな調子だ。
はぁ、とエメリーに聞こえるように大きな溜め息をついた。
当然のように相手にされなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ん~……はよ」
「あれ。エルベルト起きたんだ。おはよー」
窓から差し込む朝日と雀の鳴き声でゆるりと意識が覚醒し、いつもと同じくらいの時間帯に起きたことを確認した後、ゆっくりと伸びをして目を開けた。
さらりと頬に掛かる茶髪に、またかと溜め息をついて。
「エメリーはほんとにあさがはやいね。
今まだ二刻(四時)だよぉ……」
「太陽のためなら頑張れるよ」
「君は本当に太陽が好きだねぇ」
最近の朝の恒例行事の会話をする。
朝起きると基本的に近いところにエメリーの顔があって、あさがはやいねと言うと、必ず太陽の為だと返されるのだ。
良くわからんが、起こす苦労がないのなら良し。
「ちょっと待ってね、今着替えさせるから」
エメリーは僕がいつも着ているボロボロの衣装一式を持ってきて、僕が着ていたエメリーのシャツを脱がす。
……そう、エメリーのシャツだ。
一緒に行動することになってから二日目の水浴びの時に、僕が脱いだものをまた着ているのを見たときにエメリーが提案したのだ。
いつも同じ服だとリラックス出来ないから、シャツを寝巻きとして貸すよ、と。
それ以降エメリーはズボンだけはいて、僕はシャツだけ着て寝るようになった。
優しい手つきで着替えさせて貰った後、エメリーはまだ寝てて良いよと僕を抱き抱えた。
二歳年上であるエメリーは結構力があって、三歳である僕何てひょいっとかかえられるのだ。
最初は断っていたのだが、余りにも楽だった為エメリーにあまえるようになった。
すやすやと寝ていれば優しく起こされ、膝から降りないままご飯を口に運ばれぱくぱく食べる。
相変わらず特に味もしないが、栄養は補給された。
そして、今日は何処にいきたい?と聞かれ、教会と答えると分かったと返され渡り廊下を運ばれる。
やることもないのでみんなの特技とかを教えてもらい、ノロノロと寝ながらもどうやって部隊を造るか考えてみる。
終始エメリーに運ばれたまま過ごす事更に三日。
……甘やかされ過ぎだろ……!?
僕は教会で頭を抱えた。
三日もこの状態に甘えていた僕も僕だが、エメリーもエメリーで良くこんなクソガキを何日間も甘やかせたなと思う。
流石にこれ以上お世話して貰うわけにも行かず、僕はエメリーに直談判してみることにした。
「もう僕を甘やかさなくて良いよ!エメリー!」
「えっやだ」
聞き入れてもらえなかった。
甘やかしたいエメリーと甘やかされたくないエルベルト




