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短いです……短い……
こんにちは。初めましてエメリーと言います。
困惑している方が沢山居るかもしれませんが、僕もとても困惑しています。
僕は戦争孤児でした。元々エストニアの出身ではなく、隣国の貴族の息子だった僕は、ここの魔物に狙われやすいと言う特性も、それによる絶望も良くわかりません。
だから、でしょうか。
鬱々といつまでも引き摺っている他の孤児を少し鬱陶しいと思ってしまいます。
死んでしまったものは仕方がないのですし、それよりもこれからを考えれば良いのにと思います。
最近来た新しい孤児の小さな子供、エルベルトだけは、多分気が合いそうですが。
彼は男の子か女の子かわかりません。
何を考えているかも良くわかりません。
ただ、一つ明確なのは
「アルは一体何を考えて何を怒ってると思う?全っ然解んないんだけど!」
「それは……解んないの?」
人間関係にとても鈍感なこと。
後、困ると僕やフローラ姉さん、テイク兄さんの所へ行くこと。
相変わらず鬱々とした食堂で、一人だけ明るく大きな声でわっかんないよー!等とのたまっているのはエルベルトだけです。
食堂は少し薄暗く、縦長のテーブルが正面玄関から見て何個も縦に並び、鬱陶しいじめじめした雰囲気でさらに暗く感じるような状態です。
僕は、この子のからっとした太陽のような雰囲気が心地よくて結構気に入っています。
そうでもなければ、態々相談になんて乗らないんですけどね。
まだこの子と、ローマン君が来てから数日しか立っていないのですが、僕はこの子に少しだけ希望を見出だして居るのです。
先程この子が呼んだアルと言う渾名は、この孤児院きっての人見知り、アルナルドの渾名です。
彼はどれだけ好意を向けられても、どれだけプレゼントをされても、どれだけ話すようになっても、渾名で呼ばれることを良しとしませんでした。
なのにこの子は容易く呼んで見せた。
笑ったところを見たことがないこの子は、アルナルドの事を、一日でアルと。
必ず、この鬱々とした場所を変えてくれる。
太陽のようなその性格で。
「うんー、まぁご機嫌取り頑張って」
「他人事!?……頑張るけどさ」
少し驚いたように目を見開いた後、有効なアドバイス頂戴よと拗ねたように唇を尖らせたエルベルト。御免ね、役に立たなくて。とか心のなかで謝ってみます。
「いーアドバイスくれたら、僕が軍師となった暁には一生涯僕の下について離れない許可をあげるよ」
「まずは基本は情報収集だと思うんだ。
一番知ってそうなジョアンナにも聞いてみる?
アルナルドにも譲れない過去がありそうだよ」
一瞬で気合いを入れ直した僕を見たエルベルトは、呆れたように此方を見ました。
どれだけ僕の下につきたいんだよとエルベルトが口を動かします。
当然です。変えてくれる太陽につくのは当然ですし、じめっとしたこの空気がどう変わっていくのか気になりますよ。
「アルナルドは猫のような性格だし、押してダメなら引いてみない?」
「……引いてみる?」
信頼して下さってるところすみませんが、この作戦、下心スッゴクあります。
でも多分効果的なので我慢してもらうしかないですね。
「僕と暫く行動を共にして、アルとの接触を出来るだけ控えるのです」
「ほー……」
僕の話を聞いている振りをするエルベルトは、恐らくその凪いだ瞳の奥で誰にもわからないように計略を巡らせているのでしょう。
当然、僕を利用するメリットデメリットまでチェックされています。
子供心としては利用されるのは好ましくありませんが、元貴族でありますから、エルベルトの考えていることは正しいことだと理解できます。
それを知っていてなお、僕は笑顔を崩しません。
まぁ、エルベルトは嘘の笑顔だと見抜いているのですが。
エルベルト。
「じゃ、よろしくー」
「うん!よろしくねぇ」
腹の探り会いができるのは、君だけじゃぁ無いんですよ?
エメリーは結構腹黒ですね




