6章 5
家に戻っても憂鬱な気分は晴れなかった。髪は濡れたまま。乾かす気力も湧かない。零は機械だったんだ。そう思うと、色々な部分に合点がいく。だけど、あたしはそれを認めようとしていない。頭では認めているのかもしれない。だけど、心では認められていない。
あたしは、携帯電話を取り出した。零に電話を掛ける。何コールしても出ない。やっぱりあれは事実だったんだ。
零がこの電話に出れば、さっきまでのことは全て夢だったと思えるのに。
頬を温かいものが伝うのに気付いた。なぜだろう。悲しみ、悔しさ、そんな感情の涙でもこんなに温かいなんて。
「蓮。ご飯よー」
あたしはご飯を食べる気力がなかった。寝転んだ時にペンダントがチャラッと鳴った。そういえばこのペンダントトップって開くんだっけ。あたしはペンダントトップを開いた。中から紙が出てきた。住所の書かれた紙だった。零が託してくれたメッセージだ。
あたしはすぐにパソコンで検索した。出た場所をメモして、玄関へと向かった。
「蓮。どうしたの?」
玄関で靴を履いているとお母さんが後ろから訊ねてきた。
「ちょっと外に出てくる」
「こんな時間に? 明日にしたら?」
「今じゃなきゃダメなの。行ってきます」
あたしは家を飛び出した。
電車に乗って何駅も先に向かった。
住所の場所に近付くと、どんどんビルも消えていった。次第に草原のような場所にたどり着いた。周りに何もない。枯草がたくさんあった。踏みしめると、雨に濡れた土の感触がした。泥にはまらないように、更にそこから歩いた。辺りの景色に街灯はなかった。外は寒かった。周りに建物がない分、吹き突ける風が更に冷たさを増していた。月が空に昇っている。三日月だ。
住所の書かれていた場所には小さな小屋があった。中に入ろうとドアを開けようとしたけど、鍵が掛かっていて開かない。あたしはがっくりとうなだれた。そこへ、誰かが近付いてきた。夜の人気のない場所だから、少し怖かった。でもそれも、姿がはっきりと見えたら安心した。
零がいた。




