5章 6
またあの耳鳴りだ。頭の中の回路がショートしていく感覚がした。
本当に頭が割れているんじゃないだろうか。耳鳴りはどんどん大きくなっていった。
水面に大きな石を投げ込んだみたいに、大きな波紋が押し寄せるような頭痛がした。割れるような、締め付けられるような頭痛だった。
次第にその頭痛も治まり、耳鳴りだけが残った。頭の回路はいくつかショートしていると思う。
だから、すっきりと回復はしない。
窓の外には車のライトや街灯、街の灯りがあった。
光は希望だ。だけど、あの光は希望の光ではない。
人間に作られた、捻じ曲げられた希望だ。
本物の光はどこにあるんだろう。
蓮。君はもう見つけているかな。
昨日は零からの電話はなかった。あたしからも電話をしていない。こんな日は初めてだった。いつからか忘れたけど、毎日夕方に連絡を取り合うのが、あたし達の習慣だった。なのに昨日は全く連絡を取らなかった。
何か不安な気持ちがあった。あたしは、急いで支度をして、学校へ向かった。学校に着くと、那智が話しかけてきた。
「零君、今日は休みらしいよ」
あたしは切れた息を整えながら聞いた。
「なんで?」
「なんか風邪らしい。詳しくは聞いてないけど、病気だって」
零は出会ってから病気になったところを見たことがなかった。いや、病気に罹らない方がおかしいのかもしれないけど、それが零だと、何か違和感を感じた。始業の鐘が鳴り響いた。今日はまだ零に会っていない。そのまま授業が始まった。
「今日零君休みだって」
太った女生徒が言った。
「休みなのは残念だけど、懲らしめるには良い機会じゃない?」
つり目の女生徒が言った。
「今日が一番良いかもね」
痩せた女生徒は笑った。
「じゃあ、昼休みに決行ね」
太った女生徒が提案した。
「あの子どんな顔するかしら」
痩せた女生徒は興奮を漏らした。
「きっちりやりなよ。ちゃんとわからせないといけないんだから」
ボス格の女生徒が制した。
「わかってるって」
太った女生徒が頷いた。
「じゃあ、昼休みに」
ボス格の女生徒はそう言ってクラスに戻っていった。




