2章 5
購買に寄り、屋上へと上がった。いつも通り、あたしは寝転がって日向ぼっこをし、零はフェンスに寄りかかっていた。
パンを一つ食べ終えた。レモンティーが喉に溜まった食べ物を胃へと押し流していく。
「零ー。なんでクラスの女の子の誘い全部断るの?」
零は面食らったような表情をした。まさか蓮がそんなことを訊ねてくるとは、といった顔だ。あたしにはわかる。
「興味ないから」
高校生らしからぬ発言に異論を唱えた。
「本当にー?だってあたし変な子だよ。そんな子と一緒にいるより、クラスの女の子の方が可愛いよ」
あたしはこの言葉を否定して欲しかった。もし肯定されたら、その瞬間、零のそばにいられなくなる気がした。
「可愛いとかそうじゃないとかの問題じゃないんだ。僕は蓮のそばにいたいだけだよ。それ以外は興味がないんだ」
これはある種の告白なんだろうか。でも、あたしの早合点だったら嫌なので、そこには突っ込まないことにした。
「零って変だね」
零はくすっと笑って言った。
「蓮だって変なんだろ?」
「それは…」
揚げ足を取られた。
「でも僕はそれで良いと思うけど」
零は恥ずかしがるでもなく、さらっと気取ったことを言った。こういった言葉も零の特徴だった。
普通の男子なら恥ずかしくて言えないようなことをさらっと言い放ってしまうんだ。
「蓮の自分で思ってる変なところって、魅力だと思うよ」
あたしは大の字に日向ぼっこさせている身体を零とは反対に寝返りさせ、ぼそっとした声で言った。
「ありがと……」
零とのこの時間はいつまでも続く。あたしと零が望み続ける限り。そう思った。