篠原邸
ざあざあ という 雨の音で目が覚める。
少し違和感を感じるのは 今日は目覚ましハナコで起きなかったからだろう
雨はあまり好きじゃない 何故だか分からないが気分が暗くなる
寝ぼけたまま ぼーっと窓から街の景色を眺めていると
ひょい っと 下から何か顔を出した
「うわぁ!…なんだハナコか 心臓に悪いなあ」
眠気もすっかり吹き飛ばされてしまった
外でハナコが窓のロックを指差して口をぱくぱくしている
「開けろって事ね」
窓を開けると すいー とハナコが部屋に入る
「ただいま戻りました〜」
「おかえりハナコ 朝からどこ行ってたの?」
「ちょいとお散歩に」
雨の日の散歩か ちょっと楽しそうだな ハナコなら傘もささなくて良いだろうし
「次からはちゃんと玄関から帰って来る事 一応ここ2階だし」
「私 自力じゃドア開けれないんです」
「そういや言ってたな 、あれ?じゃあどうやって部屋から出たんだ?」
「どうやってって ケンさんが開けてくれたじゃないですか」
「マジか」
「マジです」
言われてみればそんな気がしてきた
確かに目覚まし時計も止めた記憶無いのに止まってる時あるしなぁ
そんな事を考えているうちに さっき飛んでいった眠気が帰ってきた
せっかくの休日だしもう少し寝ようかな と考えていると
ーピンポーン
と玄関のチャイムが鳴る
「あ!もう来たんですか」
と ハナコ
何の事だ?と思いつつ玄関へ向かう
寝癖頭のまま 玄関を開けると
「お早う その様子だと今起きたの?」
「おはよう って何で翠がここにいるんだ?」
「あら?ハナコさんに聞いてないの?」
そんな暇もなく翠が来たんだけどな と言いかけて言葉を飲む あぶない あぶない またキックをおみまいされる所だった
初めて見たが 翠さんの私服ちょっとダサくない?と 声に出さず 心の中で聞いてみる
「実はさっきお散歩の途中で偶然会ったんです」
とハナコが説明する
「今聞いたところだ それで何でウチに?」
「私今 お婆ちゃんの家に行く途中なの」
「へぇ」
何が言いたいのかよく分からない
「それでハナコさんも行きたいらしいから もちろん健も来るわよね?」
「えぇ!?何で俺も行くんだ?二人で行ってくれば良いじゃないか」
今日こそ 今日こそはゆっくりさせてくれ
と心の中で強く願う が どうやらその願いが叶う事は無さそうだ
「いいじゃないですかーケンさん どうせ暇なんですし」
「お婆ちゃんも健に会いたがってたわ」
あのお婆さんを出されたら もう逃げ場が無い
「分かった 準備するからちょっと待ってて」
と言い 急いで準備する
時間をかけると命の保証はない
「おまたせ!じゃあ行こう」
と言いに玄関に向かうと 二人の姿は無かった
機嫌を損ねて先に行ったのだろうか
と思い靴を履く時 あることに気がつく
「これ もしかして翠の靴?」
すると キッチンの方から
「あ キッチン借りてるわよ」
と翠の声が
俺はちょっと待ってて と言ったはずなのだが…
まぁいいか お腹すいてきたし
キッチンでは翠がサンドイッチを作っていた
「はい どうせ朝ごはん食べてないでしょ」
「おぉ!ありがとう!翠はきっといいお嫁さんになるよ」
しまった!またキックが!と思ったが 翠はぷいとそっぽを向いてしまった
随分遅めの朝食をとり 俺たちは翠のお婆さんの家へ向かう
「やっぱりいつ見ても立派な家ですねー」
全くもって同感だ ホテルと言われても不思議じゃない程 大きくて 豪華な家だ
やはり今回も来る事が分かっていたかの様に 結界は張られておらず よく来たね と温かく迎えてくれるのだった。
「外は雨が降っているから寒かろう」
そう言いお婆さんが 暖炉に火をつけると部屋が暖まり優しい光で満ちる
「全員ホットココアで良いかい? それと翠 ポケットに入っている禍々しいものは何だい?」
こちらが言う前に お婆さんが問いかける
「実はその事でお願いに来たの この霊 閉じ込めたのは良いのだけれど 私には祓えそうに無くて…」
「これも試練さ 翠ならきっと出来るから どうしても駄目ならまたおいで 」
ハナコがホットココアを飲み終えるとお婆ちゃんが
「さぁ 暗くなると危ないから 今日はお帰り ちょうど雨もやんだね」
と言い 門まで見送ってくれた
まぁ結果的にはホットココアを飲んで帰るだけだったのだが 心が和む
こうして俺のゴールデンウィーク1日目は幕を閉じた
最後まで読んで下さりありがとうございます
最近は花粉症がひどく ティッシュ箱が手放せない毎日です。病院に行けば和らぐのでしょうがいかんせんお金と時間が無く 今回は見送りとなりそうです。