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東高七不思議 壱

「ケンさーん!早く起きてください!」


夜は目が冴えて 朝は眠い。コレが逆になったらどれだけ楽だろうと いつも眠い目をこすりながら思う


「ふぁ〜 ハナコおはよ〜」


「おはようございます いい加減夜更かしやめたらどうですか?」


「それが出来たら苦労しないよ」


まだ寝ていたいが拳が飛んできそうなので学校へ向かう


「明日は起こさなくてもいいと思うと気が楽です」


「え?明日も頼むよ」


「明日からゴールデンウィークですよ」


そうだった、そうだった!


連休。なんと素晴らしい響きだ

俺の好きな休日。それが連なり連休。

それだけでやる気がみなぎってくる

俺達の通う 東高はいよいよゴールデンウィークに差しかかろうとしていた。


「今日さえ、今日さえ乗り切れば明日から連休だー!」


「無事に乗り切れるといいわね」


翠が不敵に笑う


「翠がそんなこと言うと本当に乗り切れなさそうだからやめて」


ガラガラッ!と乱暴にドアが開き 柊 が教室に入ってきた


「おっはー! 二人とも今日ってヒマ?」


今まで柊の誘いに乗ってまともに楽しめた試しがない


「私は暇だけど」


先手を取られた 少し断りにくい空気

だがここで負けちゃいられない


「ごめん、俺今日は用事が…」


チラリと翠がハナコの方に視線を向ける


「ええ、ケンさんは帰ってゴロゴロする用事があるらしいです」


こいつめ…


「帰ってゴロゴロする用事があるそうよ」


翠が告げ口をする


「何それ ヒマって事じゃん!じゃあ決まりだね 今日の7時に校門 集合ね」


そう言い残し また教室から出て行った

あぁ、俺の大事なゴロゴロする時間がー


「7時だったら一度帰って準備する時間があるわね」


と呑気に構えている

翠はきっと柊の誘いに乗った事を後悔するだろう


「そんな時間から何するんですかね?」


「こっちが聞きたいよ…」


目的を伝えずに集合時間だけ伝えるとは 誘われる側としてはたまったもんじゃない


そんな事があったせいか 授業には今ひとつ集中出来なかった と コレは平常運転だが、何か引っかかる

まぁいいか。わからない事は気にしないでおこう


成るように成るさ



とりあえず休み時間に柊をつかまえて 目的を聞かないと


「なぁ 柊 7時に校門集合して一体何するんだ?」


「それは内緒 来てからのお楽しみってやつ!」


「準備とか出来ないんだけど」


「準備はライトと非常食くらいかな」


その後も聞いて見たが適当にはぐらかされてしまった

やはり嫌な予感がする 目的を言いたくないとはどういう事だろう それほどヤバいのだろうか


「翠は何持って行く?」


「暗視カメラ」


「……」


え?ボケているのか?それとも本気?

表情に出ないからわからない


「え、何に使うの?」


「女子高生の撮影」


「なるほどな!」


これ以上は聞いてはいけない気がする

夜中に女子高生の撮影か、翠の触れてはいけない闇に触れてしまった…

そうか、翠はそっちだったか…誠に残念


帰宅後


「5時か、まだ時間はあるし 一眠りするか 悪いけどハナコ6時30分に起こして」


「目覚まし時計じゃないんですから…」


返事をせずに眠りに落ちる


「ふぁ〜よく寝た 、よく寝た?ヤバい寝過ごした?」


6時45分


「いやまだまだ大丈夫、これからすぐ出発すれば 約束の刻限までには十分間に合います!友を救う為 走れケンさん!」


「どこかで聞いたフレーズだな」


こんな事してる場合じゃない 急がないと


「何で起こしてくれなかったんだよー」


「すみません ちょうどアニメの良いシーンだったので」


「くっ!」


起こしてもらってる身なので強く責められない



「ビリケンおそいー 待ちくたびれたぞー」


柊に負けてしまうとは


「健は2分と29秒の遅刻」


細かい時間まで指摘されてしまった 暇つぶしに数えていたのだろうか

ついでに翠の私服が見れると思っていたが 残念ながら翠は制服で来ていた


「マジごめん 寝過ごした」


「まあ ビリケンだし仕方ない さて 東高七不思議調査隊 全員揃った事だし 侵入しますか!」


「東高七不思議を調査するの?今更?」


「あら?健は気づいてたんじゃないの?」


「いや 気づいてないよ 」


「昼間に納得してたじゃない」


「あ、あー!そういうことか!てっきり翠が変な趣味してるだけかと」


しまった 言いすぎた と思った時にはもう遅い


「うぐっ!」


腹部にズシンと衝撃が走る

まともに膝蹴りを食らってしまった

というか女子が膝蹴りってなんだよ


「行きましょうか 柊さん」


いまだ起き上がれない俺を置いて 歩き出す


「あれ?二人とも嫌じゃないの?」


「私はこういうのには慣れてるからね」


「誘ったら全員嫌がるから てっきり二人も嫌がると思ってた」


「なるほど だから目的を言いたくなかったのか」


じゃあ嫌がられると思ってたけど誘った訳か

ズルいやり方だな


「でもどうやって校舎に入るんだ? 確か鍵掛かってるはずだけど」


ニヤリと得意げに柊が笑う


「隊長なんだからその辺は用意周到だよ」


とポケットから鍵を取り出す


「三棟の鍵 借りてきちゃった」


「盗んだの間違いだろ」


「一応返すから 借りるって事で」


「いいのかそれで」


夜の学校は 昼とは違い静まり返っていた。普段何とも思わない廊下だが先が見えないだけでかなり怖い

いかにも幽霊がでてきそうだ。まぁ既に座敷わらしに憑かれてる俺が言うのもどうかと思うが…


「何か雰囲気出てるねー」


「柊は怖くないの?」


「ちょっと怖いけどワクワクする」


大した肝っ玉だ ちょっと驚かしたくなる


「ちょっとハナコ 今日満月だし柊に姿見せられないの?」


「多分行けると思いますよ やっちゃいますか?」


思った以上にハナコもノリノリだ

ハナコが先回りして次の廊下の曲がり角で 出てくる


手はず通り ハナコが出てきた


「ねぇ!二人ともアレ見える?」


予想通り焦っているようだ


「どれ?」


と とぼける俺と翠


ゆっくりとハナコが近づいてくる


「ほら!この女の子!物凄く可愛い!」


柊がハナコの方へ駆け寄る


「え?」


とハナコも困惑している 無理もない 柊が驚く予定だったのだから


「幽霊出たんだけど 怖くないの?」


「怖い訳ないじゃん!こんなに可愛い子なのに」


ふふふっ!と翠も思わず笑っている

これは一本取られた まさかやり返しを食らうとは


「ねぇ、この子連れて帰っちゃダメかな?」


止まるどころか勢いを増す柊


「やめてください!驚かした事は謝りますから!」


遂にハナコが謝りだした

何だこの状況


「柊さん その座敷わらしは健のものよ 返してあげたら?」


翠がフォローをいれる


「えっ!?ビリケンこんな可愛い座敷わらし飼ってるの?」


「ペットみたいに言わないでください!」


ハナコが涙目になっている

流石に可哀想になってきた


「まぁそんな感じだ 放してやってくれ」


柊は我にかえったのか 慌てて抱きしめていた手を話す


「ご、ごめんなさい わたし可愛いものには目がなくて」


驚かすはずだったハナコが涙目で帰ってきた

よしよし と頭を撫でてやるつもりだったが 帰ったのは翠のほうだった…いや別に悔しくないけど!


「この調子だと七不思議がビビって逃げてしまいそうね」


「俺も同意だ 今一番恐ろしいのは柊だな」


「私も同意です 死ぬかと思いましてよ」


「え?座敷わらしって死ぬの?」


「多分もう死んでるんですけどね えへへ」


人間には真似出来ないジョークだな



そうこうしているうちに 問題の屋上へ着いた


「何もいないな」


「そうね 私も特に何も感じないわ」


暗いからよく見えないが 翠が得意顔をしている気がする


何もなさそうだし帰るか そう言いかけた瞬間

人では無い 何かの気配を感じる


「ねぇこれって、」


どうやら翠も感じたようだ

ハナコの時とは違う 悪意の様なぞわぞわと全身の毛が逆立つ感覚。これは間違いなく悪霊だ


隣にいた柊がふらりふらりとフェンスの方へ歩き出す

柊はふらふらとおぼつかない足取りで フェンスの方へ向かう


「おい!柊!何やってんだ!」


慌てて止める


が思った以上に力が強い。華奢な柊からは想像も出来ない力で俺の腕を振り払う


「健!柊さんを押さえてて!力ずくでも構わないわ!」


「任せろ」


とは言ったものの こんなものは虚勢だ

正直、二人がかりでも押さえられるか分からない


すると急に柊の力が弱まった


「私にはこれが限界です!翠さんあとはお願いします」


何をしたか分からないがどうやらハナコが力を貸してくれている様だ。


翠がお札のようなものを柊の胸に押しあてると


「ギィイイヤァァア!!」


と とても柊とは思えない程おぞましい声で絶叫し 暴れていた柊の力がガクンと抜ける


「おい!大丈夫か?」


「柊さんは気絶してるだけよ。まさかこんな悪霊が私達の学校にいたとはね」


「ただの噂だと思ってましたが本当に出るとは驚きです」


その言葉 そのままハナコに返してやりたい

ともかく ここは離れた方が良さそうだ


「今日はもう帰るか」


「そうね」


と翠


結局 俺が柊をおぶって帰ることになった


帰り道 ふと翠が使ったお札の事が気になった

燃えるごみとかで捨てるのかな…と思いつつ軽い聞いてみる


「ところで翠 そのお札はどうするんだ?」


「念が強力すぎて私にはどうにも出来ないからお婆ちゃんに任せるわ」


「あー あの優しそうなお婆さんか」


「え?ビリケンは篠原さんのお婆さん会ったことあるの?」


俺の後ろから柊が口を挟む


「起きてるなら自分で歩け」


と柊を降ろす


「そういや どうして わたしはビリケンにおぶられてたんだろ?」


やはり柊はさっきの事を覚えていないようだ


「柊さんは 東高七不思議を探している途中にそのひとつ飛び降り女子高生に憑かれたのよ」


と翠が説明する


「えー!わたし憑かれてたの!?勿体ない事しちゃった」


「「勿体ない事?」」


俺と翠が口を揃えて聞く


「せっかく霊に憑かれる貴重な体験したのに わたし気絶しちゃってたもん」


「気絶しちゃってたもんって…あのなぁ柊 俺達が居なかったら死んでたかも知れないんだぞ?」


「まぁ、生きてたから良いじゃん!」


全くどこまでも肝の座った奴だ。


「その雑草のような図太さを少し分けて欲しいよ」


「柊さんらしいわね」


と笑いながら翠が言う


「ところで ビリケンの座敷わらし ちょっとなでなでして良い?」


「ひぇぇ」


とハナコが俺の後ろに隠れる


「柊 ハナコの事見えてんの?」


「もちろんだよ ハナコって名前か 可愛いなー」


ヤバい またハナコが泣いてしまう


「柊さん 見えるのならその子にもお礼を言っておいたら? さっき一緒に柊さんを救ってくれたのよ」


ナイスフォロー翠!


「え?ハナコちゃんが助けてくれたの?ありがとね ハナコちゃん」


「いえ、別に大したことは…」


と俺の後ろから答える

柊に対する恐怖心が消えるにはしばらく時間がかかりそうだ



柊と翠と別れたあと ハナコがこんな事を言った


「さっき屋上で 声が聞こえたんです "悲しい 寂しい 自分が誰か分からない"って」


言わずもがな女子高生の声だろう


「なあ ハナコ 一人ではどうしようもない問題はどうするか知ってるか?」


「?」


いまいち真意がわからないと言った顔だ


「人に頼るんだよ 一人が無理なら二人で 二人が無理なら三人で そうやってみんなで考えるんだ そうしていくうちに必ず答えに辿り着く 独りなんて無いんだから 必ず味方がいる 女子高生がどんな悩みを抱えていたか知らないが 俺は可哀想とは思わない」


「ふむふむ」


まだよく分からない表情を浮かべている


「まぁ つまりアレだ ハナコには俺がいるし 翠もいる ハナコ一人じゃ記憶は戻らないかもしれないけど俺達なら必ず探せる だから心配するな」


そう言うと


「ありがとうございます」


嬉しいのか泣きそうなのか分からない表情でそう言った


同じ七不思議 同じ記憶喪失

不安になる要素はたくさんあるのだろう


どうか女子高生の魂が安らかに眠れますように


そう祈りながら眠りについた

最後まで呼んでくださりありがとうございます

今日 京都では雪が降りました まぁ積もるほどではなかったのですが 散歩の途中だったので寒さマシマシといった感じです 最近ケータイに万歩計機能が付いていることを知りました 12km もう少し歩いた気がしたのですが人の感覚って曖昧だなと気づかされた1日です

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