掃除箱脱出作戦
俺は今 ハナコと狭い掃除ロッカーの中に入っている。
「狭いし 冷たい…ハナコ 壁すり抜けとか出来ないのか?」
「無茶言わないでくださいよ 空間の決まりには逆らえませんし 嫌なら出ればいいじゃないですか」
そもそもどうして俺達がこんなラブコメの様な展開になったのか 説明しなくてはならない
遡る事 数時間
「ねぇねぇ!ビリケンって 篠原さんと付き合ってるの?」
人のプライベートに土足で踏み込む コイツは柊 千夏またの名を 歩く爆弾。 校内の恋愛事情をほぼ全て把握しているらしい(本人談)
「デマだよ。デマ。 付き合ってない」
「一緒に帰ってるの見た人がいるけど」
「何でそれで付き合ってる事になるんだよ…」
面倒な事になる前に 早くこの場を切り抜けたい
「キスシーンを見た人がいるけど」
「だから何で…っておい!した事ねーよ!」
ガラガラッ
最悪のタイミングで翠が教室のドアを開ける
「あっ!篠原さん おはよー」
「おはよう 柊さん」
「篠原さんってー」
マズいぞ 翠が真面目に応じるはずがない
「あ、そういえば今朝担任が鬼の形相で柊を探してたぞ」
「えっ?えええ!何でー?」
バタバタと教室から出て行く
良かった 柊が俺よりもバカで本当良かった
柊には後でじっくり説明するとして
「翠 学校で変な噂出回ってるらしいけど 全然気にしなくていいからな 」
「私と健が付き合ってる噂?」
遅かった もう既に本人に届いてた、
「なんだ知ってたのか なんて答えた?」
「今は違う」
「何でそんな含みのある言い方するんだよ 」
まるで 今は違うけどこれからは付き合うかも知れない みたいなニュアンスを感じるじゃないか
「まぁいいか 人の噂も65日だっけ」
「あと10日は続くと思うわ」
「え?」
「75日ですよ ケンさん」
ハナコが補足する
中身が年上とはいえ 見た目が俺より幼いハナコに教わるのは少し屈辱的だ
朝にこんな事があったせいか 周りの目が気になりその日は翠に話しかけにくかった
それ以外には特に何事も無く1日が終わろうとしていた
事件は俺が下校の準備をしている時に起こった
「今日改めて勉強しようと思ったよ」
「健さんにしては感心ですね どうしたんです?」
流石にハナコに負けたからとは言いにくい
「まぁ 色々な」
「あ!朝の65日って言っちゃったやつですか?」
「何でわかるんだよ!」
「それ以外にケンさんが勉強する理由が思いつかないので」
「俺はそんなに単純なのか!?」
我ながら呆れてしまう
「実は私 ことわざや四字熟語には強いんです」
ちょっと試してやろう
「犬も歩けば?」
「棒に当たる」
「鬼に?」
「金棒 」
「犬に?」
「金棒に当たる あれ? 犬に?」
「まぁそんなの無いけどな」
何だろうこの 爽快感 初めてハナコに一矢報いた気がする
対するハナコは頰を膨らませている
「無い問題はノーカウントです!他の問題なら答えられますから!」
「さぁーもう帰るぞー」
俺が勝ち逃げをしようとした瞬間 まさに瞬間
廊下から人の声がした それが柊だと理解するのにコンマ3秒
「やばい!隠れるぞハナコ!」
「ちょっ!私は人から見え うわっ!」
そして現在 掃除箱の中に至るわけだ
自業自得も甚だしい
今はともかく この危機的状況を乗り切る事が先決
冷たくとも我慢
10分ほど経っただろうか
まだ声が聞こえる というか女子トークが始まる予感がする
悪い予感というものは大体的中するわけで 今回も例外なく的中。
さらに2、3人の声が増え 笑い声が頻繁に聞こえる
そろそろ右腕が凍傷になりそうだ でも 今掃除箱から出たら変な人じゃ済まないだろう
俺は今まさに右腕 と 高校生活どちらを選ぶかと問われている どうする俺?
選べない ならば両方取ればいい
僅かに体を揺らす
カタカタと掃除箱もゆれる
「ケンさんそんなことしたらバレちゃいますよ」
そう、今回はそれが目的だ
「ねぇ 掃除箱動いてない?」
声が聞こえる
「なんかヤバくない?帰ろ?」
よし!その調子だ!
「開けてみない?」
多分柊だ だが想定済みだ
ドンドンドン!
と内側から強く叩く
音に驚いたのか全員 逃げるように帰っていった と言うか 逃げていった 下校時間で暗かったのが幸いだった
「ふぅー助かった」
「ケンさんもたまにはやりますね」
「だろ? けど随分遅くなっちまったな あいつらが帰ってきたら嫌だしさっさと帰らないと」
翌日からその掃除箱は 呪いの掃除箱 としてしばらく校内で有名になったが まあ75日で消えるのだろう
最後まで読んで下さりありがとうございますm(_ _)m
そろそろ書くことがなくなって参り、私も参ってしまいます。某連載マンガの背表紙の様に 繋げて絵になる をモチーフに繋げて文章とかどうでしょうか?