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東高七不思議って?

その日は珍しく 俺より先に母さんが帰っていた


「おかえり」


聞き慣れない言葉。

少し恥ずかしいから小さな声で


「ただいま」


と返事をする


「そういえば 母さんは俺と同じ高校でたんだよな?」


「そうよ 小 中 高 全部 健と同じ学校に通ったのよ」


そうだった 父さんと母さんが俺と同じ 東高 で出逢った頃の話を飽きる程聞かされた記憶がある


「母さんが高校生の時 変な噂とか無かった?」


「変な噂?」


「そう 例えばトイレの花子さん とか 座敷わらしとか」


「そういやあった!あった!懐かしいわねー」


「聞かせてくれよ」


「一つ目は 確か屋上で飛び降りた女子高生。何でも昔屋上から飛び降りた生徒がいたらしくって 屋上へ行ったら オイデ オイデ と呼ぶ声がして まるで催眠術にかかったように ふらふらと飛び降りてしまうらしいわ。

二つ目は ツキコさん。 ツキコさんは満月の夜に校内を歩きまり 見回りをしている教師や忘れ物を取りに来た生徒に憑くから 月と憑きでツキコさん。

三つ目は…あれー?何だったかしら? 東高七不思議で有名だったのに忘れちゃったわ」


一つ目はともかく 二つ目はもしかしたら ハナコの話だったりしないだろうか 言われてみれば昨日は満月だったような気がしなくもない


「さんきゅー 母さん」


そう言い自室へ向かう。


「どうだ?ハナコ心当たりは?」


「うーん、確かに満月の夜は 力が湧きますが私に限った事じゃありませんし 何より人に憑いたのは ケンさんが初めてです 断定は出来ませんが 根拠が薄過ぎますね」


「そうだよなー」


そんなに全部うまく行くはずないか


少し情報を整理するか、ハナコの記憶があるのは今からおよそ70年前の30期生の頃からだ 俺のクラスメイト 篠原がハナコを教室に拘束 理由は不明。母さんの世代 60期生の間では東高七不思議 と言う 奇妙な噂があった ハナコとの関連性は薄い


こんなもんか

うーん、やはり鍵は篠原が握ってそうだな

明日来なかったら プリントを届ける名目で聞いてみるか


「健ーご飯よー」


母さんの呼ぶ声がする


ハナコご飯は?と聞こうとして さっきまでいた方向を見たがそこにはいなかった 俺と母さんに気を使って出かけたのだろうか?

と言うか憑いているのにお出かけって良いのだろうか

とあれこれ考えながらリビングへ向かう


「おおー!今日はオムライスかー!」


「たまにはいいでしょ?」


母さんと二人でご飯を食べるのは本当に久しぶりだ


作り置きではない 作りたてのオムライスは今まで食べた中で一番美味しかった


「美味い!」


「でしょ?」


ハナコにも食べさせてやりたい ちらりとハナコの事が脳裏に浮かぶ。母さんに話すべきだろうか 話したら解決に繋がるかもしれない いや、でも言うべき時は少なくとも今じゃない これ以上考え事はさせたくないし 引き受けたのは俺だ。


「ご馳走さまー」


食器を片付けまた自室へ向かう

今度はハナコがベッドで横になって勝手に俺のマンガを読んでいた


「明日は来るといいですねー篠原さん」


まるで他人事のように言う

全く人の気も知らないで


「俺はお前に明日が来るか心配だ」


「え?一体何のこ・・モガッ!?」


いきなり会話が途絶える それもそのはずだ 俺がくすぐり始めたのだから


「あははは!!やめて下さい ケンさん!何なんですか!あはは!」


「座敷わらしにくすぐり攻撃は効くのか 確かめたくなってな」


「もうわかったじゃないですか!あははは!もう降参!降参です!」


反省したようなのでというより 手が冷たくなったので中断


「しかしハナコは本当に冷たいんだなー」


「言ったじゃないですか」


「確かめないと気が済まないタチなんだよ」


「迷惑です」


言い切られた。

自分の有利な話題に転換する


「そういや 俺はハナコの記憶探しの手伝いをしてるが ハナコは俺に何かしてくれないのか?」


「そう言われても 私にできる事はほとんどありませんし…」


「あるじゃないか!ハナコにしかできない事が 」


「私にしかできない事?」


翌朝


「ケンさーん 起きて下さーい 遅刻しますよー」


「んー、あと5分」


「起きないと私が約束果たせないじゃ無いですかー 早く起きて下さいよ」


「うーん…」


そういやそうだった 寝坊しないように約束したんだった

寝ぼけまなこでリビングへ向かう

いつもより早く起きたおかげで時間に余裕がある

バタバタせずに済む


「行ってきまーす」


気持ちいい 余裕のある朝は本当に快適だ


「高校生にもなって朝起きれないなんて呆れますね」


「ちなみに俺は小学校から遅刻してた猛者だ」


得意げに言ってみたが とても胸を張れた事じゃないと言い終えてから気が付いた


「今日は篠原さん来ますかねー」


「さぁ どうだろうな来ているといいのだけど」


教室に入る と そこには篠原の姿があった


「ケンさん また教室に結界が張ってあります。前よりも強力な」


「ちょっと待ってろ すぐに解いてやる」


そう言い 篠原の前に立つ


「ちょっと話があるんだけど いいか?」


さて、何から話したものか 教室から篠原を連れ出したは良いがイマイチ話す事がまとまっていない。


「教室に結界張ったのって お前だよな?篠原」


違ったら恥ずいよなぁ 只の中二病になってしまう


「えぇ、そうだけれど どうしてそれを知っているの?」


良かった!ビンゴだ!


「俺が解除したからだよ 篠原は座敷わらしに何か怨みでもあるのかよ?」


「座敷わらし?何の事?」


「え?篠原が結界を張って あの座敷わらしを閉じ込めたんだろ?」


「私が封印したのは 学校に居着く悪霊のはずだけど」


これは予想外の展開だ。てっきり恨みつらみがあるものだと…だとすると


「お前もしかして 霊とか見えてねーの?」


瞬間 篠原の顔が熟れた林檎の如く紅潮した


「うるさいわね!霊が見えなくとも祓魔師は出来るわよ!」


踵を返し 歩き出そうとする


「ちょっと待って!」


「何よ」


と篠原


「篠原が間違えて 封印したのは俺の大事な友達なんだよ 解いてくれるまでお前をココから動かすわけにはいかない」


目に涙を浮かべて こちらを睨み


「わかったわよ 解けばいいんでしょ」


教室に戻る

まだ誰も来ていないようだ


篠原が印を組み ボソボソと何か呟くとガラスや陶器が割れるようなパリインという音がし


「悪かった すまない と座敷わらしに伝えて頂戴」


そう言い残し 座敷わらしの横を通って出て行った

どうやら悪い奴ではなさそうだ


「ふぅー 助かりましたよ ケンさん ありがとうございます」


「まぁ 何て事ないよ それより篠原に悪意は無かったみたいだし封印の件は許してやってほしい」


「どうなんですかねーまぁケンさんが言うなら仕方ありませんが」


まだ疑わしいといった表情だが あとは時間が解決してくれるだろう


「じゃあこの件は解決…してねーわ! 篠原に聞く事他にもあったの忘れてた!」


「本人はもう帰っちゃいましたよ」


追っかけようにもどこに行ったか分からない


「帰ったんだろうなーまた明日に持ち越しかー」


我ながら何という失態、

まぁこれでハナコが縛られる心配は無くなったし それを今日の成果としよう


今日もつまらない授業を聞き流しながら 今後のプランを考える 明日もう一度篠原に話を聞いてその後は…まぁなるようになるだろ


キーンコーンカーンコーン


ようやく授業が終わる 家で過ごす時間より授業中の方が長く感じるのはどうしてだろうか


カバンの準備をし教室を出る


「なぁ ハナコは授業中いつも何やってんだ?」


「今日は学校探検です この前は蟻の行列追いかけたりしてましたよ」


「授業きいてるより楽しそうだなー …あ!」


校門の前に見覚えのあるおかっぱ頭が


「遅かったわね」


いやいや 待ち合わせしてないし 勝手に待っていただけでは? と思ったがきっとこれは言ってはいけない


「何で篠原がココに?帰ったはずじゃあ…」


「あなたを待ってたのよ ついてきて」


と言って歩き出す

くぅぅ、篠原かっけー でも授業には参加しような

俺も人のこと言えたもんじゃないが


「そういえば 篠原って祓魔師だったんだな」


「えぇ そうよ ところであなた座敷わらしを大切な友達と言ったわよね」


ちょっと待ってくれ 隣に本人いるのだけど!

流石に恥ずかしい


「そんなこと言ったかな?」


「言ってたわ 」


恥ずかしくて見れないけど

ハナコがニヤニヤしてこっちを見ている気がする


「今日からあなたの世話になるわ 代償として弁当くらいなら作るけど」


「世話?ダイショウ?」


何の事だろう


「だから!座敷わらしと友達になったあなたに色々教わりたいのよ!」


何も怒らなくても…

それに色々って言ってもなー


「じゃあ 俺と友達になろうぜ そうすれば全部うまくいくじゃねーか」


「あなたがそう言うならそれで構わないわ」


素直じゃねーなー


「あと俺はあなたじゃなくて 健だぞ」


「そう、なら私も翠って呼んでもらうことにするわ」


「そういや翠は祓魔師やってて 東高七不思議っての聞いたことあるか?」



「えぇ、とても有名よ それで私が解決に乗り出したの」


「それで間違えてハナコを封印したと」


「座敷わらしハナコって名前なのね 健が付けたの?」


意外とあっさりスルーされた


「あ、あぁ そう 俺が付けた」


「そのハナコさんにこれを渡しておいて頂戴 いらなかったら捨てても構わないわ」


といってカバンからシュークリームを取り出した


「俺の横にふわふわしてっから直接渡したら?」


すると翠が シュークリームを差し出したまま俺の横まで歩いてきた

ハナコがそれを受け取る


「ならこれは仲直りの半分こです」


といって半分シュークリームを返す

翠は驚いた顔で受け取った


「仲直りの半分こだってよ」


「そう…ありがと」


そう言うと今朝同様 去っていった


だが俺は翠が微かに赤面したのを見逃さなかった


「あ、結局大事な事聞けなかった」


「まぁいいじゃないですか シュークリームも貰えたことですし」


「俺は貰ってないけどな 半分よこせ!」


掴みかかった手をひらりとかわし


「やめてください!これは私が貰ったんです!それよりも、大切な友達ですかぁ〜」


しまった!やっぱり聞いてたか

この後俺が散々辱めを受けたことは言うまでもない





最後まで読んで下さりありがとうございます

最近は寒すぎて出掛けることすら苦痛です

雪ならまだしも みぞれとはこれまた微妙

春の足音はまだ聞こえません(T_T)

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