ホームワーク
埃をかぶった俺の机でハナコが何やら作業をしている
外はうっすらピンク色で街灯がついていた。遠くでカラスの鳴き声が聞こえるが昼間はやかましく鳴いている蝉の声はまだ聞こえない 多分 4時〜5時あたりだろうか 起きるには早過ぎるので俺はもう一眠りする事にした。
再び目を覚ますと外はすっかり明るくなり、蝉がやかましく鳴いていた。
「ようやく起きたんですかケンさん 毎度のことながらよくそんなに眠れますね」
「あぁ、おはようハナコ」
まだ寝ようと思えば寝ていられるが流石に動かなくては何かされそうだ
「そういやハナコ朝に俺の机で何してたんだ?」
「すみません 起こしてしまいました? 実は私最近日記を書き始めたんです」
「へぇー 日記かぁ 小学校の夏休みの宿題で書いたきりだな」
ハナコのいない隙を狙ってこっそり読んでやろうかな
「因みにですが日記は私が持ち歩いてるので 読もうとしても無駄ですよ」
しまった!顔に出てたか
「何も早朝に書かなくても良いんじゃないか?」
「実は最近寝つきが悪いというか 悪い夢を見るというか 日記を書くことにしたのも朝の時間を持て余すからなんです」
「座敷わらしも夢みるのか…それはともかく具合が悪いなら翠に相談してみるか?」
「いえ、具合は悪くないですし 日記書く時間ができたので寧ろラッキーです 別に私達疲れる事がないので寝なくても構わないのですよ」
「羨ましい限りだな」
今日も夏休み。一週間と少しが経ち ダラけに拍車がかかり 生活が昼と夜が曖昧になる今日この頃
「そういや 最近翠や柊にあってないなー」
確かプールに行ったきり連絡も取ってない
「私は昨日会いましたよ」
「え?いつの間に!?」
「朝散歩してたらたまに優さんと翠さんに会います 宿題でも教えてもらったらどうです?」
「ふむ 悪かない」
翠と一対一は気まずいから柊を呼んでおこう
翠と柊に約束を取り付け
勉強道具をカバンに詰め込み家を出る
そういや翠の家に上がるのは初めてだな、少し緊張する…が悟られてはいけない!またネタにされてしまう
「いやー外に出ると夏って感じがしますね」
と涼しげな顔でハナコが言う
「そうだな この耐え難い暑さは夏以外にあり得ない」
「私は暑さはよくわかりませんが 青い空に入道雲 それで蝉の鳴き声 なんだかはしゃぎたくなります」
「暑すぎてはしゃぐ元気もないや」
それに夏は余り好きじゃない 単に暑いからではなく夏になると少し切ない気持ちになる。
小学校の頃を思い出すから?それとも悲しい夏の小説に重なるから?自分でもよく分からない
翠の家に着いた頃には例によって例の如く汗だくだ
ーピンポーン
いつもの事だが翠はインターホンを押してもすぐには出てこない 勿論この事は了承済み だから俺はこの時間にタオルで汗を拭う
女の子の家に汗だくで上がるのは流石に出来ない
「開いてるわ」
10分ほど待たされた挙句 この一言。
開いてるなら先に言えっての 心の中で悪態をつき
玄関をくぐる 因みに翠の家は洋館風のお婆さんの家とは違い 純和風といった感じで共通点はデカい。
「おじゃましまーす」
玄関で翠が仁王立ち…いや、迎えてくれた
「よく来たわね 柊さんはもう来てるわ こっちよ」
中庭には随分大きな松の木が生えており 手入れが行き届いているようだ
長い廊下の一番奥に翠の部屋があり 面積は俺の部屋よりかなり広いが よく分からない置物や本が半分程占めており 実質俺の部屋と変わらないサイズになっていた
柊は真ん中に置かれたテーブルでこれまたよく分からない本を読んで
「おービリケン おひさー」
とだらしのない体勢で言う
「久しぶり 柊は宿題どこまでやったんだ?」
「言うまでもないじゃん そもそもやってたらこんな暑い中外でないよ」
やはり同志か
一同机に座り 勉強道具を広げる
「「さぁさぁ翠さん宿題を見せて下さいな」」
俺と柊が開始数秒 答案もとい翠の宿題を請求
「あら?今日は宿題をやる集まりでしょ?私も終わってないわよ」
「「えっ?」」
「翠が宿題をやってない?今日は雪が降るぞ」
「夏休み入ってから毎日忙しくてそれどころじゃ無かったのよ ちょうど今日終わらせようとしてたところよ」
「一体私は何をしにここまで…」
柊がワナワナと震えているが一応建前は宿題をやる会だ 俺たちが勝手に翠は終わってると思い込んでただけの事
「まぁ仕方ない!よし!ちゃっちゃと片付けよう」
と意気込んだのは良いものの 俺と柊の集中力では翠に及ぶはずもなく 結局ハナコ 俺 柊でゲームをしていた もちろんその間も翠は宿題をやっていた
日が暮れ外が暗くなり始めたので そろそろ帰ろうかと準備をしていると 翠が突如
「ねぇ、最近何かあった?」
と問いかけて来た
「いや、いつも通りダラけてるが?」
「…そう ならいいわ」
良いのかよ!というツッコミはさておき
「どうかしたのか?」
「何か分からないけど一瞬胸騒ぎが」
「うーん、そういえば最近ハナコが悪夢を見たとかどうとか」
「別に大した事はありませんけどね」
とハナコが補足する
「夢は案外寝る前の感情を引きずるから 寝る前にホッとするような事すれば良いわよ 音楽を聴いたり 楽しい本を読んだり お話ししたり」
なるほど、寝る前の感情か…
さすが翠 的確なアドバイスをくれる
俺と柊はほとんど手をつけていない 机の上に広げただけの宿題をもう一度片付け 翠の家を後にした
外はオレンジ色で暑さも随分とましになっていた
「やっぱ終わんなかったねー」
バックを振り回しながら柊が言う
「翠が終わるタイミングを見計らってまた行こう」
「自分達でやる案は出ないのですか…」
「いやーやろうとは思っているんだけど結局夏休み最後の日まで引きずっちゃうんだよねー やらないままで」
「俺も気持ちだけはあるんだけどなー」
ハナコは呆れて言葉も出ないようだ
そんな表情されると少し悔しい
柊と別れ ハナコと我が家へと向かう
「そうだ 少し寄り道してもいいか?」
そう言い 帰りに大きなショッピングモールで買い物をして家に帰る
少し早めに夕食と風呂を済ませ 部屋で今日買ったものを開ける
「そういやさっき何を買ったんですか?」
「まぁまぁ見てりゃわかるって ちょっと電気消してくれ」
ハナコが電気を消し 俺がそれのスイッチを入れる
すると真っ暗な部屋一面にプラネタリウムの様に星が映し出された
それ は俺が小さい頃ずっと欲しかったもので明るい都会でも雨の日でも部屋の中で星が観れる簡易プラネタリウムだった
「わあ!すごく綺麗ですね!」
「だろ?星座の説明でもできればロマンチックだけどあいにく俺は12星座と夏の大三角くらいしか知らない」
「ケンさんらしいです」
二人で眺めているうちにハナコは眠ってしまったようだった
頭をなで いい夢が見れるように願い 俺もいつしか眠りについた
最後まで読んでくださりありがとう御座います
そして こんばんは お久しぶりです
1ヶ月ぶりになりました(´;ω;`)
暑さと湿気と戦う毎日 ってまだ6月ですが
8月が恐ろしい、、