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東高七不思議 参

昨日早く寝たからだろうか それとも 昨日街を散策したからだろうか

理由は何であれ 俺は今日自力で 起きるという快挙を成し遂げたのだ!


ハナコの手も借りず 登校時間の1時間前 7時2分。

俺はこの日を一生忘れる事はないだろう

小学校の頃ついたあだ名は 遅刻大魔王。なんだか悪くて強そうだったから寧ろ誇らしく思っていた

中学はみんな慣れてしまって 特にあだ名も無かったなー…ってなんで俺は心地よい朝から遅刻の過去を振り返ってんだ?


「あ、ケンさんおはようございます…えぇ!?おはようございます?」


いかん、俺が自力で起きたせいでハナコがパニックになりそうだ


良いじゃん、たまには一人で起きたって

と内心少し傷付きながら


「昨日早く寝たから今日は早く目が覚めた」


と理由を説明する


「なんだ、びっくりするじゃないですかー」


朝起きたくらいでびっくりされちゃ 俺はがっくりするよ


いつもより少し早めに登校すると


「あれ?ビリケン来てるって事は?そんな時間?」


「お!一宮!今日から優等生か?」


と、朝から散々な言われよう。


「ケンさんがこの時間に登校って奇跡ですもん」


教室に着いた頃にはテンションがいつも通り いや寧ろいつもより低くなっていた


翠にも何か言われるのかなー

と思っていたが


「あら、お早う」


とだけ

心中を察してくれたのか それとも 他人に興味がないだけなのか まぁ多分後者だろうがやれ槍が降るだの 地震が起こるだの 奇跡 と言われてる中で普通の反応が嬉しい


「わぁぁ!ビリケンがわたしより早く登校してる!」


教室の中で柊が大声を出す


「たまには早く来てもいいじゃんか」


このセリフ今日何度目だろう


「いや、ビリケンはわたしのライバルだからね 負ける訳にはいかないんだよ」


「気づいてないかも知れないけど いつもわたしとビリケンで定期テストの最下位争いしてるんだよ」


「へぇーやっぱ柊もバカなんだなー」


「だから他の所でポイント稼いでるんだよ」


「ポイント?何の?」


「分かんないけど勝負のポイント」


「集めたら何かになるとか?」


「ならない」


なんじゃそりゃ

こっちに向かって歩いてくるので 何かしらの補足説明でもするのかと思いきや


「ねぇ!二人とも今日続き行かない?」


言わずもがな七不思議の話だろう

勝負ポイントはどこへやら


「俺はいいけど」


「ごめんなさい、私は今日塾があるの」


と翠が言う 翠は頭良いからなー、祓魔師やって勉強もやって大変そうだな


「そっかーじゃあ、また今度だね」


「代わりと言っちゃあ 何だけどボクじゃあダメかい?」


急に話に入り込んで来たのは 十文字 修也

俺の中学からの友達で少しキザなヤツ


「えー、十文字くんにはアブナイよー」


なんだかとっても嬉しそうな様子で柊が言う

柊憑かれてアブナイ目に遭ったのにな と心の中でつっこむ


「大丈夫!ボクお守りあるから 実は前からうすうす気になってたんだ きっと役に立って見せるよ」


あれ?デジャブ?お守りというワードでつい

チラリと翠の方を見る


「なんでよ あげてないわよ」


まさかとは思っけど どうやら違ったようだ


「実はコレ、ボクの手作りお守りなんだ」


「あれ?十文字の家ってお寺とかだっけ?」


と聞くと


「いや、祈りを込めてボクが作った」


「マジか それ効果あんの?」


「絶大さ」


どこからその自信が湧いてくるんだ?


「まあ本人が信じているのと 作った人の思いがあるなら効果は期待できるわよ」


「へぇー てっきり決まった手順とかあると思ってた」


「まぁものによるわね」


お守りの話に飽きたのか柊が


「ともかく 来れる人は7時に校門前に集合ね」


と言い残して他クラスへ遊びに行った


「オゥケイ」


十文字は返事も少しキザだ と言うか正直その返事気持ち悪いぞ


また長い長い授業が終わり

一同は一度帰宅 集合時間まで時間を潰す



「ケンさん暇なので何かしませんか?」


「俺も暇だったんだ でもする事ないしなー」


「しりとりとかどうです?」


「しりとりかぁー、スペースとる割に大した文字数にもならないしな」


「なんの話ですか?」


「なんでもない、取り敢えずしりとりは無しだな」


「うーん、やることないですねー」


「そうだ!久々にコレやるか」


そう言って押入れからずいぶん前に買った人生ゲームを取り出す


「それ何ですか?」


「これは人生ゲーム 懐かしいなー小学校の頃によくやったんだよ」


「私 一度人生終わってしまったのですが」


「わあお ツッコミにくい事言うな 人生ゲームってのはサイコロ振って出た目の数だけ進む そして止まったマスの指示に従うってゲーム」


「なるほど、結局人生は自分で決めているようでその実 決まったルートを歩んでる事を再確認するゲームですか?」


「違う、全然違う 人生はそんなに不快じゃないし人生ゲームはそんなに深いもんじゃない ともかくやろう」


職業マス 俺フリーター、ハナコ政治家

重なる俺の借金に対し ハナコの増える札束


「あ!家を買うマスですね どこにしようかなー うーん、ココだ!」


と一番高い家に旗を指す 俺はこれ以上借金を増やすまいと ホームレスの道を選ぶ


結果は言うまでもなく 俺の惨敗。


「これ面白いですか?」


まぁそれほど成功しかしなかったら かえってつまんないのかもな 逆もまた然り。


「今回はたまたまだ、次は翠と優も入れて四人でやろうきっと楽しい ちょうど良い時間だしそろそろ行くか」


校門前 約束の7時

俺とハナコと柊そして十文字の4人が集まった。


十文字が開口一言


「健は可愛い幽霊を連れているね」


これには俺達だけでなく柊も驚きだった


「え?十文字くんハナコちゃん見えるの?」


「当然さ 昔から見えてるよ 紳士の嗜みってヤツさ」


「紳士の嗜みかはともかく 十文字憑かれた事あるの?」


「覚えてない 記憶がある頃からもうずっと見えてる」


知らなかった…十文字が霊感あるキザだったなんて


「見えるって事は心強いよね 今日の標的は陰湿らしいから 見える人が多いと助かるよ」


「役に立つってのはもう一つある 君達は七不思議を探ってるんだろ?ボク七不思議の一つ 動く銅像と友達なんだよ」


「本当に!?十文字くん一体何者なの?」


こいつ実は凄いキザじゃなかったんだな


十文字曰く 動く銅像は噂通り校長室の前にある初代校長銅像で中身も初代校長らしい気さくで話していて楽しい怪談らしい また銅像が出来た日 つまり今から85年前からずっと東高を見守っているとの事

これはもしかしたらハナコの事を詳しく知っているかもしれない。


「怖くなさそうだし 銅像はパスだね」


「いやー俺は話す銅像見てみたいな」


「じゃあ銅像はビリケンが一人の時に偵察してきて」


それが嫌だから今行こうって言ったのに!流石に夜の校舎に一人は…まぁハナコが居るしいっか


「で今日は何を探しに行くの?」


「今日はね 一本足(アンバランス)だよ 二人とも知ってる?」


「「いや 全く」」


「下駄箱のスリッパが片方だけなくなる事件が多発してるんだ それで目撃者によれば足が一本の幽霊が盗んでる それでアンバランス」


アンバランス 生徒の上履きを盗む霊

曰く、一本足 。

曰く、盗むのは片方で左足のみ


ちょっと情報量が少ない。もう少し推察すると左足の上履きを取るのだから 左足一本だろう。アンバランスだから非対称とかかな?


何にせよ今日は翠がいないのだから慎重にいかなくてはならない

情報量は多いに越したことはない


「柊 アンバランスの出没時間とかあるのか?」


「うーん、下駄箱に現れるって事くらいしか分からない」


「人襲ったりとかしないの?」


「それは聞いたことない」


うーん、まぁ上履きを盗む変態幽霊って事でいいのかな?

聞いている限り例の女子高生ほど悪質じゃ無さそうだ


「それにしても何で上履きなんて盗むんでしょう?」


ハナコがもっともな疑問を言う


「何かしらの儀式かも知れないね」


と十文字


「「「儀式?」」」


理解が追いつかない一同


「一番有名な話じゃ丑三つ時に藁人形を打ち付ける 初めて見たらイタズラか狂気にしか見えないもんなのさ でも実際に効果はある。霊も同様無意味な事をする霊なんていないのさ 何かしら目的や念があるはず だから今日の霊にしても何も無い なんて事は無いと思うよ」


十文字らしからぬ真っ当な意見


「ちなみに十文字は霊を祓えたりしないの?」


と聞くと キザな笑い方で


「あっはっは 出来るわけないじゃないか 僕は一般市民だよ?」


一般かどうかはさておき 今回は撃退は出来なさそうだ


校門を乗り越えると ちょうどチャイムが鳴った 普段何気なく聞いているからハッキリとは言えないがどことなくノイズの入ったような音。ラジカセで聞いているようなチャイムの音


「おかしいね この時間にチャイムが鳴るなんて」


なんだか今日の十文字は頼もしい。


「歓迎してくれているのかも!早く行こー!」


なんだか今日の柊は危なっかしい。

これは今日に限らずいつものことだ



校舎の前で俺たちは唖然とした

確かに俺たちの通っている東高に違いはないが 少し違う。

何故か窓が真っ黒に塗られていて 心なしか校舎自体が古びている気がする ここまで明らかに霊がいますよ感は生まれて初めてだ


「柊 後日にまた翠と一緒に来た方が良いんじゃないか?なんかヤバそうだけど」


「ボクも同意だね。素人がどうこう出来る霊じゃ無さそうだ 君達にも同じものが見えているなら アンバランスは格が違う」


しかし 柊は忠告を聞くようなやつでは無かった


「大丈夫、ちょっと見て帰るだけだから ちょっとだけ行ってみよ?」


と言い一人でつかつかと校舎の方へ進む 仕方なく後を追う


ここで俺たちは行くべきじゃ無かった。柊を引きずってでも帰るべきだった。と後に俺は後悔する事になる


窓は外からは黒に見えたはずだったが内側、つまり校舎の中からは外の景色が見えた それはさっき俺たちが見ていた景色では無く 真っ赤な夕焼けが見えた もうとっくに7時を回っているわけだし日の入りなんて終わっているはずだけれど…


きっとココから見えてなけりゃ綺麗な夕焼けなんだろうなー


一同問題の下駄箱に到着 明らかに"何か"がいる そんな感じがする


「ケンさんこれマズイやつでは?」


「俺もそんな気がする」


ここでようやく正気に戻ったのか 柊が


「姿は見え無かったけどそろそろ帰ろう 寒くなって来た」


一刻も早くここから離れたい 空気が悪意を含んでいる


「よし、じゃあ帰ろう」


と下駄箱に背を向ける


「ド、ドドドドコニ?ドコニ?ドコニカエル?」


とおぞましい声が聞こえた

振り向く勇気は勿論ない


「全員走れ!校舎から出ろ!」


と言うのが精一杯


もう一生走れなくなるんじゃないか と思うようなスピードで走り抜け 校舎を出る

外はさっき窓から見えた真っ赤な夕焼けだった


「ハァ、ハァ、おい、どこだここ?」


「奇遇だね ボクもそれ言おうとした」


「とりあえず学校から出た方が良い気がします」


とハナコ

訳もわからぬまま 校門を乗り越え 学校を後にする


建物の窓という窓全てが真っ黒に塗られていた

道路には車もない 歩道にも人はいない


「どうやらボクたちがいた所とは違う世界の様だね」


「見りゃわかる」


「えっ!帰れなくなったって事?」


「そうみたいですね」


また気持ちの悪いチャイムの音が聞こえる 学校からでは無く街から鳴っているようで頭が痛い


「ボクの勘だけど 上履きを隠していたのは注目を集めるためなんじゃないかな?」


十文字がよく分からない事を言いはじめる

それを察したのか 補足説明をする十文字


「つまり 靴隠し自体がボク達をおびき寄せる手段だったって事だよ それにまんまと釣られたって訳さ」


「それで何か脱出の糸口は?」


「まるで思いつかないよ」


八方塞がり 袋小路

俺たちは万策尽きたかのように思われた

まぁそれでも 一人じゃないし一人よりマシなのかなとポジティブな考えに転換としていた時

空が割れた 本当にそれ以外形容する言葉が思いつかない


雷のような轟音を轟かせ 夕焼けがまるで背景だったかの如く裂けていく

裂け目から黒が侵入して視界一面に広がりやがて何も見えなくなる



ふと気がつくと俺は校門の前だった

どうやら寝ていたらしい

目の前には見慣れたおかっぱ頭が


「いつまで寝てるのよ」



「あれ?空が黒いぞ?帰って来たのか?」


「どうやらそうみたいだね」


「やったー!篠原さん!助けてくれたの?」


と柊が翠に抱きつく


「俺たちは寝てたのか?」


「まあそんな所ね、魂が抜けていたから あのままだと起きることは無いと思うけれど 私は座敷わらしも一緒に寝ていた事に驚いたわ」


「えへへ」


と照れるハナコ


「つまりあそこは現実じゃ無く夢の世界みたいなところか」


「そうかい?ボクは違う時空の似た世界に意識だけ飛ばされたと解釈しているけれど」


「私も十文字くんと同じ感じがするー夢にしてはリアルすぎるし」


ただ今となっては知る由も無い

何よりも無事に帰ってこれた。願わくは柊がこれに懲りて七不思議や霊異に首を突っ込まければ今回の件はプラスになり得よう。


ただあの声の主は本当にアンバランスだったのだろうか、十文字の言う通り俺たちはおびき寄せられたのだろうか?だとしたらどうして?

疑問は募るばかりだ それを察したのか


「知ってますかケンさん 世界は知られていない事だらけなんです 分からないことはいくら考えても分からない事だってあります 」


「成るように成るさ。か」


それからしばらくの間下駄箱を使うのが怖かったのは俺だけの秘密だ。


ちなみにこれに懲りたのか 翠にこっぴどく叱られたのか 真相は定かではないがそれ以来柊は俺たちの忠告を聞くようになったのだ。

相変わらず不思議な事に首を突っ込む癖はあるようだが、、


最後まで読んで下さりありがとうございます

最近忙しくてあまり書かないのに加え これからもっと忙しくなりそうです

m(._.)mさーせん!

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