優の座敷わらし講座
翌日 翠は約束通り優くんを連れて来てくれた
「えと…お早うございます…」
見つかった時の潔さと覇気がなくなってしまっている翠は一体何したんだ!?
「そんな悪魔を見るような目で見ないで頂戴 優の素なのよ?でももう少しハッキリ話したらどうかしら?」
「まぁまぁ、それも個性ってヤツさ」
「それもそうね とびっきり小さい声でも良いわよ」
そこまで言ってないけどな
「声量はともかく お兄さん僕としたい話って?」
あれ?急に態度変わってない?
イマイチキャラがわかんないなぁ
「あぁここじゃアレだから屋上でもいいか?」
「僕は構わないけど」
優くんがちらりと翠の方を見る
「私達は面倒だからここで楽しく健の悪口言っとくわ」
「やめれ」
翠なりに気を使ってくれたのだろう
俺としてもその方が助かる 別に聞かれたら困るわけじゃないんだけど
黙って行くのも気まずいので適当に話を振る
「屋上行くって言ったけど実はこの学校屋上 立ち入り禁止なんだ」
「え?そうなの?じゃあ…」
「でもさ優くん 屋上って何かカッコイイだろ?」
「そう、かな?」
「カッコイイよ!屋上で授業サボりながら空眺めたり、昼休みは屋上で本読んだり」
「言われてみれば確かに カッコイイかも」
「だからホラ!」
ポケットから鍵を取り出す
「もしかしなくとも屋上の鍵?」
「お!良くわかったね正解 黙って合鍵作ったんだ」
「これで家の鍵出されてたら僕帰ってましたよ」
おおー結構言ってくる 翠と喧嘩にならないのかなー 何て思いつつ屋上のドアを開ける
「それで話とは?まさか翠さんの着替え?それとも一緒にお風呂入った事?」
「違う 違…え!?何ソレ!凄い気になる!」
「まぁ冗談だけど 着替えも見てないし お風呂も入ってない」
ちょっとショック
「知っているかもしれないが ハナコは30期生以前の記憶が無いんだ」
「それで何か知ってたら教えて欲しいと?」
優くんは思ったより頭良さそうだな バカ二人の会話とバカと頭いい人の会話は同じようで内容が全然違う。前者にならなさそうで良かった
「そう!そんな感じ」
「ハナコさんの過去は僕も知らない。」
「そうか、残念」
同じ座敷わらしって事でもしやと思ったけどそう上手くはいかないな
「でも、僕は前世の記憶があるし 何より座敷わらしがそもそも何者なのかも大体検討はついてる」
「出来れば教えて」
「これは教えると言うより 理解出来るかが問題なんだ」
んん?今バカにされたか?
「例えば、お兄さんの腕がちょん切れたとする。お兄さんの心、魂はどこにある?」
「残った体のほうかな」
「じゃあ首がちょん切れた場合は?」
「うーん、頭かな」
「ほとんど間違いで少しだけ正解だね」
「と言うと?」
「心や魂ってのはお兄さんも知っているように目で見えるもんじゃ無いんだ。そして統一されたものでもない。 漫画家は腕が魂って言うだろうし マラソンランナーは脚かな? 中にはそんなもの無いって言う人もいる。
「僕たちは色々な呼ばれ方をしていて、幽霊や妖怪、中には神様なんて言う人もいるね
「呼び方なんてものは 猿がサルであろうと象がウマであろうと それは人間の区別の問題で実は大した事は無いんだ
「お兄さんとハナコさんの場合は少し特殊だけどこの事は一旦置いておこう
「人間と僕達人外の決定的な違い それは肉体の有無。この違いは何をもたらすのか
「絶対的に違うのは時間。君たちの体は消耗品でいづれ機能が停止する だが肉体を持たない僕達には半永久的に活動が出来る
「え?成仏したら活動できない?それは知らないよ お兄さんが死んだ事ないように 僕も成仏した事ないんだから
「少し補足を入れると僕はおよそ63年間姿を変えずにこの世界にとどまっている。これで時間が少なくとも経過時間が異なる事は証明出来たかな?
「話を続けよう。さっきお兄さんにした質問 あれの答えは全身だよ。ちょん切れた腕も体も頭も全てお兄さん まぁ僕の意見だけどね
「なぜかって言うと僕ももともとは肉体を持っていたからさ
「ん?僕の記憶?少しだけ座敷わらしになる前の記憶があるんだ。ま、記憶があると言っても名前と田んぼと山の景色くらいだけどね。
「僕の考えだと全身と魂は4次元的に重なってるんだ
「僕達の次元は3次元?何言ってるんだよ認識してるのが3次元なだけで 確か11次元まであるそうだよ。余談だけど脳は9次元構造と聞いたことがあるね
「そしてその重なっていた肉体と魂が離れると 晴れて霊のデビューって訳さ そして離れたから肉体である脳の記憶は引き継げない。僕の場合は所謂バグってヤツさ
「化学の理想気体 あれはバグは想定出来ない とするから使うんだよ
「それはともかく僕達を認識できるのは四次元を認知し得るって事じゃないのかな?なぜ憑かれたら見えるようになるのか それは四次元を体感したから認知出来るようになった
「まぁ、僕の仮説だけどね、そうすれば筋が通るってだけさ
「と長くなってしまったけど以上で終わり。」
「とてつもなく長く難しかったが 何となくわかった気がする」
なんとなくわかった だけで 深く理解はしていないが
「それと俺の事はお兄さんじゃなくて健でいいよ」
「じゃあ 僕も優くんは恥ずかしいので 優で」
教室に戻ると翠とハナコが何やら楽しそうに話していた
翠がこっちに気がつき
「あら?終わったの?随分と長く話していたのね」
実際はほとんど優くんが話していたのたが
「あぁ、おまたせ 二人とも」
帰り道、翠と別れた後
「久しぶりにシュークリーム食べたいです」
とハナコが言ってきた
食べ物を食べるのは一体どう言う事なんだろう?
と思ったが難しく考えても俺には理解出来そうにない 今度覚えていたら優に聞いてみよう
横で美味しそうにハナコがシュークリームを頬張る
「俺にもちょっと分けて」
「仕方ないですね はい半分こです」
最後まで読んで下さりありがとうございます
最近半袖を着るようになりました 左 阿千です
でも流石に夜になると寒いので上着は必須ですね 桜も散ってしまいいよいよ夏、、その前に梅雨が、、憂鬱ですな