バレンタインデー
あなたはどっち?
2月14日
世の中が〝ピンク〟か〝ダーク〟の両極端に染まる日…
もちろん前世のオレはダーク側だ。その日は決して部屋から出なかった。妹や母親から貰っていたのも中学生位だったろうか…何度リアル充実勢、つまりリア充どもが爆発することを願ったか…
そんなオレはガルゥシュ・テレイゲルとして地球ではない何処かの世界に転生した。
そう!オレは〝バレンタインデー〟という苦しみから脱出したのだ!
「どうしたのガルゥ?また考え事?」
陽光に煌めくプラチナブロンドの髪を指で漉きながら上目づかいをする顔は幼い顔立ちながらも美人になることは間違いない、その女の子はそうオレに問いかけた。
「いやぁ、オレって今幸せだなぁと思ってたとこ」
「?何で?急にどうしたの」
「いやー何となく?」
言葉ではそうなんだけど。なんでか?って今、オレのそばにはソフィがいることが物凄く幸せなこと。それが今のオレの当たり前。
「当たり前の日常こそ何事にも代えがたい最上級の幸せなんだよなぁーって、だからオレは今、幸せだと思ったんだ」
「へーそんなこと考えてたんだね~振り返ってみるとそうなんだろうね~」
そう!だぁから!バレンタインなんて言う非日常はダメなんだよ!なぁにがチョコだ!本命だ!そんなもんは企業努力の成果だコノヤロウ!
くっそ!チョコ下さい!お願いします!なんですか?土下座ですか!?
「えっ待って!?なんで地面に頭擦り付けてるのガルゥ!?止めて!」
止めるな!ソフィイイ!!
オレはこうでもしないと!
「あー!地面に頭ゴンゴンしないで!」
ダメだ!まだ足りない!こんなんじゃ…異世界にチョコは届かない…
「もう怒った…ガルゥいい加減に…したほうがイイよ?」
慎重に土下座の姿勢を保ったままゆっくりと顔を回し上を向く、そこには笑顔でありながら目が笑っていないソフィがいた。
ソフィの体の魔力が急激に高まっていくのを感じる。
「ご、ごめんなさい…」
「もう遅い…よ?『水よ!我が問いかけに答え彼の者に鉄槌を与え給え!水罰』」
デカイ水の塊が土下座したままのオレの真上に現れる。
出来た水の塊は重力に従って落ちてくる。
☆☆
「ぶぇっくしっ!」
「だ、大丈夫…?ごめんねやり過ぎちゃったみたいで…」
ずぶ濡れだった服を風魔法で乾かしているとくしゃみが出でしまった。上着を乾かしているから上半身裸で寒いのだと思う。
ソフィは長い髪を前に垂れさせて、かなり落ち込んじゃってる。
「いいよ。ちょっと興奮してたのがソフィのおかげで頭冷やせたし」
「ん、んーでもなんであんな事したの?」
「欲しいものがあって…」
呆れたようにため息をつかれたが、ぶっちゃけ義理チョコでいいから欲しい。
そんなこんなで今年もチョコは貰えませんでした…、異世界に日本からチョコが届くそんな日が来ることを祈ります。
少年はまたくしゃみをし、甘いものを食べたくなったと小さく呟いた。
自分はファッ〇ンバレンタインです。
ごっつい ディリシャスな ばっか 食べたい。