謹賀新年
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。
「あ~暖かいなぁ~もう動きたくない…」
“ぐで~”と効果音の付きそうな状態で、木を切り出して作ったらしき低めの毛布がくっついている机に伏せる、少しくせ毛な茶髪ハイトーンブラウンの髪をいじる少年がそう口に出した。
「…そうだね。暖かいねぇ~、ガルゥ~のおかげ…」
こちらも同じように机に伏せ、長めのウェーブがかかった透き通るような金髪プラチナブロンドと月の意匠が施された髪飾りを耳の上近くに付け、純真な青の目を薄く覗かせる少女がそう言って少年を褒めた。
少年と少女は、少年が作り、“コタツ”と呼ぶものに入り、だらけていた。
季節は冬、それもレベル石が示す一年最後の月、黄橙の月の31日、星が瞬き空の黒を和らげる時間…
「おーい、ガルゥ、ソフィ、そろそろ集まるぞー」
「あ、はい~、分かりましたぁー父さん…ぅんん」
「ガルゥ~セドルさんに呼ばれてるのに寝ちゃダメだよぉ…ふぁああ」
この村きっての魔法使いである金髪と優しげな顔の男が少年と少女を呼んだ。しかし、“コタツ”という悪魔に囚われた二人は返事をしながらも行動に移すことは出来なかった。
「ん、もう、ソフィもガルゥも今年は起きてるんじゃなかったの~?」
「ガルゥ~ペンペあげないよー?男なら貫き通さなきゃねぇ?」
少年と少女の決意を振り返らせた、白に少し青さを含んだ艶髪のこの世界にまたとない美貌を持ち、スラリとしながらも出るところは出ている少女の母と、
自らの息子にペンペという一年の初めに親や歳上の大人たちから貰うお小遣いをからかい気味に話に出しニヤリと笑う、可愛らしい顔と茶色に少し赤がかっている髪をフワリと軽く肩から襟首の辺りで揃えている小柄な女性、
その二人がお互い顔を見合わせて声色は異なるけれどフフッと笑い合った。
「ん、おきゆ~ママ…」
「ハイハイ、起きるのね。ダグランも待ってるし~一緒に年越ししましょ」
「そうそう、ほらガルゥも起きなさいな、知ってると思うけど一年に一度しか虹色のレベル石は見れないわよ?」
「ぅうん、あ~、おき、起きます、はい」
少女は眠気に完全に負けたのか、口が上手く回らないようになってしまっている、それを見た少女の母は軽くあしらいながらも、この少女をひょっとしたら自分以上に愛しく想っている夫を思い浮かべ少し可哀想に思った。
少年の母はあまり子どもらしいところを見せない自分の息子が不意に見せたいじらしさが嬉しく、引き続き少年をからかいながら起こしにかかった。
アシヤカ村の大人たちは村の広場に集まり、周りに篝火かがりびを焚き、広場の中心の台座には未だ黄橙の光を出すレベル石があった。
大人たちは酒を飲み交わし、一年に一度の祭りを楽しんでいた。
「お!来たか!ガルゥ、ソフィ!ホレ、こっちだ。」
「ふぅあぁぁ…おはようございます…師匠」
「うにゅう…ん、パパ…」
頭の短く刈り揃えた茶髪と口髭がよく似合う筋肉質で腰に剣を携えている男は酒に強いのか酔ってはいないようだが少し顔を赤くしながら少年と少女を呼んだ。
少年は“コタツ”から這い出て欠伸を噛み殺しながら剣の師匠である少女の父に時間外れの朝の挨拶をし、少女は目を擦りつつ父を呼んだ。
「なんだ、お前ら眠いのか?あれだけ起きてるって言ってたのにか?」
「ダグラン、ほら、この娘たちガルゥが作った“コタツ”?に入ってたのよ」
「あぁー、あれか。じゃあ眠いのもしかたねぇか…」
まるで美女と野獣の如き夫婦は自分達に関わりの深い少女と少年を見て、少年の父と母と目を見合わせ、目尻を下げた
「ま、俺の自慢の息子が作った物だしな?俺たちも何度も寝落ちしたしな…」
「そうだな…あれは恐ろしいものだ…」
男二人は“コタツ”の恐ろしさを語りつつも、酒を飲み交わした。
「ふふ、暖かいものね。初めてコタツに入ったとき、ガルゥが産まれた時と同じくらい暖かい気持ちになったわ」
「ちょっとクローネ、それは心じゃなくて体の暖かさでしょ~?」
「あ、サリシャ、わかっちゃった?ンフフ」
「ウフフ~わかったわよ~」
女二人は少年と少女が夢の世界に飛びかけていた時に飲んでいたお酒が効き始めたのか顔を朱色に染めて笑い合った。
その時レベル石が輝き、アシヤカ村の広場を虹色に染めた。
その虹色は神がまるで一年の始まりを告げているかのように幻想的に、されどしっかりとした光を村人たちの瞳に映し出した。
その瞬間に、村人たちは少しの興奮に包まれたように歓声を上げた。
───新たな一年が始まったのだ───
ある者たちは家族の幸せを祈り、ある少女は隣の少年のことを想い、ある少年はこの世界の平和を祈り生まれ変われたことに感謝した。
改めまして、明けましておめでとうございます
なろう読者の皆様 本年度宜しく御願い致します。
ガルゥシュ、ソフィティア、セーベ、テーベ、ルーメン、ついでにゼンエスをよろしくお願いします
新たに様々な作品を投稿できたらいいなと考えています。
翠ケ丘 なり平