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前方不注意

作者: 飛鳥弥生

『前方不注意』

{ぜんぽうふちゅうい}


 ――飛鳥弥生


 スポーツブランドのロゴ入りの白いトレーナーと黒い皮ベルトのバックル。右膝に小さな染みの付いたジーンズの先にはお気に入りの、ごてごてした赤と白のスニーカーと、良く晴れた真っ青な空。空……あれ? あたしってこんなに内股だっけ?

 視線を左へ向ける。街路沿いのショーウインドウに、流行最先端の布切れを被せられ、へんてこなポーズを取らされている気味の悪いマネキンが数体並んでる。身長の倍くらいのショーウィンドウに辺りの景色が映り込む。通行人とスポーツカー、そして、あたし。

 高級そうなスポーツカーの運転手が大した腕ではない事を、フロントバンパーの大きなへこみが物語っている。どうやればあんなになっちゃうんだ? スポーツカーから飛び散ったガラス片が、雪の結晶みたいで奇麗だ。どうでもいいけど、なんで左目が開かないんだ? おかげで辺りの様子が見づらくて仕方が無い。

 雪のようにきらきら光るガラス片の中を、スポーツカーを踏み台にして華麗に横っ飛びしているあたしと、それを見詰める無表情な観客達。スポーツカーから特殊効果の光がきらきらと注ぎ、あたしの華麗な横っ飛びを効果的に辺りの人の目に焼き付けている。


 いや。華麗でも無いな。なんだか左足が曲がりすぎてる気がする。練習不足が祟ったか。練習? しっかし、なんで左目が開かないんだろう……。

 ああ! なるほど。ショーウインドウに映り込んだ自分を見てやっと気付いた。そうか。あたしの顔の左半分はぐしゃぐしゃに潰れてて、左目なんて無いんだ。


 ――おわり

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