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なにもない場所、きみの自由

 きみの手のひらにおわかれのメッセージを書くと、きみは微笑んで涙をこぼした。不思議だな、きみは無理して笑おうとしているのだろうけど、それは失敗に終わっている。きみはいつも失敗ばかりだ。最後の最後になってもきみは、ぼくに嘘をつくことができない。

 ぼくはどうだろう。きみに嘘をつけてきただろうか。きみはぼくの気持ちを分かってくれていたのかな。ねえ。


 ぼくらの〈街〉には、なにもなかった。コンビニなんてもってのほかで、自動販売機も、ピッて音の鳴る端末機のようなものもなかった。そこにはほんとになにもなかったし、ただ、ぼくときみが暮らす家がそれぞれあったように思うけれど、その家というものもぼくたちが用意したような気がしてならないとも思っていた。

 親、という存在もそこにはなかったような気がする。あるいは、親とはぼくたちのことをさすのかもしれない。ぼくたちを育てたのはぼくたちだ。そういうときみは頷いて、腕を組む。

「わたしはいつか、ここを出ていくよ」

 そうだね。ばいばい。でていって。

 そう書いたメッセージはきみの心をこなごなにした。

 これでぼくはひとり。

 ぼくの自由だ!

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