表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

空想科学:けらちんとかす

「ふぉっふぉっふぉ」

 博士がふいに笑い声を上げる。またなにか変なことでもひらめいたんだろう。

「どうかされたんですか?」

 こういうときはちゃんと聞いてあげないと、後がうるさい。

「おお、薫くん。よくぞ聞いてくれた」

 博士は自慢げにコンピュータのモニタをぼくに見せた。そこには、複雑な化学式と、いつもの可愛らしいベンゼン環のイラストが映されていた。ベンゼン環ってなんかかわいいよね。顔みたいで。

「これはなんですか?」

 勉強の足りないぼくは、博士に正直に聞いてみる。

「まったく薫くんは勉強が足りないなぁ」と言いながらも、博士はこうしてぼくに語ってやるのが楽しいらしく、顔を綻ばせていた。

「これは水酸化ナトリウム水溶液に、ちょっとした細工をほどこした化学式じゃよ。そしてその横にくっついているのが、ケラチンを表したものじゃ」

「ケラチン、ですか」

「そうじゃ。爪の主な成分じゃな」

「ふぅむ。それで、爪に水酸化ナトリウムを反応させて、どうするんです?」

 ふぉっふぉっふぉ。博士はまた高らかに笑い声を上げて、ぴんと指を立てた。特に意味はない。

「実はケラチンというたんぱく質はな、ヒトの皮膚全体を覆っておる成分なんじゃ。ケラチンがコーティングされることで、皮膚は丈夫になっているのじゃよ」

「はあ」

「そこで、そのケラチンを水酸化ナトリウム水溶液で溶かしちゃる」

「すると、どうなるんですか?」

「まず生きるのは困難になるじゃろう。たとえばなあ、プール場にいる人間のケラチンを溶かしてやるじゃろ? するとその人間がホップ・ステップ・ジャンプしてプールに飛び込んだり普通にゆっくりプールに浸かったりしたときに、ケラチンで守られていない肌は浸透圧でプールの水が体内に容赦なく入り込み、そのまま体がふくらんでばばん! と破裂してしまうのじゃ」

「へえ。そうですか」

「まあそれ以前に痛くて痛くてプールに入る余裕なんぞないじゃろうがの」

 話聞くのつかれたなぁ……。

「ふぉっふぉっふぉ。というか薫くん。きみ、首都高速道路みたいな顔をしとるのお」

「あ、よく言われます。ベンゼン環みたいでしょ」

 ベンゼン環かわいい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ