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8話目

投稿が遅くなりました。

狼は私が戦意喪失したことを感じ取ったのだろう、つまらないなぁ、とでも言うように、あくびをした。

(この戦いは 狼にとって、所詮、遊びだったのか・・)

思わず、自嘲の笑みが浮かぶ。

狼が目の前に立つと影が私を覆った。

口をあけて、生臭い舌が見えて、鋭い歯が見えて、

目を閉じた、運命を受け入れるとかそんな高尚なものじゃない。

ただ、怖かった。

迫る死。

「!」


横から、強い衝撃。

体勢も取れず、ごろんと転がる。折れた足に激痛が走る。

瞬間、ガチンッと狼の口が空を切る音。

わけが分からなくて、私は目を再びあけた。

そこには、

私を守るように立ちはだかる、すこし頼りなさげな背中。

「ルークっ!!!」私は驚きで叫んだ。


脳裏に浮かぶのは重傷のルーク。

動けるはずがない。死んでもおかしくない。例の体質かとも思うが、全快には程遠い。重傷だけ治すものなのか、いや、ここで推測しても仕方ない。ユナは首を振って切り替える。

それよりも、ルークを助けれるかもしれない。そう思うと自分に気力が戻ってくる。

ルークが乱入したため、すこし後方に退避していた狼がこちらに飛び出した。

もう時間は無い。

私が次は囮になって・・・と考えをまとめてルークを見た。

瞬間、

ぞくり、と、した。

いつものルーク。

しかし、決定的に何かが違った。瞳も同じ黒色。

なのに、あんなに暗くて冷たい。

なにか、怖いものに引き込まれる気がして、私は何も出来なくなった。

そんなだというのに、ルークはニコニコと機嫌良さげに笑う。

雰囲気とその嬉しそうな顔があまりにアンバランスで不気味だった。


意識は、ある。

だが、ルークは視界の利かない霧の中に居るようだった。

ふわふわと浮いている気さえする。

気づくと助けに走っていた。

ユナさんは、惚けたように俺を見ていた。

そして、なにか叫んだ。

むぅ、よく聞き取れない。

と、狼が地面を強く蹴り、こちらに飛び出した。

(遅い・・)

ルークは呆気にとられた。まるで、スローモーションだ。

これまでの速さとはまるで違う。罠という雰囲気も無い。

(コレなら、すぐに殺せる)

そんな言葉が心の奥底から呟くように聞こえた。

あれっオレってそんな強気だったか?

自問自答、そして出た答えはやっぱりおかしい。

怖いもの見たさで、今度は意識的に耳を傾けた。

なぜか、自分の意識を明確に感じ取れた。

不思議な感触。

導かれるように自分の意識の奥底にもぐっていく。

すぐに分かった。

自分の一部がそこにある。

でも、それは意図的に意識の深層に隠されたもの。

それが自分に戻りたがっているのだ。

自分に在るべきものが無い。

強烈な違和感。

今までどうして気づかなかったのか不思議なほどだ。

一旦、気づけば、それは段々と声を大きくしていく。

取り戻さなければと変な使命感に駆られて意識を更に集中させていく。

時間にして1秒もたたない。が、変化が訪れた。

ぶちっと太い縄が引きちぎれるような音が心に響いた。

絶対的な悪寒がルークを襲う。

純粋な殺意。

それが全身を駆け巡った。

なぜか、それは、ふわふわと気持ちが良い。

気味の悪い何かが自分を支配していく。

必死に払いのけようとするが、思い直す。

コレは自分の一部なのだ。だってこんなにも自分に馴染んでいく。

ふと、ユナさんがこちらを見て固まったのを感じる。

あぁ、やっぱり、

今の、この殺意はおかしいのかもしれない。

相反する思いが混ざりあう。

どこかで拒絶するのにどこかでそれを歓迎する自分が居る。

もう何もかもどうでもいい、そんな気持ちが浮かんでは消えていく。

狼がもう間近に迫る。

やばい、狼が来る。ユナさんがいるのに。ユナさんを守るためには力がいるんだ。

はやく、狼を殺さないと。

そして、ルークは恐ろしく心地よい何かに身をゆだねた。

瞬間、異様な高揚感がルークの意識を包み込み、何も分からなくした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

主人公が暴走しそうです。

作者の考えていた方向からどんどんそれていきます・・・。



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