7話目
ユナ達が狼の気づかない程度、後ろにたどり着く。
突然、凄まじい光が辺りを覆った。
咄嗟に目を閉じ、腕で防御。閃光魔法だ。
攻撃ではなく、光と音で感覚を麻痺させ、動きを封じる。
目はちかちかするが、キーリの回復魔法で万全にしてもらう。ほんの数秒で回復する。キーリのサポート系魔法は尋常じゃない。何者なんだろうか。
その分、攻撃はからっきしだから戦闘には参加しないそうだが。
それにしても、危なかった狼との距離はまだ遠い、更に乱立する木や繁みに阻まれていた。それでさえ、この効力。ルークの様に直接、受けていたら・・。そこまで考え、
「ルーク!!」私はすぐさま、駆け出した。
ルークは自分の判断の甘さを祟った。今の自分は絶好の獲物だ。感覚が麻痺して、何も、わからない。さすがに、逃げるのは難しい。感覚も回復する様子はなし。
これは、死ぬかな、
すぐに攻撃は来ない。
狼の余裕たっぷりの顔で[ノッシ、ノッシ]という歩き方が目に浮かぶようだ、ムカッとするが来る方向も曖昧。
ちくしょー。そして、
ルークは意識を失った。
私が突然、走りだしのだ、後ろでキーリが驚くのが分かった。
それを無視して、疾走。
走りながら、状況を見る。やはり、ルークは感覚が麻痺しているようだった。
狼が空き地に入り、やっと、仕留めれると満足気にルークに近づいていく。
狼が口を開く。
ぎらりと鋭い歯。
(間に合え!)私は無理やり、更に加速。体が軋む。
狼の口がルークを捉える。ゆっくりと時間が流れて行く。待て、待て、待て、あと、少しなんだ。空き地に入る。
狼が、ルークを、「届けぇ!」ユナの悲痛な叫び。狼が一瞬、ピクリと動きを止める。
「はぁっ!」ユナは剣を振り下ろす。確かな手応え。が、浅い!
狼の鮮血が飛び散る。狼は苦悶の声を上げ、ルークを鼻先で思わず突き飛ばした。
ルークは飛び、木に衝突。最悪の狼に喰われるのは、防いだ。が、どうなった?あの衝撃、内臓破裂、骨折、はあるだろう。
ユナは「ルーク!」と嫌な想像を振り払う様に呼び掛ける。反応はない。ユナは焦燥感に駆られた。キーリの回復魔法なら、死からは、免れるかも知れない。追って来ているだろう、キーリに「ルークの回復を頼む!狼は私が!」と叫ぶ。
狼へと視線を戻す。
狼は怒りに目を血走らせていた。
「アォオオオン!」
よくも食事を邪魔した、
よくも傷をつけた、
怒りの咆哮。空気が震え、ユナの体を打つ。
狼が動く。
(速いっ)咄嗟に転がって危機を回避。
そして、また対峙。
刺すような緊張感。
ユナにはもう、攻撃の選択肢は無い、避けることに全神経を注いでいた。狼の一挙一動を見逃さない。
狼はこちらを伺い、動かない。(攻めあぐねているのか?)パキ、パキッとおかしな音。「っ!!」 地面から冷気が忍び寄り、足元を凍らせようとしていた。ユナは慌てて跳躍。狼が、にやりと笑う気がした。
「しまっ・・!!」 空中ではユナの動きは制限される。嵌められた。(こんなのと、ルークは戦っていたのか)信じられない思いだった。と、いくつもの、氷の礫がユナを目掛けて飛ぶ。 それを剣で対処。狼は・・・いない!?瞬間、頭上で殺気が膨れ上がる。咄嗟に、剣で防御。
死角にいた狼が、ユナを空中から叩き落とした。凄まじい衝撃。
うまく、体勢が整わないまま、着地。片足がゴキリッと折れる。
「ぐぁああ!」
痛みのあまり吐きそうになりながら、視界にはルークに近寄るキーリの姿。そこに降り立つ狼。(まずい)、キーリの元へ向かうが、足の痛みで、うまく行けない。
なぜか、キーリはルークを治療して、固まったままだ。
「キーリ、何してる、逃げろ!」私が叫んで、初めて状況を把握したらしく、さっと血の気がひいた。
キーリらしくない、このままだとキーリもルークも・・・。私は持っていた剣を狼に投げた。当然、狼に避けられたが、殺す優先順位はユナが最初になったらしい。キーリは狼が視線を外したところですぐに逃げた。ルークを連れて逃げてはくれなかったか・・。ユナは嘆息した。
ルーク、結局、強者になって対等に接してくれたのはルークだけだったよ。だから、救いたかったんだ。でも、私は、あなたを救えなかった。ごめん。一族の決まりも守れそうにない。私は一族の恥だ。
「どこで間違えちゃったんだろう・・」 狼が私を喰らうために歩いてくる。
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