第三話:真実への一歩
昨日思い出に浸っていたからか…
あずさの顔を直視できない
「なんで?何で私がこんな目にあうの?」
肩を震わせ、自分を包み込むように手を交差し泣いていた彼女を、俺は抱きしめる事すらできなかった。
何があったのか、真実を聞けたのはあの誤魔化しのメールから1年たったちょうど今みたいに、吐いた息が白くなり始めた初冬の事
働き初めてもうすぐ3年
仕事も覚え、後輩に指導していた時
「久し振り」
そう言って話しかけてきたのはあずさだった
「あれ?何してんの?」
前と変わらないあずさの笑顔に少しドキドキしてしまう…
「お世話になった店長に大学合格の報告に」
俺の目の前にピースを見せながら、とびきりの笑顔
「マジで!おめでとう!」
一緒になって喜ぶと、あずさは本当に嬉しそうに、そして誇らしげに
「私が落ちるわけないじゃん。和成とは、脳の出来が違うんだよ」
そう言うあずさの頭を軽く叩き
「いやいや。俺も受かってますから」
そんな軽いやり取りがなつかしくて、今にもスキップをしそうなあずさの後姿を見つめながら、少しだけ幸せを感じた。
「んじゃ。お疲れさまでーす」
後輩や先輩に挨拶し、今日は友達と遊ぶ予定があり、18時に仕事が終わった
裏口から出て、いつもとは逆方向へ自転車を走らせる。
しばらく走っていると、公園のベンチに人影が見えた
気味が悪かったが、この公園を突っ切らないと、予定時刻に目的地には辿りつけない
意を決して公園に入った。
横目でちらりと、人影を気にしながら進む…
少し通り過ぎた後、俺は我が目を疑いブレーキを力いっぱい握りしめた