第十話:嫉妬と恥
少し暗い室内
どこにでもある普通の店内
「いらっしゃいませ〜〜」
大きな声と共に店員が笑顔で近寄ってくる
2Fを貸切りにしているらしく、俺達は2Fへ続く狭い階段に案内された。
建物が古いのかギシギシと階段が鳴いている
階段を上りきると大勢の男女が座っていたり立っていたり…
みんな楽しそうに笑っていた
俺達の姿に気づくと、女達が押し寄せる
あずさがみんなに好かれていたのがよくわかる
あずさが友達に囲まれてしまい寂しさを感じ、行き場をなくした俺は空いたスペースに座る
遠くの方であずさが俺について質問責めされているのが聞こえ、なんだか居心地の悪さを感じてしまう
「こんにちは」
下を向き一人の世界に浸っていた俺の前から声が聞こえた
少し顔をあげ、声の主を確かめる
小顔で耳にかかるぐらいのサラサラの髪
小柄だからか、すごく華奢に見える男
誰かの彼氏なのだろうか?
顔立ちは整い、芸能人みたいだ
「こんにちは」
女みたいなこの男に対し、軽く会釈をする
「君があずさの彼氏?」
笑顔なのに目が笑っていない。
なんだこいつは…
あずさの知り合いだろうか
挑戦的な目つき
こいつの全てが不快に感じる
「一応…彼氏ですけど」
言葉を発した瞬間
小馬鹿にしたような・・・
見下すように鼻で笑われた
膝の上で握りしめた拳が震える
我慢…我慢…
その言葉を頭に浮かべながらこいつに対し愛想笑いを浮かべる
「あんたさ…」
目の前の男が言葉を発したと同時に
「有紀〜〜」
甲高いあずさの声が後ろで聞こえ、振り向くと目の前のやつに駆け寄る
…有紀??
「相変わらず男前だねぇ」
なんて…あずさは有紀と呼ばれたやつに擦り寄る…
その顔は本当に嬉しそうで、俺の事なんて見もしない
「あずさも相変わらず可愛いな」
あずさの頭に手を置き撫でる
こいつ等の方がよっぽど恋人みたいだ・・・
ずっと見続ける俺に気づいたのか、あずさは有紀から離れニコニコしながら話はじめる
「えっとね。2年生の時から同じクラスだった佐伯有紀ちゃん。で、こっちが彼氏の田所和成」
俺と有紀を交互に見ながら勝手に紹介を始める
…有紀…ちゃん??
まさか………女!!??
考えが顔に現われていたのか、目の前の女男は腹を抱えて笑いだした
それを不思議な顔をしてみるあずさ
恥ずかしさでいっぱいの俺は顔を少し赤らめながら下を向く
有紀は気がすんだのか、ひとしきり笑い終えると俺を指差しながら
「あんたの彼氏、あたしの事男だと思って敵意むき出しにしてたよ。いい男捕まえたね」
と、笑い涙を拭いながらあずさに言う…
その瞳はまだ笑っていた
「えっ?えぇっ??」
まだ理解しきれていないのか、戸惑うあずさ
初っ端からこんな調子で、同窓会はどうなるのか…すごく不安だ