勇者召還
--時が経つのは早いものだ。
龍は教室を見回しながら、物思いに更ける。
転生してから約2ヵ月。
様々なことがあったと振り返る。
美春とキスをした次の日。
龍は不良たちに呼び出され、不良たちを叩きのめし。
その次の日には、不良の楽しい仲間たちを叩きのめし。
--ふむ。前世と似たようなものだな。
闘うことこそが、己の生きざまだと思っていた。
--ただ、変わったところは多い。
視線をゆっくり、魔王……美春に移す。
その視線に気づいた美春は、龍を見てにこりと微笑む。
龍もまた、美春を眺めながら微笑む。
--だが。
笑んだ顔を引き締めて、龍は窓の外……青く晴れ渡る空を見る。
--何だ、この不安。まるで……魔王の禁術のような……。
しかし。仰いだ空に、異変はない。
龍は何とも言えない表情で、空を眺め続ける。
「何を黄昏ている」
「さて、な。美春よ、語らいは良いのか?」
きゃいきゃいと黄色い声ではしゃぐ、女生徒達に指を向ける。
美春は少し肩を竦め、ゆっくりと溜め息を吐く。
「ああ。私と龍の関係について、根掘り葉掘り聞きたいようだ。……まぁ、心から信頼しているとだけ、答えたが」
美春は頬を染めながら、龍に熱っぽい視線を向ける。
--ふむ。余程、前世では独りだったのだな。
--それと、どうやらアワーリティアの呪いが作用しているのだな。
ルクスリアの呪いと違い。
対象が人である場合において、他者にのみ効果を及ぼすモノである。
自身が強く、強く望むほど、他者が寄ってくる。
それが、好意であれ、嫌悪であれ、愛好であれ、憎悪であれど。
大概は、欲している他人に嫌悪を、憎悪を向けられることが多い。
呪いを持つ者は、それ故に狂う。
欲している者に、最大限の嫌悪を、憎悪を向けられるのだから。
しかし、好意を愛好を向けられることもある。
その為に、一概には言えないといったところである。
「そう、か」
--はて……。魔王には娘が居た筈だが、一体誰との子なのか……。
「せんなきこと……というやつか」
呟き、空を見上げ……龍は目を見開く。
「転移……魔方陣、だと……!?」
前の世で見た、この世には無い紋様。
空に広がった紋様は、輝きを放ちながら大きくなっていく。
「上級展開魔法の併用……更に中級指向追加……」
--編んだ者は化け物か!私と同等の……まさか!
「アイリス殿か……っ!!」
カッと一際に大きく光り、真白が全てを飲み込み、呑み込んだ。
そして。
生徒達は居なくなった。
ちゃっちゃか進んで居るので、不自然なのが目立ちますかね?
一応、閑話などで龍と美春のイチャコラを書きます。二ヶ月分。(2話くらいで)
次回更新は大分先になります。