全員……しゅー、あれ?足りない?
主人公サイドの味方達です。
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「そんなことが……」
執政机の前に出された、椅子に座り優雅に茶をシバく丞乃。
「ああ。今では愛しい伴侶よ」
龍は執政机に広がっている資料を読みながら、丞乃達に今までの事を話す。
「我が親友の泰然よ。そちらはどうだったのだ?」
泰然と呼ばれた男は、膝の上にのせた少女の頬をぷにぷにつつき。
「ああ。あっちじゃあ特にはな。マセガキ……美那奈のほうも特にはない」
「そうか……。我が親友と私の敵、虚無の奴等は動かないか」
泰然は嘆息し、丞乃は深く肩を落とし、龍は資料を読み進める。
そんな男性陣を横目に、女性陣(二人と一匹)は互いに今までの事を話し合っていた。
「そこで、龍が……」
「成る程…流石はマスター」
「ところでなぁ…虚無ってなんやのん?」
「確かにな。私と龍には関係が無いのだしな」
「そうですね。お話ししときましょうか」
こほんと、仕切り直すメイドの女性。
「まず始めに。自己紹介し直しましょう」
そう言って、女性は立ち上がり頭を下げる。
「私は、ドラゴ・エメラル様の従者、メリッサ・クレイス。そして、前世の記憶保持者です。その前世にて、あちらにいる丞乃様、泰然様、美那奈様達と共に、人ならざる何か…虚無達と戦っておりました」
メリッサは鈴の音のような声で、スラスラと説明を始める。
「先程、人ならざる何か…と申しましたが、訂正させていただきます。虚無は、元を辿れば人です。ですが。感情を捨て、欲を捨て、名を捨て、理性を捨て……彼ら、彼女らは、人よりも優れた者になろうとし、人ではなくなった者達です」
「むぅ……。神にでも成ろうとしたのか、そやつらは」
美春は首をかしげ、思い当たる節を言ってみる。
しかし、メリッサは首を横に振り。
「神になろうとするのであれば、理性を突き詰めていかないといけません。その時に、感情と欲が消え去ります。そして、名は自らを定義するのに必要な為、捨てれば存在ごと消え去ってしまいます」
「神にも名はあってぇな。あのじいさんは、ゼベルスっちゅう名があるんよ」
「ふぅむ」
「みはるんが言いたいことは判るつもりぃけど、こりゃばっかりわぁな……。ああ、めりやんが説明したんわ一つの考えよ?」
影法師はそのまま、神についての説明を始めた。
神とは、そのものずばり人の偶像であると。
人が信じることにより、その姿を常に変えていく不定形な何か。
丞乃、泰然や美那奈はその神を、人の欲の塊と定めて。
虚無達はその神を、人の弱き醜い感傷と定めて。
ドラゴや魔王、メリッサや影法師は理性の果てであると定めて。
「そうは言うても、神ちゅうのは判らん存在ゆーこと」
「んん"。話を戻しましょう」
逸れていった話を戻すため、一つ喉を鳴らすメリッサ。
「少し話を端折りますが、私達はその虚無達を殲滅したのですが……」
「この世界にも現れたのを確認して、降り立った……と?」
「いえ。丞乃様が転移してしまったのと、私が天寿を全うして死んでしまっただけでございます」
影法師はガクッと体を落として、美春はため息をつきながら肩を竦める。
ころころと、口許を隠して笑うメリッサ。
してっやったりと言った雰囲気はないので、美春達は苦笑する。
「さりとて、どのような確率で同じ世界に来れるのだ?」
「そなね~。しかもいっちゃんメンドイやん。転移と転生でなんと」
「いえいえ。私が転生したのは全くの偶然で、丞乃様は因果を辿って来たのです」
「……うむ。虚無について、知りたいことは粗方判った」
美春は深く頷き、理解したことをメリッサに示す。
「では……主人とはどういう関係なのでしょう?」
小首をかしげ、メリッサは美春に問う。
その目には、少しの嫉妬と好感。興味が大きく映っている。
「そやねー。ごっつ興味あるわー」
「む、むぅ……。お前達は知っていると思うが……」