scene3 こういうの初めて
早朝の教室。廊下側の一番前の自席に座り、ぼーっと時計を見上げる。
訳12時間前の出来事が衝撃的で、昨夜はほとんど寝れてない。
あの後、性研部の部長が「あとは任せて」と言って性剣を回収して、僕だけが先に下校した。
早めに学校に来て現場を確認したけど、ひび割れたはずの廊下が元通りになっており昨日の痕跡すら見つけられなかった。
あれは悪い夢だったのだろうか。
ピロン。
どこか間抜けな通知音が鳴り、焦りながらスマホをマナーモードにした。
ついでに通知画面を見ると知らないID、メッセージの内容は『放課後、部室で』。
その日の授業は全く頭に入らなかったことだけ、ここで供述する。
________
「待っていたよ、馬並くん。おや、顔色がよくないね」
「……えぇ、いろいろ聞きたいことがあるのにまとまらないのでイライラしてます」
部長はニヒルな笑みを浮かべて、ホワイトボードの前に立つ。西日のせいかグラサンがキラリと光った気がした。
「そうだね、まだ時間はあるし……いくつか情報を開示しよう」
コトリ。教卓に件の性剣を置いた。
「これは我々が聖剣と呼んでいるものだ。『選ばれし者にしか、その刃抜くこと適わず』って伝承と共に代々引き継いできた」
なんだろう、なんか……中古って考えるとあまりこの剣?に触りたくないな。
というか、改めてみてもTE〇GAにディ〇ドが入っているだけなんだよな……
「その名を『聖剣テンガルド』。高貴な見た目にふさわしい名前だよね」
「下品な見た目にまんまの名前じゃん!!TE〇GAにディ〇ドでテンガルドでしょう!?」
「テン……ディ……?馬並くん、急に専門的な用語を言われてもわからないよ。ドイツ語かい?」
「なんでわからないんだよぉ!!」
睡眠不足と他にも色々重なって、大声をあげてしまった。
部長はやれやれといった様子で、話を続ける。
「話を戻そうか。このテンガルドをコジレモノに挿すことで奴らを人に戻すことが、君の仕事になる」
「あの、それなんですけど……別の人にやってもらうことって……」
キラリと部長のグラサンが光る。
「勇者の破棄。行った者も少なくない。だがおすすめはしない……これは私の先輩から聞いた話だがね、勇者の職を放棄した者たちは一人残らず立てなくなったそうだ」
「足を悪くされたってことですか……?」
「いや、五体満足だよ。でもたてなくなったんだ」
ごくり、自分の唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。
たてなくなる。足が悪くなるわけではない。だが、たてない……勃て、ない。
理解した途端、冷や汗が垂れる。
まだ使ってもない相棒を、こんな所で殺されるなんて……!
だが、想像する。あの忌々しい聖剣を変態に突き立てる自分を……
そんなところを他の奴に見られたら、高校生活が終わる!
だが、EDになるのも嫌だ……!なんで俺がこんな目に……
嘆く脳内に一筋の希望が降る。
「勇者の放棄にペナルティがつくなら、勇者の譲渡はどうなんです?」
三度、部長のグラサンが煌めく。
「いい質問だね、そしてその質問にはこう答えようか……私が先代勇者だ、と」
「てめえ!くそったれぇ!!!」
感情のままとびかかる僕を、部長は軽くあしらいながら続けた。
「ハハハハ、馬並くんには実践と並行して、強くなっていってもらうから。明日からもよろしくね」
「こん畜生が!!……やるしかないんでしょう!!やったんよコラァ!!」
決意を表明するとともに、自身に課題を出す。
・目の前のグラサン野郎をぶん殴ること
・勇者とテンガルドを誰かに押し付けること
2つ目は可及的速やかに達成しなければならない。
勇者の胸に決意の火が灯った。
もと勇者はえいえんに賢者になってしまうのだ~




