二人って…
莉菜って…ずっとオレに片想いしてたんだよね?
オレのこと好きなんだよね?
でもさ、なんであんなに石野くんと仲良さげなわけ?
なんで、そんなに目尻下げて笑うの?
「莉菜、なにしてんの?」
思わず、莉菜と石野くんの間に割って入った。
莉菜は、さっきまでの笑顔を失い
「石野くんと話してるんだけど、なんかよう?」
と、冷たくオレをみた。
莉菜は、いつもオレにだけ冷たくない?
まあ、基本莉菜は淡々としてるっていうか、あんまりキャピキャピは、してないけどさ…。
「あの…バイトさ、今日五時からだって。」
「いつもの時間じゃない。」
またも冷たい視線…。
なんで?
なんでそんな顔するんだよ。
さっき石野くんに向けてたみたいに、オレにも笑顔向けたらどうなんだよ?
ツンデレってこんなに難しいのか?
あ、人前ではツンなのか?
今まで付き合った人もいまいちわからなかったけど、莉菜もよくわからない。
むしろ知りたい‼︎
「石野くんだっけ?どこの石野くん?」
「え?どこのっていうか、オレはキミと同じ二組だけど…」
「え?オレと同じクラス?ところで、莉菜は一組なのに、なんで二人は知り合い?」
「委員会だけど?てか、透…ひまなの?」
ひま?
「いや、ツンデレ莉菜の観察だ。」
「は?キモいからあっちいってよ」
軽く腕を押された。
「やだ♡ボディタッチとか、積極的〜♡」
オレのテンションとは真逆の顔をしてくる莉菜。
それをじっと真顔でみつめる石野くん。
…
なんだよ、これは。
ま、所詮は真面目なつまらない普通顔の、高身長でもない石野くん。
こんな人は、放っておきましょう。
こうして、二人を放っておいたら…
…
え?
えええっ⁉︎
数日後…
オレは、自分の目を疑った。
右目も左目も疑った。
なんでだよ?
なんでまた、二人で話してるんだよ?
委員会って、二人しかいないの⁇
え?この世界って人間少ないの?
なんで、こんなに数多くの人が存在しているのに、あなたたちは二人でいるわけ?
「あのさ、委員会って二人しかいないわけなの?」
二人に近づいて不機嫌に質問した。
「そんなわけないじゃない。てか、なんでよ?」
「なんでって、二人で話してるから」
「それは透に関係なくない?」
「あるよ、オレは幼馴染なんだかんな?」
石野くんが、えっ?みたいな顔をした。
その顔をオレはチラッとみた。
まぁ、石野くんなんてどうでもいい。
「莉菜、話がある。こっちきて」
「え、やだ。」
「なんで?」
「だって今、石野くんと話してるし」
「あ、どうぞ行ってきていいよ」
…
「ほら、磯野くんだってそう言ってんだろ」
「いや、石野です」
「あー…行くぞ莉菜」
「あのさ、最近なんなの?透おかしいよ?」
「いや、おかしいのは莉菜だから。」
そこでチャイムがなった。
…
オレはムスッとしたまま、一度石野くんをチラ見して、そのあと莉菜も見て教室へとズカズカと歩きながら戻った。
ったく、なんなんだよ‼︎
ツンデレのくせに、ぜんっぜんデレが出てこねーじゃんか‼︎
石野くんには、デレなくせによ‼︎
あ、どうでもいいやつには、デレなのかもしれないな。
あー、そういうことか。
莉菜が石野くんを好きになるわけないし、あの二人がどうこうなるわけ、これっぽっちもないよな。
そうだ、放っておこう。
二人が一緒にいても放置していた。
しかし…
放置できない出来事が起きてしまった。
…もうパニックやんけ‼︎
な、なんであの二人が一緒に帰ってるん⁉︎
慌てて近づいたよね。
「え、委員会って学校外でもやるの?」
って二人に詰め寄った。
莉菜は、なに言ってんの?みたいな表情で
「そんなわけないでしょ。わたしたち付き合ってるんだから、放課後デート」
と、意味のわからないことをほざきだした。
え?付き合ってる?
ん?
「莉菜って、彼氏いらないんじゃなかったっけ?」
「あー、そんなこと言ってるときもあったかもね。でも、今は違うの」
…
なんじゃそりゃ⁉︎
てかさ、莉菜ってツンデレで…ずっとオレのこと好きだったんじゃないの⁉︎
なんでいきなり石野くんと付き合いだしたの?
意味わからん…
「莉菜…喫茶店のバイトって恋愛禁止じゃなかった?」
「そんなのあるわけないじゃない。アイドルじゃないんだから」
…
オレは頭の中が一気に真っ白になった。
脳内に降り積もる雪…
な、なんで…
莉菜…なんで石野くんと付き合ってんだよ…
「莉菜、それは浮気だろ」
「意味わかんないから。そもそも透は、ただの幼馴染だし、わたしは石野くんが好きなの。だから、ほっといてよ」
…
石野くんは、莉菜にそんなことを言われて、とても照れている様子がモロわかりだった。
…油断した。
完全に油断していた。
しかし‼︎
オレの方がかっこいいんだし、すぐさま石野くんから莉菜を奪ってやるぜ!
続く。




