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第97話 ゴーレム、信頼される

ご来店いただき誠にありがとうございます。


残酷表現がありますので、ご注意ください

 時間は木葉達が名古屋第1ダンジョンを探索する前に戻る。


「くそっくそっくそがぁあっ」


「ぎゃんっ」


 機嫌の悪い鼻にピアスをしたガラの悪い男が通りざまに目の前を横切ろうとした子供を蹴り飛ばした。母親らしき人が文句を言おうとしたが、男に睨まれて顔を強張らせると泣き喚く子供を抱いてそそくさと逃げていった。


「あれから何もかもうまくいかねぇ。あいつらも連絡が取れなくなりやがったしよ」


 ぶつぶつとぼやきながら大股で歩いていると先ほどの母親が警察官を連れて来たので舌打ちをして逃げ出した。


「ちっ。ガキの1匹や2匹蹴ったくれえでポリ公なんぞ呼びやがって。しばらくダンジョンにでも身を隠すか」


 そう言うと人目を避けるようにダンジョンのある方面に向かって歩き出した。


 男は過去に犯罪まがいのことを起こしたことがあるが、公的に採用できる証拠でなかったこととその時の状況から拘束されていないが公になっていない犯罪行為の常習者である。


 しかし、いかに犯罪者になっても探索者ライセンスが取り消しになることはない。それは探索者でなくなってもレベルは残るので完全に無印にするわけにはいかないゆえの処置である。その代わり探索者が犯罪を立証されれば一般人より重い量刑を課されることとなる。


 憂さ晴らしのためダンジョンに来た男はところどころ破損したままの装備を見に着けて受付を済ませるとダンジョン内部に入っていく。


「おらぁああっ!」


 ゴブリン等浅部の魔物を嬲るように倒して奥に進んでいくと、ふと見慣れない魔物を見つけて立ち止まる。それは1m程もある蠕虫のような見た目をしていた。


「あぁん?なんだこの気味の悪ぃやつは。レアモンスターってやつか?弱そうだしどうでもいいかっ!」


 さすがに巨大な蠕虫は気持ちが悪いのか顔を顰めたが、直ぐに欲に染まった顔になり持っていた碌にメンテナンスもされていない鈍らな剣を振り下ろす。


 が、蠕虫に刃が当たっても傷ひとつ与えることなく柔らかく押し返された。


「コンナマリョクガウスイバショニクルベキデハナカッタトオモッタガ、チョウドイイイレモノガキタナ」


「なっ?」


 蠕虫が喋ったことで驚愕に動きを止めた男はまだ気づいていないが、同じような姿の蠕虫が無数に物陰から姿を現して男に迫っていた。


 そして、ダンジョン内に汚い悲鳴が響いたが誰の耳にも届くことはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 ボス部屋の入口に姿を現した存在に人外達はその内にある力の大きさから警戒を解くことはなかったが、人間達は姿を現したのが同じ人間であることに拍子抜けした表情になった。


 しかし、その中で1人だけはその人間の顔を見て驚きの声を上げた。


「えええっ!波賀さんがなんでっ!」


 その男はかつて木葉を囮にして逃げたチンピラパーティのリーダーである波賀だった。


「波賀って木葉を死なせかけたあの?」


「マスターを死なせかけたとは?」


「いや、何で柘榴が聞くのっ!?天井に植えた1株目だよ!」


 覚える価値の無い不快なだけの波賀(ゴミ)の存在など記憶領域から消し去っていた柘榴が尋ねると、主から信じられないといった感情がこもったツッコミが返ってきた。


「そういわれましても……マスターは今まで植えた苗の本数を覚えていますか?」


「そんなに人を植えてたの!?」


 悪のカリスマみたいなことを言う柘榴に木葉はどこかずれたツッコミを返す。


 しかしそんな主従の漫才を余所に自身の知らないところで親友を死なせかけた仇ともいうべき男に仕返しをしたいと思っていた依和那は、偶然訪れた機会に怒りの籠った目で対象を睨みつける。また、依和那の言葉を聞いた仲間達も厳しい目で波賀を睨むが、当の本人は虚ろな目で視線を彷徨わせるだけで目の前にいる面々が見えていないような様子だ。


「波賀なる者が誰かは知りませんが、あれは人間の気配をしていません」


「え?じゃあ、あの人はなんなの?」


「分からんな。取って代わられているのか、乗っ取られているのか」


 呆然としてこぼした依和那の疑問にそちらを見ずにヨダが答える。


 自身が注目されていることに頓着もせずに波賀(?)は彷徨わせていた視線をウェイヤスに定める。


「イエヤスヨ、ソノスガタハナンダ?ソレニ、コノモノタチハササゲモノカ?」


「儂っちは今生の楽しみを見つけちったんじゃよ。霊だけどの~。そもそも儂っちの世界を滅ぼした者どもと同じような奴らと手を組むなどありえんじゃろ」


 波賀(?)が何人もの声が重なったような声で問うと、ウェイヤスが内心冷や汗を流しながらもウェーイと返す。煽られたことを察した波賀(?)は虚ろな表情ながらイラついた雰囲気を醸し出す。


「オロカナ。イノチヲセカイヲモテアソブコトガデキルソンザイニナッタトイウノニ」


「願いさげじゃの。かつての儂っちも統治君臨の野望はあれど暴虐の願望など持っておらんわ。あまりの」


「そこは断言して欲しいんだけど……」


 波賀(?)に毅然として返したと思ったら若干自信なさげなウェイヤスに思わず成り行きを見守っていたほとりから苦情がはいる。


「ソレデ、ソコノモノタチガキサマノジシンノミナモトカ?」


「まあの。儂っちは見る目には自信があるからのぉ」


「フン。イイダロウ。キサマナドソモソモタイシタセンリョクデモナイシナ。キサマタチヲシマツシテコノダンジョンモホロボシテオクトシヨウ」


 ウェイヤスに見切りをつけた波賀(?)は虚ろな視線に悪意を込めて柘榴達の方へ向ける。


「柘榴!そいつはキモイ触手みたいなやつの集合体が寄生してるっす。地上でも人間を何人か捕食してるっす。うぉえぇぇ」


 目を覚ましていた都斗が聖刻眼で波賀(?)を見て、地上での行動を読み取り柘榴に向かって叫ぶと読み取ってしまったグロシーンに吐きそうになっていた。


「でかしました都斗。今度は優しく突いてあげましょう」


「突くなっす。このセクハラゴーレムッ!」


「失礼な。アレのおかげで大きくなったでしょうっ」


「道理で最近キツイと……って、これ以上は要らないっすからマジで」


 柘榴の告白に思い当たるところのあった都斗は全力で拒否をして、かってに流れ弾を受けた木葉が虚無顔でまな板にスカスカと指を滑らせていた。


「キサマラオノレラヲマエニソノヨユウ。キニクワンゾ」


 自身を恐れずに目の前でわちゃわちゃと騒いでいる柘榴達に抑揚がないながらも不快さを表わす。


「オノレラハ軍震蟲ンガグイ。カトウセイブツドモヨ、ホネモノコサズスベテクラッテヤロウ」


 ンガグイが名乗ると波賀の目玉が零れ落ちて蠕虫が生えてくる。他にも口や胴体を突き破って何体か、下半身からも生えている様に見える。


「「「「キモッ!!」」」」


「さ〇えさんが豆を詰まらせたような名前ですね」


「おいおい、尻は出すところじゃなく入れるところだろ」


「ヨダ。それは出すところで間違ってない」


 女性陣が見た目に拒否感を覚えて悲鳴をあげ男性陣も青ざめているが、ゴーレム達は余裕な様子で呑気に感想を述べていた。


「キサマラアッ!!」


 自身を侮る存在に激高したンガグイは耳障りな音を立てて何本もの蟲を伸ばして柘榴とヨダに向かわせる。


「むっ?お姉ちゃん、触るなよ」


 もとよりそのつもりだったが、ヨダの忠告に警戒度を上げた柘榴は受け流すつもりだった何体かも転がって躱した。しかし、蠕虫が掠ったメイド服の端がボロボロと崩れている。


「振動だ。なかなか器用なことをするぜ」


「ふむ。自身を振動させているのにダメージを受けていませんね」


 ゴーレム達は割とどうでもよさそうに分析すると、もう少し相手の特性を引き出すために攻撃をしてみることにした。

行いが変わらなかったので結局ざまぁされてしまった波賀氏、再登場即退場。

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