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第94話 ゴーレム、煽る(味方を)

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 新しい朝が来たので希望の朝にすべく柘榴とヨダはそれぞれの主達を起こしに行く。


 なかなか起きない主に添い寝して依和那(おかん)に怒られたり、都斗の喪女になるのも仕方ない寝姿を撮ってみたり、何故か亀甲縛りをされて寝ているほとり(ドM)に引いたりしたが朝食を用意する。ハリス側の方にも配膳したら、外に出て濡鴉のサポートをさせていたゴーレムをしまって共に警護に立つ。


「中層ボスではいよいよ巨大化の出番があるかもしれませんよ」


「wood」


 確信があるかのように告げる柘榴に向けて、任せておけとでもいうように濡鴉は拳で胸を叩く。


 そうして3体で小屋の警護をしていると男性陣が出てきて、更にもうしばらく時間を掛けて女性陣も全員が揃った。


「ここから未踏破領域………」


 中層をソロで探索できる実力はあるが他より魔物が強いダンジョンのボスが相手とあって、ほとり達は表情を固くしていた。しかし、告知した時間にはきっちり配信を開始して明るく挨拶をする。


「さて、行こう。ヨダ達に頼らずということだから慎重に行くぞ」


「アンさんにバフを掛けて貰ったらあたしと依和那で様子見の攻撃を仕掛ける。すぐ下がるから皆は濡鴉より前に出ないで」


「wood」


「分かったわ」


 都斗とセレスタが両開きの扉をそれぞれ開いて濡鴉が盾を構えて飛び込む。続いて木葉と依和那も飛び込んだ。


 飛び込んだ先は広間になっており、奥には床几に腰かけた人影があった。


 前衛達が警戒して構えているところに、後衛の面々も広間に入り戦闘態勢をとる。


 敵が揃ったとみた人影が床几から腰をあげると大凡2.5mほどの上背を持った鬼面の武者の姿が確認できた。その武者はざんばらの髪と鬼面の間から2本の角が生えている様に見える。


 鬼面の武者は背中に背負った身の丈ほどの大太刀を抜くと脇構えのような構えをとる。


「それは落ち鬼武者です。1対1だと下層でも戦える位の強さですので気を付けてくださーい」


「ちょ、柘榴!?」


「よそ見している場合ではありませんよ」


 柘榴の気の抜けた解説に一瞬気を取られたところで、落ち鬼武者が巨体相応の歩幅で一気に距離を詰めて横薙ぎの斬撃で前衛を一掃しようとするが、寸でのところで濡鴉が大太刀を受け止めるが力負けして後ろに吹き飛ばされる。


「もーっ!後でお説教だからねっ!」


 今は柘榴に構っている暇はないので目の前の敵に集中して当初の予定通り、アンのバフを皆に掛けると木葉と依和那が落ち鬼武者の両側面から切り込む。


 しかし、右から攻めた木葉を左手に持った脇差で、左から攻めた依和那を大太刀で承けると膂力の差を生かして力任せに弾き飛ばす。


「ぶぎゃっ」「きゃあっ」


パシュパシュパシュ


 セレスタの射撃は脇差で打ち落とし、ハリスと都斗の魔法魔術を大太刀で払い飛ばす。ピシは魔法で筋強化をしても斬撃を受けられそうにないので手を出しあぐねていた。アンはデバフを掛けているがあまり効果が出ているようには見えない。


 木葉と依和那も果敢に挑むが全て承けきられてしまう。


「集団戦も強いじゃないっすかーーっ!柘榴の嘘つきーーっ」


:ざっくいきなり出鼻くじきやがったww

:正統派で強いわこいつ

:他の中層ボスとは比べ物にならないね

:挑戦しなくてよかった


「確かに落ち鬼武者はそこそこ強いですが、それ以上に貴女達が弱いんですよーーっ。吉祥院舞姫なら同レベルになっても勝ちますよっ!」


「むきぃーーっ!S級と比べるなっす!後で覚えてるっすよっ!」


「お姉ちゃん、なかなかのスパルタだな」


「ふふん。この程度全然海兵式には及びませんよ」


「海兵式?」


 柘榴に煽られて発狂しながら攻撃をしている都斗達を見ながら少し呆れたようにヨダが言うと、いまだワンチャン狙っている海兵式には及ばないと否定する。


:煽りよるww

:でも、なんかちょっと分かったかも

:ん?

:ざっくの言葉にヒントがあった


 いくつか流れて来たコメントを読んだほとり達が、木葉達の戦いを見て苦戦の原因を確信する。


「木葉ちゃーーーんっ!皆、動きが読まれているの!相手は対人戦のスペシャリストよ!!」


 そう、今まで魔物達との相手しかしてこなかった面々は相手に先読みをされるという認識がなかった。故に落ち鬼武者に読み敗けており、単純な動作ばかりの木葉達は攻撃を通すことが出来なかったのである。そして、対人戦の経験が多くあり、手数に優れる吉祥院舞姫は武人型の魔物を相手取っても有利に立ち回れる。


「そんなこと言われても~~」


 とはいえ、それが分かったところで漫画でもあるまいし、この戦闘中に先読みに目覚めてフェイントを使いこなしたりなどということが起こるはずもない。


 ぶっちゃけて言えば煽っていた柘榴も手段の多彩さや最終手段(監獄)で戦っていたので、犀川の道場に通う迄はあまり駆引きをする戦い方をしてこなかった。しかし、たった数週間の有利でも自賛するのが柘榴マインドである。


「濡鴉、2倍巨大化!少し時間を稼いで」


「wooooood!」


 木葉の指示で倍に巨大化した濡鴉はスヴァリンを構えて地に根を張った。


 そして落ち鬼武者の大太刀を承けると凍気を最大に高めて落ち鬼武者の腕まで氷で包み込んだ。とはいえ体勢が崩れて力が入らないとはいえ左手の脇差で濡鴉も傷をつけられて、右腕の氷も鈍い音を立てて軋んでいる。


「皆、集合!」


 木葉の号令で濡鴉以外の面々が集まる。


「武か。確かにボクらは経験があまりない領域だな」


「おい達は我流の喧嘩殺法ばかりだものな」


「とはいえ今この場でわたし達が武術を身に着けて対抗するなんて出来ないわよ」


「ならばわしらが持つ能力で乗り越えるしかないの」


「じゃあ、広範囲魔術とかでばばーんとやっちゃうっすか?」


「ここでペナルティモンスターが出ないとも限らないんじゃないか?」


「それならーーーーー」


 あーでもないこーでもないと作戦を練るが、濡鴉の足止めもかなり限界が近づいており皆の顔に焦りが浮かび始めた。


 それを傍で見ている柘榴も平静に腕組勢をしている様に見えるがじりじりと足が動いて落ち着かなそうな様子をしており、それをヨダが微笑ましそうに見ていた。


 やがて作戦を決めた木葉達がそれぞれの配置につくと、足止めの氷を砕いた落ち鬼武者が濡鴉を木葉達に向けて投げ飛ばす。


「ぬぅおおおおりゃあああああああっ」


 躱しきれない後衛を庇うようにピシが筋肉を肥大させて受け止めるが、勢いを殺しきれず上半身が仰け反り濡鴉にジャーマンスープレックスをかましてしまう。


「wood!?」


 頭がマット……否、畳に埋まって驚いている濡鴉に構わず後衛たちが動く。


「威力増強じゃいっ!」


 アンのバフを受けた都斗、ハリス、マスがそれぞれの最大の攻撃を準備する。そう、木葉達の作戦とは結局力押し。


 確かに落ち鬼武者の武は木葉達よりはるかに洗練されているが、吉祥院舞姫と比べて劣る程度であると柘榴の言葉から判断した。ならば,、捌ききれない広範囲かつ高火力で攻め切るなら勝機はあるのではないか、と。


「火炎ー放射ー焦熱」「フレイムバースト」「ファイアブレス」


 落ち鬼武者が避ける場所もないほど広間を埋め尽くす炎の狂乱に、大太刀を振るって活路を作ろうと試みるも敢え無く呑みこまれた。


「タラニスショット」


 一面の炎で殆ど視界がない状態になっているが、セレスタのスキルで落ち鬼武者を捉えると左右の肘関節に雷精霊弾を撃ち込み腕を破壊した。


 広間の衾を壊されたことでペナルティモンスターヤスマサが出現して柘榴が処理していたが、この行動も作戦通りだ。一定以上の相手を木葉達に相手させることがない柘榴の甘さを理解した上で作戦を立てている。


 頭を引っこ抜いた濡鴉がスヴァリンを構えて凍気を纏わせ突進して落ち鬼武者までの道を作る。


 その後ろを走る木葉と依和那が自身にバフを掛けて、濡鴉が落ち鬼武者にシールドバッシュを掛けて体勢を崩したところで飛び出す。


「短剣技ー首狩り」「速剣技ー襲爪撃」


 具足は焼け溶けて両腕を破壊された落ち鬼武者は2人の攻撃に応戦することが出来ず、その首を飛ばされて倒れた。 

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