第92話 ゴーレム、クラスチェンジを祝う(セレスタ・都斗)
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突然のセレスタの発言に体験談の噂だけは流れているクラスチェンジを初めて目の当たりにする者達は喜びの声を上げていた。
「おめでとうセレスタ!」
「やったわねセレスタ」
「wood」
「おめでとっす。でも早いっすね。もう少しかかると………あっ!」
先日測った時にレベルが96であったが中層で100まで上げようと思ったらそれなりに時間が掛かる。それが思いの外早かったので疑問に思ったが、理由に思い当たった。
「ヘーハチとナオマサね」
依和那も理由に思い至り原因の魔物の名を口にする。
「ダンジョンボスより強いって噂もある魔物を倒したんすから相当な浮遊魔力が発生したはず。自分で戦うよりは少なくてもそれなりに魔力を取り込んだんすね。パワーレベリングっすねぇ。いいんすかぁ?木葉を育てるのにそれは禁止じゃなかったんすか?」
都斗がにひひと笑って柘榴を見る。木葉を育てる課題を出した際に言い出した禁止事項を本人が破ったことを指摘された柘榴は、表情を動かすことはなく人の死角をすり抜ける無駄に見事な歩法で都斗の眼前に立つ。
「へ?」
「16連打!!」
「おほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!」
図星を指されて逆ギレした柘榴に1秒間に16回テクニカルに両方のボタンを連打された都斗は生配信でアヘな顔を晒す………寸前でなんとか依和那がハンカチを被せた。南無三
悪は速やかに捕縛されて説教された。その間は筋肉達とヨダが敵を倒してくれていた。
すっかり放っておかれたセレスタはクラスチェンジを終わらせてちょっと寂しそうにしていた。
「エルフの上級職というのはどんなものなんだ?選択先はあったのか?それとーーー」
目の前に自身の知識欲を満たす存在が現れたことで、露払いは筋肉達に任せてセレスタを観察していたがクラスチェンジが完了したとみるとハリスは怒涛の質問攻めを始めていた。
「え、エと、あの………」
「やめなさい!」
マッドな探究者に迫られて困るセレスタに救いの女神が舞い降りる。チョップでハリスを鎮めるとため息をついてセレスタを庇う。
「冷静沈着な人かと思ってたのに本性はマッドとか……問題児はアレだけで十分なんだけど」
「ふっ。そこがドストの可愛いところだぜ。おかんなら分かるだろ」
「誰がおかんよ!?」
依和那に顔を向けながらもアシガルの槍を片手で巻き落として打ち抜きながら太い笑みを浮かべるヨダに百花斉放のおかんが吼える。
「ありがとうござイます。お母様」
「あんたまで!?」
背中から撃たれた依和那が驚愕の表情でセレスタを見ると、思わずといった表情ですまなそうにするので余計に心にダメージがはいった。
「それはそうトわたくしのジョブは【精霊銃姫】になりましたワ」
「え?言っていいの?」
自身のジョブは通常仲間や精々連合を組んだ場合くらいしか明かさないが、配信もされている場であっさりと明かしてしまったので依和那は驚いていた。
「ええ。今までのジョブは自身のチャンネルで明かしてしまっていますし、依和那達の仲間でいるなら別に明かしてしまっても支障ありませんから」
ストレートな信頼に依和那の顔が赤くなり、画面はてえてえの文字に埋め尽くされていた。実際パーティを移るということを考える訳でもなく、百花斉放は対人戦を主とするパーティではないので知られても能動的な面ではそれほど問題はないと言える。ただし、悪意というものは本人にその気がなくても寄ってくるものである。
ともあれ百花斉放の面々に関しては世界最高峰の万能性を持つ身内には甘い保護者がいるので、外部からの干渉に対しての鉄壁さが保障されている。
「わたくしにアった他の選択肢は【精霊術師】と………でしたが、やハりこれが天職ですわ」
シェキナーとタスラムを抱きしめて頬ずりするエルフに若干引きながらも、小声ながらも聞こえた選択肢によって知る、友がその心にある復讐心に呑まれないように支えようと木葉と依和那は決意していた。
一先ず新しいジョブになり発生したスキルは後日調べることとして、先を進むことにする。この時点でほとりの配信は拡散されて以前の同接数に近いところまで来ており、仲間ともどもついてきてよかったと確信していた。
「キタキタキタっす!わっちの時代がきたっすよぉぉお!」
セレスタと都斗のレベル差は1しかなかったので直にその時は来た。1層上がって8層を探索していた時に都斗が突如雄叫びを上げた。
都斗は人間なので何があったか察したが、今度はハリスも落ち着いて続きを待っていた。
「ふんふん。わっちも選択肢があるっすねぇ。【魔法師】は当然あるっすね。それと魔女っすか!………んん、違う?これは………なんすか【喪女】って!?」
:喪女ww
:喪女って職業か?ww
:そら絶叫するわww
「あのスキルといい悪意を感じるっすよ!あとは【魔導書師】と【禁術師】っすか。聞いたことないのばっかっすけど」
魔法師以外は前例のないジョブが選択肢として現れており、これは都斗の自身の才を含めた環境が特殊であることが関係していた。
これにはあまり食指を動かされていなかったハリスも思わず前のめりになっていた。
「んん~~。どうすればいいっすか?ザク右衛門さん」
「なぜ青い狸ではなくあごの割れた侍でござるか?」
困ったときのザクペディアとばかりに柘榴に聞く。
「ふむ。喪女はもてない女性です」
「知ってるっす!その選択は絶対ないっすから他の2つを知りたいっす」
「【魔導書師】は魔導書ーーー誰でも魔法を使うことが出来る本を作れます。しかし、自身が魔法を使う際にも魔導書を媒介にする必要があります」
「微妙に不便っすね。引退した後も稼ぐには困らなそうっすけど」
魔法を使う際に魔導書を挟むため自由度が下がることから少し迷いを見せると、一先ずは最後の選択肢の説明を求める。
「【禁術師】は文字通り禁忌の術ーーー危険であったり冒涜的であったりと効果は並外れていますが扱いにくい魔法を使えるように、といいますかそれしか使えなくなります」
「ほぼ犯罪者予備軍っす!?」
あまりに剣呑な香りのするジョブにドン引きする。聞いていた木葉は少し厨二心と右手が疼いていたし、何ならカメラの向こうでも羨んだり古傷を抉られて悶絶している者達がいた。
「ぐぐぐ、これは普通に魔法師が一番よさそうっすか………」
「いや、君は魔術を使えるだろう?ならば、あの2つのジョブのデメリットがかなり薄いだろう」
悩みに悩んで魔法師になろうと考えたところで、興味深げに聞いていたハリスから助言が入る。それを耳にした都斗の目からぽろぽろと鱗が落ちた幻が見えた。
「そうっすよ!全部をスキルで賄わなくていいんすから………決めたっす。わっちは魔導書師になるっす」
特に派手なエフェクトなどはないが選択をしたことで都斗は既にクラスチェンジを果たしていた。
「「「オメデトウゴザイマスーーー」」」「wood」
「もっと心がこもった祝福がほしいっすーーー!」
それまでに都斗が十分騒いでいたので何となく今更感を感じ、パチパチと棒読みで拍手をする仲間達に都斗が不満を訴える。
「あ、魔導書師になったのでしたら、既に魔法スキルは消えていますので使えませんよ」
「え?」
早速後悔をした都斗であった。




