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第91話 ゴーレム、誤魔化す

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 塞がった先から呼びかける声が聞こえると、木葉達は慌て始めた。


 それもそのはずで通路を塞いでしまったので、前にも後ろにも行けない状態にしてしまっている。つまりは、今呼びかけているパーティの帰り道を失わせてしまっているのだ。迷惑どころではない話である。


 どの道先に進む時に通路を開けるつもりであったので、元凶の1体が塞がれて壁となった床板に手を当てる。


「掘削ー貫通」


 久々に使われた気がする魔術で人が2,3人並んで通れる程度のトンネルを作り先と繋げる。


「「「おお~~~っ!」」」


 トンネルの先から歓声が聞こえ、やがてがやがやとした喋り声と共に数人の男女が姿を現す。


「いや~~。どうなる事かと思ったぜ」


「ふっ。助けられたことを至高の私に感謝しなさい」


 後ろめたさで良心のある木葉達は気まずそうにしているが、元凶の1体は厚かましくも胸を張って偉そうにしていた。


「あっ、お姉さま!」


「お姉さま?」


 どこかで聞いたことがあるような呼び名で呼ばれたと思ったら、かつて会ったことがある顔があった。


「貴女は……確か、隅のほこりでしたか」


「しぶとそうな名前ですね。残念ですが池野ほとりです。でも、半分も合ってますよ!」


 それはまだ百花斉放が結成されておらず、木葉と依和那と柘榴、ついでのおっさんで探索をしていた際に助けることになった配信探索者ーーー探tuber池野ほとりであった。


「池野さん!お久しぶりですっ!」


「木葉ちゃんも久しぶりーー!」


 久しぶりに会った顔見知りに木葉は喜び駆け寄ると、


ピシガシグッグッ


:レアキャラ登場だーーーっ!

:唐突にポルポルとレロレロになってて草

:セレスタちゃんだ!エルフコラボ助かる

:イケメンもいるし、筋肉が多いなマジで

:妖怪もいるぞ。だれか陰陽師よんでこい


 ほとりは配信を生業とするため、停止しなければ当然リスナーは見ているわけで配信をしていないため普段は露出の殆どない木葉や依和那が映り込みコメント欄が湧いていた。


「あ、ごめんね。配信停めた方がいいかな?」


「あたし達は別に大丈夫ですよ。ハリスさん達はどうですか?」


「ボクも別に構わない」


「俺たちの」「筋肉を存分に」「見て行ってくれい」


「妖怪ってのは俺のことか?」


:褐色クールなイケメン登場は滾るわ

:この筋肉達一糸乱れずポーズ取ってんだがww

:オネェかと思ったら声と口調はダンディだな

:銀髪に防御性皆無の服装に既視感があるんだが

:奇遇だな、ワイもだ


 配信に興味のないハリスは頓着せず、筋肉達はノリよく応じ、ヨダは笑っていた。


「あ、池野さんも今日は1人じゃないんですね」


「そうなの。あの時の配信で死にかけたことを両親からもすっごく怒られちゃって、あわや探索者を止めさせられるところだったんだけど、パーティを組むことで何とか許してもらったの。それで探tuber同士でパーティを結成したの」


 そういってほとりがメンバーを紹介すると、木葉達も初対面のメンバーとハリス達を紹介していく。


「それで、そちらのお兄さん(?)は?」


 リスナーも興味津々なヨダに視線を向けて紹介を促すが、機密と言って差支えがないヨダをそのまま紹介することが躊躇われて木葉は眉を下げて困った。当事者のハリスはそういった事情にあまり頓着していないので、気苦労が倍になっている木葉は将来は禿げるかもしれない。


「彼はヨダ。ハリスと深い関係にあるナイスガイです」


 見かねて柘榴が口を挿みカメラを向けられたヨダがばちこんとウインクをしたその瞬間、特定の層が激しく荒ぶりだして尚も誰何しようとするコメントを呑みこんだ。


「俺とドストの出会いだって?それはーーー」


 柘榴の意をくんだヨダもコメントから腐臭が漂う質問を抜き出して答え、話を広げることで自身の素性から話題を遠ざけていく。


「そ、それで、木葉ちゃん達は今回どこまで予定しているの?」


 なんだか危なそうな雰囲気を感じ取ったほとりも話題を変えて木葉達の行き先を尋ねる。


「は、はい。あたし達は中層のボスまで倒して帰る予定をしています」


「え………?未踏破エリアまで?」


「え?未踏破?」


 告げられた行き先に驚いたほとりがおうむ返しに尋ねると木葉が固まった。


「うん。名古屋第1ダンジョンは範囲攻撃が使えない上に罠が多くて安全地帯がない。その上敵も強めだからあまり深くまで行く探索者がいないのよ。現在の最高到達階層は9階よ。中層ボス部屋手前で止まっているの」


「そうなの?」


 呆然とした表情で仲間達の方に顔を向けると当然調べてあるので頷きを返す。探索を成功で終わらせるために情報を集めることは基本であるが、肝心なところで抜けるのがへっぽこ戦術である。


 仲間達としては柘榴とヨダがいてハリス達も強者側であるので中層までであれば、目的地まで辿り着かなくても最悪の事態にはなったりしないだろうという楽観もあった。


 ほとりもそれを察してか少し考えると仲間達の元に向かい小声で相談をすると戻ってきて、木葉達に突然頭を下げた。


「お願いします。うち達も一緒について行かせてください!木葉ちゃん達が未踏破エリアに行くなんて絶対伝説になるやつじゃないですか!」


「へ?」


:探索者達にとっても喉から手が出るほど欲しい情報すぎる

:普通の探索者には危険だから頼めないけど木葉ちゃん達ならって

:なにとぞ~!なにとぞ~!


 今まで誰も訪れたことのないエリアにどのような危険が潜んでいるか分からない。そんなところについて行かせてほしいなどとは普通であればほとり達も言い出したりはしない。


 しかし、配信者達の勘が言っている。「YouこのBigwaveの乗り遅れんなYO」と。


 故に恥も承知で願い出ると、リスナーからも当然ながら一部は批判的な意見もあった。しかし概ね追従するようなコメントが多数を占めていた。


 木葉は助けを求めるように視線を彷徨わせるが、目が合った柘榴は涼しい顔をして決断を待つばかりだ。しかし、木葉があまりに迷っているのを見てとり、すいと視線を仲間達がいる方に向ける。


 それを見て木葉も気づく。仲間に相談をしてもいいのだと。視界が晴れた木葉が幻のしっぽを振りながら依和那達と話を始めるのを柘榴は腕を組んで見守っていた。


:なんかいい雰囲気だしてるけど依和那ちゃん達に投げただけだぞ、ざっく

:どっちでもいいと思ってるぞ、ざっく

:きゃんきゃん駆けてく木葉ちゃん可愛いと思ってるぞ、ざっく


 コメント欄がおおよそ真実を当てていた。


「それじゃ、柘榴がほとりさん達の警護。ほとりさん達は入場時に設定した目的階層以降は戦闘しない方がいいですね」


 とりあえずヨダの異常性能などは秘匿する方向で意見がまとまり同行を許可することになった。


「そうね。本当にありがとう」


 柘榴以外には普通に礼儀正しいほとりが礼を言い、他のメンバー達のヤン吉君、モブ彦君、ちょい美さんも口々に礼を言う。本名ではなく探索者としてはそこそこだが配信者としては底辺に近かったことからの自重を含んだ配信者名である。


 早速大所帯となった一行は探索を再開する。


 色々と制約が多いダンジョンではあるが木葉達とハリス達はそこまで範囲攻撃に頼らない戦い方を出来るので割と相性がいい。


 7層から出てくるオチムシャやヨウジュツシも難なく倒しながら進んでいると突如セレスタが立ち止まる。


「セレスタ?」


 少し呆けたような表情を見せるセレスタに木葉達は心配そうな目を向けるが()()()のインド勢はその理由に見当がついていた。


「わたくしクラスチェンジをするヨうですわ」

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