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第89話 ゴーレム、弟達と上層を攻略する

ご来店いただき誠にありがとうございます。

「それじゃあ、あたし達から行きますね」


 そう言って仲間達に合図を出すとゲニンを索敵で見つけ出してセレスタに指示を出して討ち取り、濡鴉がアシガル達を足止めして依和那と都斗で倒していく。木葉は遊撃をしながら敵を攪乱したり行動エリア内の罠を探し出して仲間に知らせたり戦闘範囲を調整しながら動き回っていた。


 名古屋第1ダンジョンでは戦闘範囲に気を付けなければいけない。このダンジョンは壁が壁ではなく衾になっており、多少丈夫であるがこれを破るとペナルティモンスターのヘーハチが出現してしまうのだ。


 このヘーハチは出現すると人も魔物も関わりなく狩っていき、ダンジョンボスより強いのではないかと実しやかに噂をされている魔物である。


 実はここに来るまでに木葉達は一度ヘーハチに遭遇していた。柘榴がダンジョンに入って早々に止める間もなく衾を破ったのだ。


 これには居合わせた探索者達も慌てて逃げ出そうとしたが、漆黒の具足を纏ったヘーハチの放つプレッシャーでまともに体を動かすことも出来ずにただ震えるだけになっていた。


「ざ、柘榴。何を……」


「ふむ……なるほど。ヨダ」


「ああっ!」


 柘榴の呼びかけでヨダが飛び出し、迎撃の為に長柄から繰り出すヘーハチの槍技を最小の動きで流し続ける。木葉達探索者に見えるようにヘーハチからあらゆる手を引き出して、仕舞には長柄を弾き飛ばしたうえでワンパンで仕留めた。まさに圧勝という言葉が相応しい戦いーーー否、蹂躙であった。


「す、すげぇ」

「ヘーハチを見た上にそれを倒すところまで見れるなんて」

「ヘーハチの技もオネェの技もすごすぎる!」

「あの動きを忘れぬうちに修行するでござる」


 その戦いを見て柘榴が合同の探索を勧めたわけを理解した木葉達であった。また、ハリスもヨダの実力の一端を見れたことを歓迎し、居合わせた探索者達も終わってみれば結果に概ね好意的であった。


 実は柘榴とヨダ以外は気づいていないが、深層級上位のヘーハチを倒したことによる浮遊魔力をヨダも柘榴もレベル固定な性質の為に吸収することが出来ず周囲の探索者達に分配されていたりする。


 それはそれとして柘榴は説教された。報連相は大事です。そしてヘーハチのドロップである蜻蛉切はハリスの日本土産になった。


閑話休題


 ともあれ木葉達はヘーハチの圧倒的な力を知っているので範囲攻撃を封じ、戦闘領域を調整してペナルティモンスターを出現させない様に立ち回っていた。


 とはいえ多少強くなっても上層の魔物なので今の木葉達には物足りない程度でしかなく、直に駆逐されて戦闘は終了した。


「パーティバランスがいいな。経験を積んだら様々な場面に対応できそうだ。さて、今度はこちらの番だ」


 そう告げたハリスは敵性感知の魔法を使い、魔物の集団がいる方へと先導していく。そのハリスを守るように筋肉達が脇を固める。このパーティは斥候系のジョブがいないため学術士のハリスが索敵を担当しているようだ。


 ハリスが案内した先には先ほど木葉達が倒したよりも多いくらいのアシガルとゲニン、更にオカッピキもいた。


 接敵したハリス達はピシが前衛でマスが中衛、アンとハリスが後衛という陣形を取る。


「ウォークライじゃあーーーーーっ!ラララ~~♪」


 アンが戦魔法ウォークライでバフを皆に掛ける………のはいいが、なぜか勇壮な戦歌っぽいものを歌いながら踊っている。木葉達はなぜかアン達の顔のみならずアシガル達の表情まで見えた気がした。


「マッスルアーム!」


 マスは肉魔法で腕の筋肉を肥大させると、なぜか魔物達を見据える。そこでなぜかピシがマスの肩に手を置き魔物達に顔を向ける。魔物達は不気味なものを感じたのか狼狽したようなしぐさを見せる。


 意味の分からない動きに木葉達は頭に疑問符を浮かべつつも戦いの行方を見守る。


 マスが腕を振りかぶり魔物達に向かって構えるとピシは元の位置に帰っていく。マスは再び腕を下ろすとアシガルを見据える。


 謎時間があまりに謎であったため魔物達はひるんでいたが、焦れた魔物達は武器を振りかぶってマス達に襲い掛かる。


 襲い来る魔物達にピシが再び前に出ると大きく息を吸い込む。


「ファイア!ファイア!ファイア!」


 ピシが口から火の玉を噴き出して魔物達を火だるまにしていくと、マスも背負っていたハンマーを振りかぶり魔物達を再び見据える。するとひるんだ魔物達の動きが再び止まる。


「いや、ナニコレ!?」


「わっちの知ってる火魔法じゃないっす!?」


 筋肉が歌い踊り、なぜかやたら敵味方それぞれの表情に目を向けられ、時間を引き延ばしたような謎の戦いについに依和那がツッコみ、どう見てもダル〇ムなピシの火魔法に都斗が驚く。


「あ、あれは!!」


「知っていルのですか?柘榴」


「ええ。あれはかつてある小国が非道な蛮族に襲われた際に見せたといわれる伝説の戦術。幾度も皆の表情に視点を移して体感時間を遅くし、微妙に意味のないような動きで相手を牽制し、更に何故か歌い踊り自らの戦場を整える。相手の意識を引き付け自らの意のままに有利を得ることから引奴得意我と呼ばれています。至高書房より」


 劇画調の顔で説明をした柘榴は半眼の木葉ににゅーんとされた。


「適当なこと言ってるよね」


「……はい」


「マスさん達も真面目にやってくださいよ!」


「はっはっは。悪い悪い。それじゃ皆、ここからは普通に行こうか」


「怒られてしまったのう。それじゃやるか」


「マスは初めて組む相手には大体これをやるんだ」


 それからは先ほどまでとうって変わって魔法で適時筋肉操作をしたマスが敵を押しとどめて、アンが敵にデバフを掛けて自らも戦槌を持って前線に躍り出る。やはり口から出す火魔法は変わらないピシと土魔法を得意とするハリスが敵を仕留めていき、先ほどまでの間は何だと言いたいくらいすぐに戦闘は終わった。他意はないがハリスのピンポイントで突き上げる石杭は、皆が青ざめて尻に手を当てるくらいエグイ攻撃であった。


「も~~。本当にそういう戦い方なのかと思っちゃいましたよっ!」


「マスは好んでいるが、身内ネタのようなモノだからのう。儂らの文化を知らん者は分からんネタだな」


「緊張してるみたいだから解してやろうと思ったんだよ。すまんすまん」


 ぷんすこしている木葉にアンが苦笑しながら追い打ちをかけると、困ったようにマスが釈明する。心なしか筋肉が萎んで見える。


「でもここからはささっと進もうか」


「ううぅ~~。誰のせいですか~~」


 なんだかんだと言ってもマス達のおかげで初対面で緊張していた木葉達の緊張が解れて動きから硬さが無くなり、その後はさくさくと魔物を倒し上層のボスであるヨロイムシャも特に苦戦することなく倒すことが出来た。因みにボスドロップは特に効果はないただの鎧飾りであった。


 6層目より中層となる第1ダンジョンではアシガルが強化されチュウニンと遠距離攻撃をしてくる弓アシガルが出現する。


 しかし、名古屋第1ダンジョンの中層は敵よりも罠が危険であることで有名だった。忍者屋敷のごとく抜け道からの不意打ち、棘の仕掛けられた落とし穴、天井落としなど致死性の高い罠が多く斥候職がいても神経を使うため不人気なエリアであった。


 インド勢は罠の解除は不得手としているので、索敵はハリスに任せて罠は木葉が受け持つことになった。


 訴えるような眼差しで後ろに控える柘榴に視線を向けるが、明らかな作り笑いでサムズアップを返されてがっくりしながら罠を探し始めた。

引奴得意我→インド映画

かなり独特な見せ方をしてますよね。

正直そのあたりの描写は文章力不足で納得いく文章が書けていないので後で書き直すかもしれません。


と、いう訳でハリス達はインド所属という設定です。

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