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第88話 ゴーレム、弟達と探索する

ご来店いただき誠にありがとうございます。

「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」」」


 ある日の早朝とある集合住宅で乙女達の鋼板を割くような悲鳴が上がった。


「な、何があったんだいっ!?」


 偶々自宅にいた田中が悲鳴に驚いて飛び出してきた。


「な、な、な、何でもないですっ。騒がせてごめんなさーい!皆、中に入って」


 慌てて飛び出してきた木葉が田中に詫びつつ依和那達を急いで引き入れパタンとドアを閉める。


「?まあ、楽しそうでよかったよ」


 頭に疑問符を浮かべながらも無理のない明るさを見せる木葉に安心して部屋に戻っていった。


「も~~。柘榴がいきなり顔出しちゃダメって言ったでしょ」


「吃驚しマした。身体は直ったのデす………ね……ですか?」


 木葉をいなす本体に戻った柘榴を上から下まで見て直ったと自身が持てず疑問形になる。それもそのはず。四肢は修復されており問題なく稼働しているが、左目周辺の罅は未だ修復されておらず左目は取ってつけたように瞳が嵌め込まれており瞼がない。


 つまりは眼球むき出しですごく怖い。つまり依和那達は玄関を開けたら突如ホラーキャラに出会ってしまったということである。


「その顔は怖いから何とかしてくれないかしら」


 お願いというよりも半ば脅迫じみた目つきをしながら依和那が「もちろんしてくれるわよね」という意を込めてお願いする。


「退廃的な私も美しいではないですか。ブツブツ」


 木葉からも評判が悪いので文句を言いながらもニョロッと前髪を一部伸ばして月影先生のよう左目を隠す。


「伸びたっす!?」


 何か騒いでいる都斗は放っておいてダイニングへ案内をすると皆に朝食を提供する。


 点けてあるテレビには日本の首相と人間サイズの魚から筋肉質な手足の生えた人魚族の長が握手している映像が流れていた。川崎ダンジョンの人魚族は5割がこのタイプで、残り3割が人面魚ともいうべき原典人魚、残り2割が人の上半身を持つタイプであったので各所から悲鳴が上がったとか。


 ともあれ朝食を食べ終えると名古屋城に出来たダンジョンーーー名古屋第1ダンジョン支部のホールに入る。ハリス達とは現地で待ち合わせの予定だ。


 ホールに入ると一部に人混みが出来ており、その集団から特徴的な銀髪のワ〇メちゃんヘアが見えたので少し嫌そうにしながらも百花斉放の4人と2体はそちらに向かう。


 濡鴉が先導としてゴーレムの膂力をいかんなく発揮して人混みを掻き分けて進むと、中心には何故か筋肉を強調するポーズをとるヨダとマッシブな3人の男達がいた。ハリスの姿も観衆に紛れていたがそこにあった。


「どうやら肉体の美しさを比べているようですね。もちろんヨダが1番ですが」


「何をやっているっすか……」


「すごい体してるねぇ」


「行ってきましょう」


「うん。よろしくってぁぁぁぁぁぁあっ!ちょっとぉぉぉぉぉぉぉおっ!」


 ヨダ達へ向かって歩き出した柘榴がエプロンを脱ぎだして、止めてくれると思っていたら加わろうとしていると察した木葉が跳びついて阻止する。


「マスター!?発情期ですかっ!後で喉を撫でてあげますから放してください。私こそが至高の体であると見せつけなくてはっ!」


「最近本気で犬扱いしてないっ!?柘榴は方向性違うからねっ!こんなところで脱いだら逮捕されるからっ!」


「ふふふ。私は物ですから罪を問えるわけないではありませんか。ル〇バに服を着せたりしないでしょう?」


「あレって木葉さんが彼らを褒めたからでスわね」


「そうね。前はそこまで気にしてなかったみたいだけど、最近ちょっと変わってきたかしら?」


「そっすね……木葉が振り回されるのは変わらないっすけど」


「「それね!」」「wood」


 騒がしいやり取りを眺めながら、木葉に対する執着がやや強くなっている気がする柘榴の奇行に呆れぎみに木葉の未来の苦労を思って合掌する。


 騒がしくしていることに気づいたハリス達がポーズ合戦を止めて近づいてくる。ハリスとヨダは手を振りながらのんびり歩いてくるが筋肉3人組が大股で近寄り木葉の前で止まる。


「やあやあやあ、初めましてだなぁ。おれはマス」「おいはピシ」「わしはアンじゃ」


「「「よろしくな!」」」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「それでそちらがZAKUROか!ヨダの兄貴をあんな美しい肉体にしてくれてありがとな」


「興奮してここ数日は毎日どこまで兄貴の筋肉に近づけたか比べちまってたぜ」


「まだまだ及ばんがの!だがそれがいい。目標があると捗るしの」


 捲し立てるマッシブな巨漢達に、ひたすら明るいので怯えてはいないが圧倒されてこくこく頷くだけの置物と化した木葉を担ぎ上げて巨漢達を見上げる。


「ハリスのジョブは聞いていませんでしたが、ヨダを含めて前衛4人に後衛1人といったところですか。ややバランスが偏っていますね」


 柘榴がハリス達を見回してパーティ分析を口にするとマス達は不思議そうな顔をした。


「何言ってんだ?おれ達は前衛がいなかったからヨダの兄貴が入ってくれて待望の前衛をゲットしたところだぜ!」


「「「「「え!?」」」」」「wood!?」


 マスの見りゃ分かんだろとでも言いたそうな物言いに百花斉放の面々は驚愕に目を見開いた。ついでにそれが聞こえた探索者も驚いていた。


「その身体で後衛ですか!?」


 柘榴の言葉にマス達3人は誇らしげに筋肉をアピールし始めた。


「おれは火属性の魔法師だぜ」「おいは肉魔法師」「わしは戦魔法師じゃ」


「ああ、先日は言ってなかったね。ぼくは学術士だよ」


 ハリスが小林と同じ学術士であることに違和感がないが、3人が魔法職であることには木葉達は違和感が拭えなかった。


「少しお待ちください。肉魔法師とは何ですか?私でも聞いたことありませんよ?」


「肉を操る魔法を使えるんだ!」


「肉って何ですか!?カルビですか?バラですか?この世界の人間は何だかおかしな者が多くありませんか?ジョブがポメラニアンとか!」


「あたしのジョブは斥候だよ。種族も人間だからね。だよね?」


 ポーズを切り替えながら端的すぎる説明をするピシに怪訝な顔でツッコミを入れる柘榴を依和那達は「確かに!」と思ったが、木葉は流れ弾を受けてアイデンティティの危機だった。


「肉魔法はその名の通り筋肉や贅肉ーーー脂肪を操ることが出来る。魔力で強化する身体強化とは違って筋肉量を増減させたり、脂肪を厚くして防御行動も出来るから今まではピシが前衛をしてくれていたんだ。あと肉回復も出来るよ」


 見かねたハリスが他の探索者には聞こえないように声を潜めて説明をしてくれる。


 少し納得がいっていないながらも柘榴が納得したのを見計らって木葉達もジョブを共有して、大まかに行動方針を決めて受付を済ませる。


「作戦も決めたし、それじゃあ行こうか。このダンジョンにもポータルが設置されてるんだけど、各層に辿り着いた人しか使えないルールだから今日は最初からだよ」


 噂で聞いていた魔道具があると聞いてハリスが眼鏡を光らせるが、勝手知りたる筋肉達が横道にずれようとするリーダーを押さえてダンジョンに引きずっていく。


 名古屋第1ダンジョンの中は畳敷きの室内のような迷宮になっており1層から天守へ登るダンジョンになっている。総階層数は多くないと予想されているが、1層が広く入り組んでいるため進みにくく罠が1階層からあるため第2ダンジョンより熟練のパーティが多い。


 百花斉放は上層を攻略済みであるが、本日はハリス達が一緒なので上層を連携の練習がてら早足で攻略することになっている。


が…………


「「「GYAAAAAAAA」」」


 1層で最もよく出現する敵ゾーヒョーとヘーソツが木葉達の視界に入る前に、ヨダが手首のスナップだけでかまいたちを放ち敵を倒してしまうのでなにもすることがなかった。


「あ、あの~~~」


「連携強化をするにもここだと弱すぎて相手になりそうにないからな。今回は余り時間に余裕がないし、もう少し進んでからにした方がよさそうだ。ちょうどよさそうなエリアは俺が見極めるから任せてくれ」


「あ、なるほど」

 

 確かにワンパン出来る程度の相手では連携を組むまでもなく倒せてしまうので、撃破をヨダに任せて進軍速度を上げ木葉達は道案内に徹することであっという間に上層3階に辿り着いた。ここではアシガルやゲニンといった急に強い魔物が現れる為、第1ダンジョンでは最初の足切りエリアとなっていた。


 顔のない木人が御貸具足を纏い槍を持ったアシガルがわらわらと現れて、姿は見えないがゲニンが潜んでいる気配もする。ここからが本当の名古屋第1ダンジョンの探索であると言えた。


 ここからはヨダも後ろに下がり人間チームに戦線を託す。意外と面倒見がいい柘榴()の弟は普通に面倒見のいい性格をしているのだ。


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