第87話 ゴーレム、弟を披露する
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ヨダを連れて柘榴が出た後しばらくはハリスの話を聞いたり自身たちの近況を話したりしていたが、しばらくすると支部長室の扉が開き何故かげんなりした柘榴が中に入ってきた。
「あれ、柘榴。ヨダさんは?」
柘榴が一人なことを不思議に思った木葉が尋ねると、砂漠で水場を求める遭難者のようにてこてこと走りより飛び掛かった。
「おぐぅっ」
「かわいい弟機の為にすごく頑張りましたよ。さすが至高の私です。私を褒めて癒してください、マスター。マスター?」
柘榴の頭突きで顎をかちあげられた木葉は再び夢の世界に旅立った。深い眠りについた木葉にしがみ付きがしがし揺らして喚いているのを見かねた依和那が引き離す。
「どうしたのよ、珍しい。それに一人?」
「ううう~~~。大変不本意です。ヨダなら服を着たら戻ってきます」
「ふむ?ZAKUROの変調にはヨダが関わっているのかい?」
ハリスが柘榴の奇行に疑問を投げかけたちょうどその時、再び支部長室の扉が開く。
眠っている木葉以外の視線が扉の方に向かうと柘榴はしょぼくれた顔になり、他の面々はチベットやインドにいるキツネのような顔になった。
皆の視線の先、そこにいたのははちきれんばかりの筋肉を持ち彫りの深い顔。顔を構成するパーツはペンどころかマーカーが乗りそうなばさばさまつ毛に高い鼻と厚い唇、立派に割れた顎、ワ〇メちゃんのような髪型の銀髪。化粧が施されていて服装はシンプルな白いワイシャツとスラックスだが、その姿はどう見てもオネェであった。
見覚えのない姿であるが、あれがヨダであると皆が理解した。謎の柱の男のようなポーズをとっているヨダと萎びている柘榴の間を交互に視線移動させて納得した。明らかに悲しそうにしょぼくれている柘榴を見て察した。
((((柘榴って一応感性は一般的なんだ!?))))
チョイスは色々おかしいが現代基準の感性を取り入れているので、柘榴はそこまで変な格好を百花斉放のメンバーにさせたことはない。精々揶揄いがてら身代わり人形を装備させたくらいである。
そんな柘榴が本人の希望とはいえ大切な弟をかな~り個性的な姿にしたことで精神的に消耗したのであった。
「待たせたな。こうしてドストと話が出来て嬉しいよ」
「ん?なんだって?」
なんだかおかしな単語が聞こえた気がしてハリスが聞き返すと、ヨダは困ったように眉を寄せて柘榴に顔を向ける。
「お姉ちゃん。俺の言葉はおかしかったか?」
「いいえ、正常です。さすがは私の弟ですね!しかし、まともに言葉を交わしたのは初めてでしょう?ちょうどいいのですから貴方も自己紹介をしたほうがいい」
「それもそうか!俺は創造主メイアリスにより【無双士】の役割で創られたゴーレム。名はヨダだ。よろしくなドストとお姉ちゃんの友達の皆」
ヨダがばちこんと擬音がしそうなウインクを決めるが皆の頭から疑問符は全く消えておらず、いまいち反応は鈍かった。
「ハリス。ヨダにとって主は皆運命の恋人です。老若男女問わず」
「なるほど。理解した。興味深いね。ヨダ、よろしく頼むよ」
「え?それでいいのですか?」
柘榴の割と衝撃的な補足に、当のハリスがさらりと知識欲優先で握手をすると鷹柳が呆然と呟く。その呟きが耳に届いたヨダが鷹柳に手をハート型にして向ける。
「鷹柳ちゃん、覚えておくといい。愛は世界を救うんだ」
「は、はあ」
なんかまた濃いのが現れたなあと思いながら相槌を打つ。ちらりと女子勢を見ると柘榴はいつものことと達観しているが、他の面々は目をキラキラさせていた。特に依和那は少々息を荒げていた。小型犬はスピスピお休み中である。
「ヨダの趣味は恋バナですので付き合ってあげてください」
「ボクの苦手分野だそれは。ふむ。パーティメンバーにでも頼むか」
「今日はその方達は一緒ではないのですか?」
「ああ、今日ZAKUROに会えると思っていなかったから、皆は観光中だよ」
「そうですか。それでヨダさんが何を出来るのか教えていただいても?」
軽いジャブの後は本題だとでもいうように眼鏡を光らせながら鷹柳が問いかける。ヨダがここで教えていいのかという意味を込めてハリスをちらりと見ると、どの道ZAKUROがいればわかる事だと頷くので自身の性能を語る。
「俺は近中距離戦用ゴーレムで大凡の武器を使いこなせる。一番得意なのは無手だ。武器使いは俺より巧者の兄弟がいるからな」
「なるほど。有難うございます」
出来れば日本で発見されてほしかったが、そこは仕方がないと割り切る。ハリスの人格はまだ掴めていないが、彼の好奇心が良識を上回ると拙いかと脳内フォルダで要注意人物に入れる。最も海外に干渉できるほどの影響力は日本のギルドにないため警戒程度しかできないが。
「悩みの種が増えただけのような気がしますが、人類の戦力が増えたと前向きに捉えておきましょうか。はぁ」
「鷹柳。これをあげましょう」
柘榴達と関わることになってからプラスも多いが気苦労的には大幅にマイナスで、今も重大案件を抱え込んで沈痛な顔を見せる鷹柳に柘榴がスプレーと錠剤の入った瓶を投げた。
「なんです、これは?」
「育毛剤と胃薬です」
「ストレスを持ち込まない方で気遣いをお願いしますねっ!」
貰ったものは大事にしまい込みつつも、元凶には釘差しも忘れない。鷹柳はギルド支部長として今日も緊急会議を戦うことになるのだ。
「さて、僕の用件は以上だけど。君達の方は大丈夫かい?」
「あ、さっき対戦時に木葉をD級って紹介していたんですけど……」
「そうだね。先日に咲乃さんとストアラスさんはD級に昇格しているね。確認していなかったのかい?」
「あ!吉祥院さんがブチ切れていたから換金もそこそこに帰ったので………」
鷹柳は依和那の気まずそうな説明に苦笑する。
「なるほどね。彼女達はD級に上がったばかりだけど条件は満たしているからC級試験を受けられるよ。せっかくだし申し込んでおいたらどうだい?」
「有難うございます。リーダーが目覚めたら相談してみます」
「ああ、そうするといいよ」
「今度はボクがいいかな?ミス姫宮」
依和那の話が終わったと見計らってハリスが話かけてくる。自分に話しかけてくる以上パーティ単位のことであると考えると用件もなんとなく予想が付く。
「はい。どうしましたか?」
「うん。折角だしボク達のパーティと合同でダンジョンを探索しないか?正直、ZAKUROとヨダには興味が尽きないし、そのZAKUROの影響を受けている君達にも興味がある」
ハリス自身は良くも悪くも好奇心優先の人物であるが、残りのメンバーは知らない人間だ。一先ず保留にして調べてから決めようかと思っていると。
「依和那、いいのではないでしょうか。他のパーティの探索を見るというのも。もう少し春休みもありますしね。何よりヨダの戦いをマスターと貴女は見た方がいい」
確かに西田中に教わって以来、都斗はともかく自分達は我流で突き進んできた。偶には他のパーティを見るのも悪くないかもしれない。
「分かりました。合同での探索を受けましょう」
「有難う。どこのダンジョンにするかは地元の君達に決めてもらった方がいいかな?決まったら連絡をしてほしい」
「はい。それではっと」
一先ず依和那とハリスは連絡先を交換してその場は解散した。
木葉が目覚めて経緯を説明すると乗り気になっていたので、近場で鷹柳の異動先でもある名古屋第1ダンジョンを探索することとなった。
ぷりぷりいいキャラですよね。
同時間で短編も投稿しました。




