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第82話 ゴーレム、気高き秩序を語る

ご来店いただき誠にありがとうございます。

「ど、ど、ど、どーすんのぉ?」


 なぜか木葉が吉祥院と対戦することとなり、当の本人は動揺し過ぎてランマーのようになっていたが地面は転圧されていないようだ。


 あれからジュースをぶっかけされて怒り心頭な吉祥院から逃げるように、ドロップの精算だけして木葉の家に皆で帰ってきた。木葉達の春休み中は一緒に行動するということで都斗も付いてきている。


 結論から言うと吉祥院は木葉を相手として対戦が成立した。してしまった。途中で怯えまくっている木葉を見て冷静になりそうになった吉祥院を柘榴が煽りまくった。怒り狂ったその表情は元が端正でも、まるで山姥の様であったと後に都斗は語っていたとか。


 とかく吉祥院(S級)木葉(E級)の対戦が整ってしまい、剣闘士役の片割れたる木葉は絶望的な戦いに途方に暮れていたという訳である。


 当の元凶である柘榴はというと帰る途中のホームセンターで買ったトラロープでお白洲に引き出された罪人のごとく簀巻きにされて、脚の上にジャ〇プが積まれていた。取り調べの最中のようだ。


「あたしが吉祥院さんに勝てるわけないでしょ!どうしてあ、あんなこと………ガタガタガタ」


 お裁きを申し渡す前に再び転圧を始めた木葉に同情しながらも、なんか考えがあるんでしょう?という視線を依和那から向けると柘榴は頷き口を開く。


「まあ思惑はありますが、それではまず吉祥院舞姫という探索者についてです。最近影の薄い依和那からどうぞ」


「だれの影が薄いよっ!こほんっ。吉祥院舞姫さん23歳で都斗と同い年ね。クラン【気高き秩序】に所属するWER8位のS級探索者。レベルは公称201の200越え。両手に持つチャクラム以外に小型のチャクラムを遠隔操作する近・中兼用の前衛よ。その戦い方から剣が舞ってるようで【舞剣】という二つ名が付けられたわ」


 依和那の説明にふんふんと聞いていた木葉は顔色がどんどん青ざめていく。説明に一区切りついたところで一緒に聞いていた健が手を上げる。


「チャクラムなのになんで【舞剣】なんだ?」


「それは以前使っていたのは短剣だけど、全方位に刃がある方が使いやすいらしくてチャクラムになったから二つ名は以前の武器かららしいわ」


「へー」


 感心したような声を出すと健は気の毒そうに、泡を吹きそうになっている姉にちらりと視線を向けた。


「それで、柘榴はなんで吉祥院さんをわざわざ挑発したのよ?強さの格付けはついてたんだから、あのまま終わらせておけばよかったんじゃないの?いくら舞剣を使っていなかったとしても、相手に反応もさせず倒してたんだから吉祥院さんも力の差は気づいたはずよ」


「ふむ。吉祥院舞姫が所属するクラン気高き秩序はあまり評判がよくありませんが何故だかわかりますか?」


 石抱?中の柘榴に話を向けると何故だか吉祥院の所属するクランの話を始めた。


「え、ダンジョン内で治安を守ったり、探索者のトラブルを解決したりしているって聞いたことあるけど」


 木葉がおぼろげな知識を引っ張り出して自信なさげに答えると、柘榴は正解だと頷いた。


「元々はそのような目的で結成された自警団的なクランであったことは間違いではありません。しかし、あくまで自主的な活動でありなにがしか権限があるわけではないことを念頭においてください。その歴史はこの世界にダンジョンが発生した時期辺りまで遡ります。その頃はクランではなく【警備班】というシンプルな名のパーティでした」


 ふんふんと木葉や健、セレスタは頷いているが、ある程度知識がある依和那や都斗は黙って聞いているのでそのまま話を続ける。


「警備班はダンジョンを攻略するほか、犯罪行為に走る探索者を捕えたり、ダンジョン内で探索者同士が揉めた時に仲裁して、時にはギルドと協議して新たなルールを設けたりとしていました」


「トても善い行いだと思イますが」


「ええ、その行いに共感した者達が加わりクランとなり全国規模の活動をする巨大な集団になりました。ですが人が3人いれば派閥が出来るとは言ったもので、人が増えると様々な考えの者がいます。中には治安を守ることを誇りとするのではなく、治安を守ってやっていると他者に対する優越感を持つための道具にするものも」


「うわ~」


 貧困時代に見下されたこともある健は嫌そうな声を出す。


「当初はそうした者もそれほど問題にはなりませんでしたが、時がたてばかつての混乱期を知らない者達も加わり始めて30年近くも経てば新陳代謝の激しい探索者界隈ですから20~30代くらいの者達が大部分を占めます。当時の想いなどほぼ忘れ去られて、彼のクランの大きくは警察やギルドと協力して治安を守ることが使命だ派と我々が秩序を決める…むしろ我々が秩序だ派に別れました」


「あ~~~。なんとなく分かったけど先をお願い」


「吉祥院舞姫は秩序派です。そのせいでクランマスター自体は使命派ですが、クラン気高き秩序は秩序派が優勢になっている状況です」


「WERにランクインするほどの探索者がついてればそうなるっすよね」


「麗華さんは30年前を経験しているから秩序派は好きじゃないのね」


 全員が納得して天を仰いでいたが、柘榴がついでとばかりに補足する。


「因みにこの辺りがギルドが気高き秩序より浪人業の館を頼りにする要因です」


「田中の兄ちゃんも災難だなー。でも、秩序派の考え方を聞いただけでもげんなりするけどギルドから忌避されるってことは具体的になんかやらかしてんのか?」


「そうですね……。下劣な方でも勝手に他パーティの後を付いて行って護衛料を請求したり、ダンジョンの上層を乱獲して間引きと称したり、有望そうな新人を脅したりして強引に勧誘したり、新人を指導の名目でただ働きさせたりといった程度の可愛いものですよ」


「可愛くねぇよ!?ヤ〇ザじゃんか!」


「さすがに殺しやクスリや人身売買などはしていませんから小悪党といったところです。これだったら【黒龍の牙】の方が悪いことやってましたよ。とはいえ、ギルドとしては新たな探索者が育たなくなる行為ですから勧告したりしているようです」


「あ~~~うちは藤堂さんがいたころは、勢力の半分くらいがガチ悪徳ギルドだったっすからね~~」


 深く突っ込みたくないけど柘榴が藤堂をどうにかしたことについては消極的に感謝している雰囲気を都斗が出すと、健はそんな業界に小型犬のような姉がいて大丈夫だろうかと本気で悩みだす。


「しかし、ソんな方がS級になれるのですか?S級は人格判定もされルはずでは?」


「吉祥院舞姫はただの情弱です。人格自体は悪いわけではないのですが、実態など知りもせず聞き触りのいい文句に踊らされるだけの道化。ですので麗華は吉祥院舞姫の行動に否定的な立場なのです。アレにS級を与えたギルドも節穴だったってことですね」


「えらく辛辣っすね。なにかあったんすかすか?」


 鮫羅木の時とは違い、始めから吉祥院に対して嫌悪感を持っているような態度に違和感を感じた都斗が尋ねると、柘榴はむ、と眉根を寄せた。


「そんなものはありませんよ。初対面ですしね。しかし、影響力の強い立場に居ながら無自覚にこの国、ひいては世界の防衛力低下に一役買っているという愚かさが私の目的と正反対なので気に食わないだけです」


「「「「「あ~~~」」」」」


 柘榴の答えに鈍めな木葉ですら理解が出来た。


 柘榴の目的は主の精神的・肉体的充足であり、そのために木葉が夢を追えるようにと鍛えているし、その舞台となる世界が存続できるように行動をしている。かなりひねくれた寄り道をしているが人類がダンジョンに勝てるようにすることも目的としている。


 鮫羅木などは悪党であるが自身が強者であり傘下もまた戦力となりうるので、藤堂派がいなければ目的のために必要な人材である。しかし、秩序派は自身も成長せず新たな芽も摘み取るという柘榴にとってはゲロ以下の存在である。


 そんな存在の旗頭になって後押ししている人物を好ましく思うはずがなかった。おそらく麗華の血縁でなければ早々に意味深なお掃除されていたであろうことを想像できたのは都斗くらいであった。


「ですのでマスター。殺っちゃって下さい!」


「字がおかしくなかった!?今の」


 爽やかにサツガイ指令を出された木葉は全身の毛を逆立たせて拒否の意を込めツッコむ。


「それにさすがにあたしが吉祥院さんに勝てるわけないよ」


「そこに関しては本当は上級職に就いてからと思っていた切り札を授けます」


「切り札?」


「はい」


 そう言って柘榴が懐から黒いフラッシュメモリを取り出すと、ひょいと木葉に取り上げられてぽいと捨てられた。メモリは捨てられた拍子にイケボで「ジ〇ーカー」と音声を発していた。


「柘榴。真面目にやって」


「ハイ」

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくおねがいします。

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