表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/92

第79話 ゴーレム、次のクエストを出す。

ご来店いただき誠にありがとうございます。

「はぁぁぁっ!短剣技ー急所斬り」


「せいっ!速剣技ー隼突き」


「PYGYYYYYYYYY」


 木葉のスキルで手足の腱を切られて力を入れられなくなったタイミングで、依和那が心臓を貫ぬくと中層ボスであるオークジェネラルは悲鳴を上げて地に伏すとドロップの宝箱を残して消えていった。


「やったあ!中層をクリアしたよっ!」


「本当にやったわね!」


「わっちも同レベル帯の仲間とクリアしたのは初めてっす」


「わたクしも皆さんと一緒に目標を達成できたコとがうれしいですわ」


「wood」


 木葉達は春休みに入り東京まで遠征に来ていた。と、いうのも柘榴が次の目標とご褒美に進みたいというので、オーソドックスな魔物が出現する東京のダンジョンまで長期休みを利用して泊りで探索に来ていた。


 そしてこの数か月で濃密な経験をしていた木葉達は新宿ダンジョンで中層をついに攻略することが出来た。1年も経たずに中層を攻略できるというのは、これまでではかなり早い部類になる。


 一通り喜び合った後、依和那はついと視線を木葉に向けると呆れたようにつぶやく。


「それで………いつまでああしているのかしら?」


 依和那の呟きを聞きつけたセレスタと都斗も苦笑しながら木葉を見ると、虚無の表情をになった木葉の背に柘榴が虫のようにしがみ付いていた。


「むぅ。なんですか?よいではないですか!重量軽減で重さなど感じないはずですし、きちんとサポートもしていますよ」


「そうなんだけど、普通に恥ずかしすぎるよぉ。ギルドの受付でなんか生暖かい目で見られるし!」


 柘榴の抗議に木葉が悲しそうに独り言ちるが、それを柘榴の聴覚は右から左に関所もなく通過させた。


 柘榴が遠征から帰ってきて1か月ほど経つが、これでも木葉が学校などで出かける間は我慢が出来るようになった方で、帰宅の次の日などはとにかく酷かった。


 木葉が登校しようとするとついて行こうとして、留守番をするように言うと「びゃーーーーーっ!!!」と駄々をこねはじめた。かと思えば、「至高、至高、至高」と鳴き真似をしてチラチラと視線を送り、鳴き声が「シコシコシコシコ」となったところで健が頭をはたいて止めさせた。


 恥や外聞がない柘榴はこういう面でも強すぎた。時間が無くなってきたので濡鴉に柘榴を抱えさせると、木葉はとっとこと学校に行ってしまった。


 割と容赦ない対応に健は姉が毒されていると思いながらも登校していった。


 帰宅してまだ濡鴉に捕まっている柘榴を見て、すっかり忘れていた木葉は濡鴉に放すように言うと解放された柘榴がすぐ飛びついてきた。


 しばらく抱き着いた後、加速してもろもろの家事を早々に終わらせて、またしがみ付いてきた。


 咲乃家の面々もいつもとは違う方面で挙動不審な柘榴を心配したが、次の日には概ね平常に戻っていた。しかし、それからも割とよくくっ付いてくるようになっていた。そう、時や場所を問わずくっ付いてくるようになったのだ。


「それで、柘榴の身体はまだ直らないのかしら?」


「もう少しですね。創造主でしたらすぐ直せるのですがね………」


「そうなのね」


「そうしたら、マスターを乗せてあげましょう。ゴーレムライダーですね!」


「それ、ただの肩車かおんぶっすよね」


「しかも短剣では攻撃ガ届きませンわ」


「それなら攻撃が届くようにマスターを振り回しましょうか?」


「それ、あたしが人間鈍器になってるだけだよ!?」


 本体に戻った柘榴が負ぶさると木葉が潰れてしまう。そのため、逆に木葉を乗せたり振り回したりと無駄に自信満々で提案したのに、すげなく却下されてそこはかとなく不満げな雰囲気を出していた。なぜその意見が通ると思ったのか。


「あ、宝箱!」


「正直なところわっちらドロップ品よりも良い装備してるっすけどね」


 都斗の言うことももっともであるが、それでも宝箱にはロマンがあるので4人とも楽しみな顔で駆けよっていく。


 中身は中層相当の小盾であったが、誰も使わないので売却することにした。木葉達のパーティとしてはハズレであるがドロップの開封はそれでも楽しそうであった。


「そうです。マスターこれを」


「んう?ああ、ご褒美!まだ選んでないよ?」


 魔術の知識中級(漫画)を出してきた柘榴に不思議そうに木葉が尋ねるが、他の面々はにこにこしながら木葉が他の物を選ぶはずがないでしょといった顔で見守っていた。


「魔術装備は深層で使えるものですし、携帯宿は仲居ゴーレム付きの旅館だったのですがマスターは欲がありませんね」


「え゙っ?ううううっ……いじわる」


「ふふっ。さて、次のご褒美ですが」


 柘榴の発表にごくりと全員が息を呑み発表を待つ。皆の視線を集めると、少し勿体ぶって人差し指を立てて振る。


「今回のご褒美ではメインクエストとサブクエストを出させてもらいます」


「??」


 言葉の意味が分からず木葉が首を傾げると柘榴がわざとらしくため息を吐いて肩を竦める。


「マスターの為のはずのご褒美がこのままだと他人にばかり渡ってしまいますからね。ですので、メインクエストでは魔術の知識上級と上位ドラゴン素材装備と固定スキルオーブ(空間魔法)、そして錬金術レシピ集の中から1つとしましょう。課題はレベル100となり上級職にクラスチェンジをすること」


 レッスン3ともなるとかなりご褒美の内容がとんでもないが、それよりも世間に必要そうなものが2つあることに木葉は頭を抱えた。


「あ、あのぉ~ひとつをサブクエストに~」


「ダメです♡」


 達成までに考えておいてくださいね。というと、もう1本指を立てる。


「サブクエストですが、クラフトソーサリーの材料を集めた時のように素材採取クエストです。ゴースト系魔物の魔石、鬼火で焼いたトレントの炭、ミスリル、それからスピリットスパイダーの糸です。どれも所在の知れたものですので在処はギルドで聞けますよ。そもそもこの依頼自体がギルドからですので積極的に協力してくれるでしょう」


「どうイう事ですの?」


「それはですね。日本でも何か所か霊系ばかりが出るダンジョンがあるのですが、攻撃手段が少なすぎて攻略どころか間引きも出来ないようなのですよ。ですので、霊系に通じる武器の作り方を教えて欲しいということで」


「まっとうな理由だったわ。だけど、素材自体が霊系から採れるものなのね………」


 理由には納得したが、依和那とても嫌そうな顔をしている。木葉に至っては髪が逆立ってピルピル震えていた。


「それって素材を集める方法はどんな手段でもいいっすか?」


 霊系には通常の魔法も物理よりはマシ程度の効果しかないため、都斗はサブクエストの条件から攻略方法を考えて出題者に確認をした。


「はい。どんな方法でも構いませんよ」


「それはよかったっす。それじゃご褒美を聞きたいっすね」


 都斗の質問の意図を理解した上で柘榴が返事を返すと、通じたことを理解した都斗はにやりと笑って未だ発表されていない報酬の話に移した。


「いいでしょう。ご褒美は、天上のハーブを使ったカレー、イオのミルクから作ったクリームのケーキ、ドラゴンのマンガ肉、サルミアッキです」


「カレーーーーーッ!!」


「最後の普通の食べ物よね!?しかもタイヤの味って言われるアレよね」


「天上のハーブってヤバいブツなんじゃないっすか」


「ケーキには惹かれるモのがありマすわ」


 木葉はともかく、他の3人は興味はあるがという程度でいまいち反応は薄かった。しかし、最後のものはともかく希少素材を使用した料理ともなればそこには大量の魔力が含まれている。つまり、今の木葉達程度であれば食べるだけでもそこそこ一足飛びにレベルアップしてしまうほどの代物であったりする。以前木葉が食べた黄金の林檎や蟠桃は特殊効果にリソースが振られた素材の為、魔力が取り込まれることはなかったが、もしオピオタウロスの肉を食べていたらレベルアップしていた。


 しかし、柘榴としては中身のないレベルアップは木葉の夢の為にもあまりさせたくはないと考えていたが、割とトラブルに巻き込まれがちなので早く上級職に就かせたいという焦りもあってサブクエストとして提示したという密かな理由があった。ただし、サルミアッキは普通の菓子である。


 そんなことはつゆ知らずとも先程迄のビビリっぷりが何処かに飛んでいってしまい、興奮して跳ね回っているリーダーの為に付き合う気になっている3人であった。


 今回の探索の目的は果たせたので、一行は柘榴が設置したワープポータルで1階層まで跳ぶとダンジョンを出て売却カウンターへ向かおうとした。若干ざわついているな~と不思議に思いながら歩いていると、突如よく通る声が木葉達に向けて発せられた。


「見つけたわよっ!邪悪っ!」


 なぜかそれを聞いた皆の視線がとあるゴーレムに向けられたらしい。

泣き声ではなく鳴き声なのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ