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第77話 間話・柘榴の平凡な日常

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 柘榴の朝は早い。むしろ、夜も静動モードで働いているので休んでいない。


 咲乃家の面々も柘榴を心配して休むように話をしたことがあるが、ゴーレムは休んだところで自然治癒があるわけでもないと論破されて終わっていた。ただし、時々メンテナンスはしているようなので、一応それで渋々納得していた。


 現在の柘榴はまだざくろちゃんぼでーだが最近エプロンの腰の部分にキーホルダーサイズの木葉の姿をデフォルメした人形がついていた。やや薄汚れた布で作られたそれを揺らしながらキッチンに向かう。


 大きめの踏み台とライトナイトを使って器用にミニオムレツを作ると更にサラダ、パンを用意して3人分の朝食をテーブルに並べていく。


 準備が出来たら家人を起こしに行く、まずは佳未亜の部屋をノックすると返事があり既に着替えを済ませていた佳未亜が扉を開けた。


「あら、おはよう柘榴ちゃん。いつもありがとう」


「はい。おはようございます」


 部屋の中に入ると佳未亜を座らせて髪とメイクをセットしていく。色々な技能を調べていた柘榴は整髪の腕もかなりのもので、これには佳未亜も喜んでいた。


「本当に助かるわ。柘榴ちゃんが留守の時に自分でやるのが大変になっちゃったわ」


「ふむ。自動で出来る魔道具でも作りましょうか?」


 特に先日の遠征の際には苦労していた様子の佳未亜に柘榴が軽く返すと急に真顔になった。


「それはダメよ。失職者が出るわ」


「は、はい」


 佳未亜の迫力に押されながら頷くと、話をしている間にセットを終えて次は健の部屋へ向かう。


 思春期の健は他人に部屋に入られるのを嫌がるかと思いきや、元々1Rの西風荘に住んでいたこともあって特に気にしていないようだった。


「健。起きてください」


「う…うん。ああ、おはよう」


 目をこすりながら起きた健を見届けると、最後に主ーーー木葉の部屋に向かう。


 咲乃家の小型犬はノックで起きるなどという奇跡は起こらないので、おもむろに扉を開いて中に侵入すると意外と良い寝相の主がベッドですやすや眠っていた。


「マスター、朝です。起きてください」


「むにょむにょ。あと5分~~」


「ベッタベタです。全く面白みがありません!ですので罰ゲームです」


 小さい体で木葉をゆすると寝ぼけながら定番のセリフを吐く木葉に半眼になった柘榴は懐から瓶と刷毛を取り出して、瓶に突っ込んだ刷毛を木葉の鼻の下に塗る。


「むぎょあぁあああっ!キャインキャインッ!!」


「おはようございます、マスター。爽やかな朝ですね」


「爽やかじゃなくて、酸わやかだよ!何塗ったの!?」


「酢です。そんなことより朝食が出来ていますよ」


 一息すったところで目をカッと見開き跳び起きた木葉が鼻を押さえて転がりまわる。それを冷静に見ていた柘榴が挨拶をして、涙目で見上げた木葉が抗議するのをスルーして朝食に誘う。


 尚もぶつぶつ言っている木葉の顔を濡れタオルで拭いてダイニングに送り出す。


 3人揃って朝食を食べた後、佳未亜は出勤していき健はニュースを見ている。そして木葉は柘榴と朝のトレーニングに向かった。試験期間中は朝トレも中止していたが試験が終わったので再開をしている。朝トレにも大分慣れてノルマの完了が早くなった木葉が戻り、身支度を整える時には健も準備を終えており2人してそれぞれの学校に向かう。


「「行ってきます」」


「行ってらっしゃいませ」


 何気に一般家庭より生活水準が上がっている咲乃家であった。内部は中々広い西風荘であるが、元が元なので1つだけどうしようもない欠点がある。それは、空間拡張で内部だけを広げているためベランダがない。もっと言えば内部は普通サイズの窓が外部では小窓サイズしかない。そのため、ベランダや窓から布団を干すといったことが出来ないのだ。


 しかしそこは昭和のアパート西風荘。駐車場はないが、共同の物干し場があるので食器を片付ける傍ら回していた洗濯物と一緒にリネンも干す。住んでいるのが殆ど自宅にいない田中とセレスタだけなので出来る所業である。


 洗濯物を干し終わったら掃除である。各人の部屋から共同部屋風呂トイレと置物をしている濡鴉まで掃除を澄ませると、アパートの共用部を拭いて、掃き掃除を行う。これは単に主が過ごしやすいようにするために自主的に行っているだけである。その際に視界に入った工作員や裏家業の者達も好奇心・敵意・悪意と()()()()()()をする。


 一通り掃除(意味深)を終えると、最近通い始めた道場に向かう。


 基本的に魔道具をや魔術を多彩に扱い戦うスタイルの柘榴に武術などは今まで必要と感じていなかったが、ジゴイトに圧倒されたときに技術があればなんとかなった場面があったのではないかと金田や浪人達の立ち回りを思い出して、そう感じていた。


 そのため人類の武術を習得しようと考えて、鷹柳から紹介をしてもらい週に2、3日通っていた。


 道場主はかつての災厄の際に探索者として戦ったことのある壮年の男で、道場は柔術であるが多方面の武術を用いる武闘士のジョブを持ち、名は犀川拳弥という。最初に流水〇砕拳を教えて欲しいと云ったらなぜか門の外にいたという不思議現象も起こった。


 普通に月謝を払って通ってもよかったが、交渉の結果柘榴が魔闘術を教える代わりに犀川が武術を教えるということとなった。犀川が未だ強さへの向上心があることと、探索者も通う道場で魔闘術も教えることが出来ることは利があるという判断からであった。


 最初は3等身の人形サイズが来たことに驚いていた犀川であるが、覚えることと模倣することは得意なゴーレムであるので、教えていて直ぐに気にならなくなったようだった。本来のサイズが来たらいい練習相手になりそうだと期待している部分もある。


 夕食の下拵えに取り掛かる時間に近くなったので、道場を出て買い出しに向かう。


 柘榴は買い物を商店街でする方であった。これは以前咲乃家を助けてくれていた商店があるので、余裕があったとしてもそちらを贔屓するようにしている。受けた恩は機材の修理など困りごとを解決したりして返していたりもするので、口の悪さ程悪いやつではないと商店街では思われていたりする。


 ただし、相変わらず身内でもなく恩があるわけでもない相手には無関心であり、泣いている子供がいても困っている人がいたとしても視線すら向けることがない。常日頃から契約の影響があるわけではないようだ。お人好しの主と足して2で割ったらちょうどよさそうなのであるが。


 買い出しから戻って夕食の下ごしらえを済ませたら、干していた洗濯物とリネンを取り込んで生乾きの水分を魔術で飛ばす。リビングでアイロンがけをしてたたんでいるとインターホンが鳴った。


 誰か見当はついていたが一応インターホンを確認すると、案の定セレスタであったのでリビングに誘いお茶を出しておいて、自分は洗濯物の続きをする。セレスタは編入の為の勉強で柘榴がいるところに来ているだけなのでおもてなしをする必要がなく、むしろ干渉は勉強の妨害になるまである。そのため、最近の柘榴はセレスタの方にも注意を払いながら詰まったところで助言をするようにしている。


 セレスタは物覚えがかなりいい方ではあり、既に中学の内容に入っているが、流石に1、2か月で高校までの学力を身に着けさせることは難しく在学中には追いつかせようと計画していた。


 洗濯をしまい終えた柘榴は各人の部屋に行きリネンをセットするとリビングに戻る。


 セレスタの進み具合を軽く確認すると、自分はスケッチブックを取り出して座ると何かを描き始めた。


「ふぅ~。一度休憩を挟ミますわ」


「ただいまー」


 しばし時間が経過したところで、セレスタが休憩を取ろうとしたところで健が帰宅した。帰宅した健がランドセルを自室においてリビングまで来ると、スケッチブックを置いた柘榴が給仕していたので健も相伴に預かることにした。


「あリがとうごザいます。冬ハ緑茶ですわね」


「ありがと。あったまるな~」


 茶菓子をつまみながら緑茶を呑んでまったりしていた2人だが、ふとセレスタが柘榴が何かを描いていたスケッチブックが置いてあることに気づいた。


「柘榴さん、何を描いていタんです?」


 柘榴は聞かれなければ話さないことは多いが、聞けば大体答えてくれるので今回も直截に聞く。


「ああ、これですか。先日あのお猿と戦った際に創造主謹製の私専用装備を壊されてしまいまして……どうも、他にも仲間がいるようなので性能は何段も落ちますが装備を造っておかなければならないと思いました。そのデザイン案です」


「へぇ~そうなんだ。ちょっと見せてくんない?」


「いいでしょう。他者の意見を聞いてみるのも悪くありません」


 そう言って柘榴が装備案を描いた面を2人の方に向ける。


「「ぶぅーーーーーーーっ!!」」


 それを見た2人は呑みかけのお茶を思わず噴き出した。


「汚いですね。まあ、いいでしょう。私としてはこの絞り込んだ3案から決めようと思っているのですが、この世界には中々いいデザインがありますね。左から順に【スリングショット】【逆バニー】【網に靴跡】です」


「アナ〇イ!?ではなく、はれんちデすわっ!」


「そんなんねーちゃんが見たら倒れるぞ!」


 2人に猛反対されてどことなく不満そうであるが、特にセレスタはこんな服?を来た相手とダンジョンを歩きたくないので必死である。結局、柘榴の装備デザインはパーティの皆と考えることで納得させた。


 その後ティータイムを終えて健は宿題をしに部屋へ戻り、セレスタは勉強を続けていると今度は木葉が帰ってきた。


 試験が終わった木葉は気楽なもので、リビングで愛読書を読んでいる。始めはセレスタの勉強を手伝おうと意気込んでいたが、そこまで役に立たなかったので愛読書を渡されて部屋の隅に案内されていた。


 佳未亜が帰宅したころに夕食を配膳して4人ーーーセレスタも殆ど咲乃家で夕食をとっているーーーが、食事をしている間は傍で給仕をしていた。


 夕食を終えて食休みをするとセレスタは帰宅して、咲乃家の面々がお風呂に入る。木葉が柘榴が頭を洗ったり背中を流したりするのを遠い目をしながら受け入れているのは、しばらく離れていた後遺症がまだ残っているからであるが。


 就寝までは世間の情報収集をしていたりするが、皆が寝静まった後はポーションやクラフトソーサリーを製作したり、今のところ柘榴しか作れない製品を製作したりと内職をしながら朝を迎える。


 柘榴のごくごく平凡な1日である。


佳未亜と木葉は陥落していますが、健は将来自活することを考えて時々柘榴に家事を教わっています。

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