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第71話 ゴーレム、砕ける

ご来店いただき誠にありがとうございます。


※シリアス注意 残酷表現あり

 大ハンマーを囮にしてジゴイトの視界から逃れていた柘榴は拳を突き出した体勢になっているジゴイトの後頭部に蹴りを入れた。いわゆる延髄切りである。


「ぐおっ。くそっ。ハエみてぇにうっとおしいっ!」


「目が腐っているのですか?こんな華麗なハエがいるわけがないでしょう。ああ、腐っているのは目ではなく頭と性格でしたか」


 ついでとばかりに挑発されると、もはや目の前のむかつく敵(柘榴)しか目に入らず、敵を壊そうとただ力任せに拳を脚を牙を頭を振るってくる。現在柘榴は他の者が目に入らぬように先ほどまでのようにヒットアンドアウェイで立ち回ることなく、体捌きで最小限の回避をすることで相手の行動を制限していた。


 しかし、この戦法は柘榴の身体に着実にダメージを蓄積させていた。ジゴイトはスピードこそ同格の存在内では遅い方だが、それを補って余りあるパワーと無敵によるタフネスを持つ。それこそ掠ることすら出来なくても、拳や蹴りを放つだけで発せられる衝撃だけでも物理において絶大な防御力を持つゴーレムにダメージを与えていた。


(一撃一撃のダメージが軽くない。受け流しの技術でも持っていれば違っていたでしょうか?………今ないものを考えても仕方ありませんね。ただ、このままではあまり長く持ちそうにありません)


 一瞬が永遠とも思えるような綱渡りの攻防に焦りを覚え始めたときに、唐突にジゴイトの拳が明後日の方に空振りした。


「なっんーーー!?」


 強制的に体勢が崩されたジゴイトが驚いて足元に視線を移すと床が円を描くように流れており、その中心に目を向けると小生のような青年が剣を床に突き立てていた。


「渦生成。うまくいったようだね」


 武器の能力とはいえ使用者の能力に依存する以上は使用者に対する負担もある。限界を超えた濁流のような渦を生成した田中はスタイリッシュに鼻血を流しており、ボルテックスブレイドにも幾重に罅が走っていた。


「とはいえ、これでも僅かに体勢を崩すしかできないのか……」


 渦を維持する田中にジゴイトが殺意を込めて足を踏み出したところで四方から水が集まり周囲を走った。ジゴイトがそれを目で追った逆方向にトリトンが現れて五叉の槍を突き出した。


「ブリューナク。起動(アクティベイト)暴走(バーンアップ)


 貫きの概念を暴走させた五叉槍がジゴイトの鎧を貫通して脇腹から後背に抜けた。


「ごばぁっ!?てめぇえええええっ!!」


「ぐあっ」


 トリトンを憎しみがこもった目で見たジゴイトは槍で貫かれたままトリトンを蹴り飛ばす。まともに蹴りを喰らったトリトンは大きく吹き飛ばされた。


 目の前の敵から目を離した隙に柘榴が一振りの神器を取り出して、ブリューナクによって貫かれている箇所に突き立てる。


「があああああああああああああっ!!!」


「ナーゲルリンク。起動(アクティベイト)暴走(バーンアップ)


 傷口を抉られる痛みに叫んだジゴイトに更に深く抉って神器を暴走させる。神器を暴走させた柘榴は一瞬で距離を取ると、ちょうど駆動限界を迎えたヘルメスグリーブの効果が切れた。そして、暴走させられた神器は爆ぜて千の破片となってジゴイトの半身を吹き飛ばした。


 剣を支えとして膝をつく田中や、何とか起き上がったトリトンに浪人達がナーゲルリンクの刃が部屋を引き裂いたことによる粉塵が晴れた場所を見守っていると半身を吹き飛ばされたジゴイトの下半身が目に入った。


「やったカ?」


「あ………」


 この世界のフラグなど知らないビリが致命的な失言をしてしまい、浪人の誰かが声を漏らして世界の時が止まった。


「………だ、大丈夫だよな?」


 復活した小林が恐る恐るジゴイトの残骸を観察するが何も動きは見られず、胸を撫でおろしたところでソレは起こった。


 ジゴイトの残った下半身からうじゅるうじゅると繊維質が伸びて、あっという間に元の猿顔を形成して傷ひとつない姿に戻っていた。さすがに鎧は再生しておらず毛むくじゃらの上半身を晒していたが。


「う、うそでしょ………」


 薬師寺の漏らした絶望の呟きなど耳に入っていないのか、再生したジゴイトは自らの身体を見下ろすと確かめるように手を動かした。


「くそがっ!こんな雑魚共に【不死】まで使わされるとはよぉ………。くそがっ!くそがっ!くそがぁあああああああっ!!」


 久しく感じたことなどなかった痛みと、格下相手にしてやられたことによる屈辱でジゴイトは吠え猛りぎろりと視線を弱者(浪人達)に向けた。


「ひっ」


「まず、てめえらから殺ってやるよぉおおおおおおっ!!」


 ジゴイトの咆哮は物理的な衝撃となり浪人達やビリを打ちのめして委縮させていた。そこへ腕を大きく振り上げて爪で引き裂くように袈裟懸けで振り下ろす。


「超獣技牙ー蹂躙牙斬」


 庇おうにも足はまともに動かず距離は離れている。故に一人離れた場所にいる田中は絶望の表情を浮かべた。そして、恐怖の表情を浮かべる浪人達がジゴイトの空間すら切り裂いて迫るスキルに蹂躙される寸前。


「サルタカラー。起動(アウェイク)。アイギスー起動(アウェイク)


 首輪の神器を起動した柘榴が浪人達の前にアイギスを持って出現した。浪人達の表情は恐怖から驚愕へと変化していた。柘榴ならばジゴイトのような強大な相手と戦うときに足手纏いなどを庇うはずがない、いやむしろそうあるべきであると思っていたからである。


 しかし、その行動に誰よりも驚いていたのは柘榴自身である。浪人達が思っていた通り思考では柘榴は足手纏いは切り捨てるべきだと考えていた。この中で最も勝率が高いのが己であるならば、必要ならば弱者など切り捨ててでも勝利を得るべきだと考えていた。


 で、あるはずなのに己は弱者の前に出て正面から受けてはいけないはずの攻撃に身を晒している。柘榴の思考は混乱によってエラーで埋め尽くされていた。


 それは柘榴本来の思考ではなく、木葉の想いが契約を介して影響を与えてしまっていた。これまでの主は戦いに身を置く英雄ばかりでそういったことを割り切る覚悟もあったが、木葉は手の届かない理想にも手を伸ばしたがる甘ちゃんともいえる主である。柘榴はそれを疎んではいないが、今回は仇になってしまっていた。契約の影響を考慮していなかったことは柘榴の痛恨のミスであった。


 神器としての性能を起動したアイギスで蹂躙牙斬を腕を軋ませながらも、なんとか承けきったところに既にジゴイトが追撃を仕掛けていた。


「ぎひゃひゃっ。超獣技牙ー轟牙滅砲」


「っ!?」


 そしてーーー轟牙滅砲をまともに受けたアイギスとそれを持つ柘榴の腕は砕け散った。


「「「「そんなっ!!!」」」」


「はっ。雑魚を庇ってくれるとはなぁ。かかっ。らぁっきぃ~~っってやつかぁ」


 二の腕から先を失った柘榴に向かって跳ぶとダブルスレッジハンマーを叩きつけようとするが、柘榴は辛うじて躱す。しかし、地面にクレーターを作るほどの衝撃を間近で受けたため吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまった。少し離れていた場所にいた浪人達も皆吹き飛ばされて地に伏していた。


 脚に不具合でも生じたのかよろよろと立ち上がる柘榴に余裕の歩き近づいて、顔前に立つと柘榴が迎撃で生やした神器や魔道具を【無敵】で承けとめて、お返しとばかりにその脳天にダブルスレッジハンマーを叩きつける。


「!!」


 まともに受けた柘榴は端正な顔面に亀裂を入れられながら地面に叩きつけられて自身がクレーターを作ることになった。


「ぎひひっ。これだよこれぇ。やっぱ圧倒的な力の差がある戦いがいいよなぁ」


「そ………の…意見……には、さ……んせ…いし………ます……がね」


 髪を掴んで持ち上げられた柘榴がジゴイトの軽口に対して言語機能が異常をきたしているのか切れぎれに言葉を発し賛同を返す。ただし両者の結論に至る理由には大きな違いがある。ジゴイトは他者を嬲る加虐性の欲求から来る思想であるが、柘榴は効率的に結果を得る為の合理性からの思想である。


 ジゴイトもそれは理解しているため不機嫌そうに鼻を鳴らすと柘榴の顔面に拳を叩きつけてそのまま壁に打ち付ける。


 更に嬲るためにあえてスキルを使わずに柘榴の全身に拳や蹴りを浴びせていく。


ゴッバキャッビキィッゴッゴッゴッガシャァンンンギギギッゴギグシャッ


「うっぷ。おぅえええええ」


 肺を持たないため息が漏れることもなく、神経を持たないため反射で体が反応することもない。しかし、抵抗することも出来ず打たれ引き裂かれて解体される柘榴の姿は凄惨で尼子はその場で吐いてしまい、他のメンバー達も青白い顔で自分たちの未来の姿を幻視して動くことも出来ずにいた。


 ジゴイトが嬲るのを止めたときには半ば壁に埋まった柘榴は全身縦横無尽に罅が入り袈裟懸けに深い爪痕が残され、残っていた足も左足が捥げていた。壁に押し込まれる力が無くなったことで柘榴の顔が力なく前面に傾くと紅い宝玉のような何かが転がり落ちた。


 それが何か気づいた薬師寺もたまらず吐いた。


 それは、柘榴の名前に源となった紅い宝石のようなーーー柘榴の眼であった。


苦手な戦闘とシリアスで時間が掛かりました。

特に柘榴の痛覚ない呼吸しない設定のせいで、やられる時もサイレント。

描写に色々迷いました。

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