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第70話 ゴーレム、望まぬ因縁と再会する

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 その声が響くと同時に圧倒的な威圧感が広間を包んだ。物理的な重圧さえ伴っておりそうな威圧で浪人達は既に膝をついており、今までいかなる相手でも表情を変えることのなかった柘榴でさえ険しい表情をしていた。


 トリトンが苦々しい表情をして見据える先の空間が歪み、巨大な2足歩行の影がのそりと潜り抜けて降りて来た。


 突如現れたソレは一言で言い表すならば巨大な直立歩行をする猿であった。身長は2.5mほどあり一番身長の高い金田よりも頭2つ分は高い。プレートメイルを身に纏い、武器は持っているように見えないが分厚い筋肉と鋭い鉤爪だけでその肉体自体が脅威であると見て取れた。


 現れた獣は何がおかしいのかにやにやと嗤いながら柘榴たちを眺めている。


「人のうちに不法侵入とは行儀が悪いね」


「へっ。だったら鍵でも掛けとくんだな。まあ、んなもんぶっ壊すがなぁ」


 顔を顰めながら皮肉を口にするトリトンを小ばかにするように軽口で返す。


「虐災暴獣ジゴイト。万古神獄に封じられていたはず。なぜ……?」


 ジゴイトと呼ばれた獣を睨みつけたまま余裕をなくした柘榴がつぶやくと、それを聞きつけたジゴイトが胡乱げに柘榴に視線を移す。


「ぃやぁあーーな名前を聞いたなぁ。おいてめぇっ!どっかで俺様と会ったかぁ?」


「ふっ。ナンパですか?猿まで魅了してしまうとは、やはり私は至高ですね」


 ジゴイトに視線を向けられて、汗腺があれば滝のように脂汗を流していたであろうが、生物的な反応がない己はやはり至高と若干逃避気味に考えながら表情だけ取り繕うと軽口を叩く。


 しかし、その特徴的な語り口が逆に柘榴が何者かのヒントを与えてしまった。


「ぎひひっ。そうかっ!てめぇクソ創造神のところのゴーレムかぁっ!しかも1体だけたぁ、こいつは幸運ってやつだなぁ!」


「ちっ。以前と姿が変わったくらいでは至高のオーラは隠せませんか!」


(非常によくないですね。ジゴイトは奈落級上位ですから、認めるのは非常に癪ですが、僅差で勝利を譲ることになるかもしれません。人間達をおとりにして脱出しますか?惜しくはあるが私ほど代わりがないわけではありませんから、本来ならばそれが最善………。ですが、例え分身でもマスターの失望の顔など見たくはありませんね。それに本体のマスターも悲しむでしょうし。………はぁ、全く合理的ではない思考です)

 

 にやつくジゴイトを正面から見据えながら柘榴は身体から直接1つの神器をトリトンに向かって飛ばした。


「トリトン!人間達を帰還陣へ!」


「分かった!」


 神器ーーー三叉の槍、すなわちトライデントを受け取ったトリトンが田中達を促し玉座の裏にあるコアの間に案内しようとする。しかし、


「おいおい、そんなに急がなくてもいいだろぉ。自分のねぐらみてぇにゆっくりしていけやぁ!」


 それを見とがめたジゴイトが放つ裏拳の衝撃波で浪人達は吹き飛ばされて、後衛職の小林と尼子は壁に叩きつけられて気絶してしまった。そして前衛の田中達も軽くはないダメージを受けていた。


「ぐっ!それは家主のボクのセリフであって、君が言うことじゃないだろ」


「細けぇこたぁ気にすんなよぉ。お前のものは俺のものっていうだろぅ?」


 よく引用される音痴なガキ大将の名言を吐くジゴイトに、冷や汗を流しながら槍を構える。


「ヘルメスグリーブ起動(アウェイク)全開放(フルスロットル)、付与ー強靭ー絶対」


 ジゴイトの意識が逸れた一瞬に飛び出した柘榴は、自らの速度と螺旋鞭を強化して瞬時にジゴイトの背後に回り込み螺旋鞭で腕ごと胴を縛り上げ、更に先端を伸ばしてダンジョン壁に埋め込んで拘束した。


 そこを逃さずトリトンがトライデントでジゴイトの首を狙う。しかし、ジゴイトの口元から笑いが消えていないのが目に入り嫌な予感がして無理矢理に急制動を掛けた。


「ざぁ~んねん」


 嘲笑と悪意を込めた声と何かが張り詰めてぶちぶちと千切れる音が聞こえてきた。それが何か理解した柘榴が瞠若した。


「ふんっ!」


 そして、ジゴイトの気合の声と共に神珍鉄でできた鞭が千切れとんだ。鞭を引いてジゴイトを押さえていた柘榴が支えを失いたたらを踏んだところに、ジゴイトが殴り掛かる。


「アイギス。起動(アウェイク)


「おらぁあああああああああっ!」


「!!」


 とっさに取り出した盾の神器を起動してジゴイトの拳を受けるが、拳の勢いを止めることが出来ずに柘榴は吹き飛ばされて地面を転がる。しかし、転がりながらも勢いを利用して跳ね起きるとジゴイトに向かって駆ける。


 神器を全開で起動している柘榴の速さを追うことが出来ず死角を取られたジゴイトは顎にハイキックを受けて、視線をそちらに向けるがそこにはすでに柘榴はいない。ジゴイトも柘榴を捕えようと腕を振り回すが、手が届くより速く動きスラスターも駆使した3次元的な軌道を捕えることはできなかった。


 跳ねまわる柘榴は後頭部、頭を掴んでの膝蹴り、頬、側頭部、下顎とジゴイトの顔面を滅多打ちにしていき、最後にハンドガン型の魔道具を取り出してジゴイトの鼻の穴に突っ込んで撃った。


「ふごっ!てめぇぇぇぇええっ!」


 効いた様子はないがさすがに鼻に異物を入れられるのは不快であったのか、鼻を押さえて青筋を浮かべている。


「ライトナイト。レフトナイト。行きなさい」


 骨組みだけで出来ているようなゴーレムのライトナイト、分厚い盾と重厚な装甲を持つゴーレムのレフトナイトを出してジゴイトに向かわせると自らは退いてトリトンの元へ来た。


「蹴った感触がおかしい?全く効いている気がしませんね。それと撃ち込んだロードヒュドラの毒も効いていません」


「えっぐぅ。ロードヒュドラって1滴で国一つ滅ぼせるやつじゃん。………でも、効いてないよね、あれ。前はどうやって倒したの?」


「【大魔導】を神器でバフマシマシに盛った上で、空間ごと凝結して万古神獄に放り込みました」


「それ………出来るならやってるよねぇ」


 トリトンの乾いた笑いに柘榴も渋い顔で頷く。


「蹴ると感触があり顔が動くので障壁的なもので防いでいるのではなく、単純に頑丈かダメージを無効化するスキルだと推測します。おそらく【無敵】かと」


「うっわ最悪。状態異常を含めたダメージ無効じゃん。それで、どう攻略するの?」


「ふっふっふっ。至高の私は攻略法を思いついていますよ。マスターの愛読書にヒントがありました」


 トリトンの問いに柘榴は胸元から5つの穂先を持つ槍を取り出して渡す。


「これは…凄まじい力を感じる」


 自身の手にある槍に見惚れるような視線を向けるとぎゅっと握り柘榴に視線を向ける。


「傷つかないなら傷つけられる力を使えばいいのです!ブリューナク。貫く概念を持つ槍です。私が隙を作りますのでブリューナクを暴走させてください」


「なかなか脳筋な作戦だね。分かっ「いや、隙を作るのは小生に任せて欲しい」」


 トリトンと作戦を話していたら田中達が近くに来ており、自ら参加の意思を表していた。


「……死にたいのですか?」


 将来的には戦力になるかもしれないが、現状ではどう考えても田中達の実力では足手まといでしかない。余計なことをするなという意を込めて視線を向けると、勝算があるのか視線を逸らすことなく見つめ返してくる。


「確かに小生達は奴の動きをとらえることも出来ないほど弱い。だからこそ意識もされていないんだ。そして、これがあれば体勢を崩すことくらいは出来るだろう」


 そういって田中がポンと叩いたそれを見て得心がいった柘榴は田中に頷いて返した。それとほぼ間を置くことなくライトナイトとレフトナイトの破片が降り注いだ。


「障壁ー錐形。分かりました。では、最初は私がかく乱しますので後は任せますよ」


「がぁあああああっ!くそがっ!うぜぇんだよっ!」


 効果がないとはいえ一方的にやり込められていることにキレたジゴイトがレフトナイトのかけらを投げつける。


 音速を超えて衝撃波を発しながら迫る欠片を躱しながら正面からジゴイトに向かって駆けると大きなハンマーを取り出して勢いのままに振り下ろす。


 それをジゴイトは躱すことなく正面から拳で迎え撃つ。拳を受けたハンマーは砕け散り破片が散弾銃のごとく巻き散らかされるが、既に柘榴はハンマーを手放して避けていた。


 そして、ハンマーでジゴイトの視界をふさいだ隙にトリトンと田中も動き出していた。



浪人達を見捨てないという思考は木葉との繋がりによる影響なので、本ゴーレムの心がついて行っておらず戸惑って心に理由付けしている状態です。良心回路は旅行中です。

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