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第65話 ゴーレム、深層を蹂躙する(後)

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 5か所目、6か所目、7か所目の小神殿でも柘榴がボスを拘束して行動を制限した上で倒されて、攻撃している浪人達が気まずそうにしているほどだった。


 そして、最後の8か所目の小神殿はーーー入った瞬間に海の中にいた。


 浪人達は急に呼吸が出来なくなった上に装備が体にまとわりついてもがきながら沈んでいき、柘榴は比重から浮くことができないので浪人達より早く沈んでいく。


「結界ー大気ー球体」


 柘榴は声帯で声を発しているわけではないので、水中でも響きはしないが真空でも声を発することはできる。故に沈みながら魔術を使い、浪人達を結界で覆って中を空気で満たした。


「はぁっはぁっはぁっ」「かはぁっ」「げほっげほっ」「た、助かった~」「(◎_◎;)」


 浪人達が結界に囲われたことを見届けた柘榴は、沈みながらボスの正体とこれからどうしようかを考える。


 考えながらしばらく沈み続けると、赤い光が二つ近づいてくることを察知した。


「向こうから出てきてくれるのであれば好都合というものです」


 赤い光が近づいてくると、やがて全身を視認できるようになり、その正体を知ることが出来た。


「おや、みんな大好きな魔物ではないですか」


 赤い光はソレの眼であり、それは八本の触手を持ったタコ。ファンタジー界隈ではお馴染みの強敵ムーブをかます憎いあんちくしょうのクラーケンであった。しかし、特に好かれているというわけではないはず。というか、この世界は深層未到達故に遭遇例がない。


「ふっ」


 海中では浪人達に戦わせることも出来ないので、如意螺旋鞭を取り出して目と目の間の急所に螺旋を打ち込んであっさりと倒してしまう。


「さて、どうやって浪人達を回収しましょうか」


 大物風な登場をしておいてあっさり退場になってしまった哀れなクラーケンのドロップを螺旋鞭で引き寄せながら独り言ちると、胸元からこのはちゃんをとりだして頭にしがみ付かせ、そのまま胸元をはだける。


 はだけられた胸元に波紋が広がり前方に巨大なモノが出現した。出現したモノーーーそれは、巨大な竹で出来た潜水艦であった。


無目堅間(マナシカタマ)。さて、田中達を拾ってここから出ましょうか」


 無目堅間に乗り込み、己が掛けた魔術の痕跡を辿り浪人達の方向へと進んでいくと結界に包まれて海を漂いながら途方に暮れている浪人達を見つけた。


 浪人達からすれば結界のおかげで溺れずに済んだが、柘榴は沈んでいって、出口が見つかるわけでもなく、果ては自分で移動もできない状況ーーー即ち、漂流している状況では正直お手上げであった。柘榴が沈んでいくときに余裕がありげであったことと、結界が無くなれば魚竜艦に乗ればいいので、さすがにまだ命の危険まではまだ感じていなかったが……。


 竹製の潜水艦が迫ってきたときは、すわボスの出現かと慌てていた。しかし、無目堅間が結界ごと浪人を乗せて浮上し、中から柘榴が姿を現すと安堵から弛緩した空気が流れた。


「ありがとう。助かったよ。小生達にも魚竜艦があるとはいえ、ボスに通じる確証はなかったからね」


「賢明ですね。私が判断する限りではクラーケンには及びませんし、速度もややクラーケンの方が速かったように感じます」


 なんとなく予感はしていたので、柘榴からこの小神殿のボスの名前が出てもあまり驚きの声はあがらなかった。慣らされてきたともいう。


「ほぇ~。クラーケンってずいぶんとビッグネームの怪物ね。そういえば、柘榴さんって魔物を知ってたり知らなかったりするけど、あれってどうして?他の世界にいた魔物は知ってる……とか?」


 尼子が興味深そうにクラーケンの名前を出すが、ふと柘榴が河童を知らなくて攻撃?を受けていたのを思い出して尋ねてみる。


「その通りです。この世界に限らず過去に出現した魔物は、その名前と共にそれなりに知識はあります。しかし、いかに至高である私でも知らない事はありますし、ましてやこの世界の影響を受けて生まれた魔物の知識はありません」


「ふーん。ダンジョンも俺らの世界の影響を受けてるんだな。そんじゃ、妖怪系統の魔物は日本特有かもな」


「全てではありませんが、そういうこともありますね。世界自体が影響しあっているので、共通するものはありますよ。例えば、貴方達が今乗っているこの無目堅間は日本神話でも登場しますし、セレスタのようなエルフもこの世界で伝承されているでしょう?」


「なるほどな。セレスタさんは美人でよかったな。原典仕様だったら夢も希望もないしな」


「(`・ω・´)コクコク」


 柘榴の説明に小林は納得するとセレスタの美貌を思い出してにやけるのに、金田も頷いて賛同していた。女性陣はそんな2人をゴミを見る目で見ており、その様を見ながら田中は冷や汗を流しながらスタイリッシュに胃のあたりを押さえていた。


 そんな話をしている間に小神殿の出口に辿り着き、無目堅間でそのまま出口に突っ込んでゴリゴリ削りながらくぐっていく。出口から出きって地面にゴトリと落ちると、中から全員が出てきて地に足が着く感覚を堪能する。


「足が着くってこんなに安心するのね」


「蒼さんにさんせー。うちは当分海水浴とかいいわ~」


 体を解しながら女性陣が地面のある場所に戻れたことを喜んでいる。男性陣も足踏みしながら地面の硬さを感じていた。


 アルコノハ不足の柘榴は落ち着かないそぶりでそわそわしてきているが、それでもしっかりと給仕をして最後のボス部屋に向かう前にしっかりとまずは休憩と軽く食事を提供する。


 休憩を終えて中央神殿の石板のところまで来ると、小神殿で手に入れた宝石をくぼみに挿し込んでいく。


 8個全部はめこむと宝石が光を発して、中央神殿の扉が開いていく。扉が開くと柘榴はさっさと中に入ってしまい、浪人達も顔を見合わせて頷くと扉の中に入っていった。


 中に入るとそこは船の上のようだった。木製の甲板にところどころ穴が開いており、全体的に朽ちている。そして、帆には特徴的なあのマークがあった。


「………これって定番のアレよね」


「幽霊船だよな」


「ちょっと半兵衛!はっきり言わないでよ!」


 顔を青ざめさせながら尼子が小林に叫ぶ。どうやら尼子はホラーが苦手なようだ。


 まるで尼子の叫び声に反応したように甲板のいたる所に白いものが生えてきて、さらに伸びるとしゃれこうべが姿を現して、全身が見えるころには立派なパイレーツスケルトンが実っていた。


「あへ~。そっか~。スケルトンって生えてくるものなんダ~」


 甲板にしゃれこうべが並んだあたりで白目を剥いて絶句していた尼子が恐怖から錯乱しており、他の浪人達もホラーにそこまで弱くないが普通に気持ち悪い光景に顔を顰めていた。


 スケルトンがどんどんと増えていく中で、海賊帽と眼帯を着けたひときわ大きいキャプテンスケルトンが出現しーーーバギャン!全身が現れる前に如意螺旋鞭に顔面を砕かれて倒れた。


「「「「「………………………。」」」」」


「呆けている場合ではありませんよ。リーダー格の残骸も雑魚も消えていません!」


「「「「「……………………っ!?」」」」」


 不意打ちの瞬殺劇に呆気にとられていた浪人達が柘榴の言葉にはっとして、意識を敵に戻して警戒する。浪人達の視線の先で倒したはずのキャプテンスケルトンが復活して不意打ちへの怒りか手に持ったサーベルを柘榴に向けて吠えた。


「SHYAAAAAAAAAAA!!」


 キャプテンスケルトンの号令により屯っていたパイレーツスケルトン達が一斉に襲い掛かってくるのを迎撃しようと浪人達も構える。


「試したいことがあります。こちらに集まってください」


 接敵するより前に柘榴からの提案があり、一瞬でアイコンタクトを取り素早く柘榴の周りに集まった。


「付与ー強化ー威力、付与ー衝撃」


 浪人達を集めた柘榴は如意螺旋鞭に魔術を掛けて縦横無尽に鞭を振るいスケルトン達を砕いていく。柘榴の意思ひとつで伸縮自在な鞭は船を隅々まで蹂躙して引き戻した時には形を残すことができた骸骨は残っていなかった。


「凄まじいな」


「そうですね。でも、まだ消えていないわ?」


「これ………は、ギミックエネミーか?」


「それか、本体が別にいるか……ね」


 浪人達の推測を肯定するかのように骸骨の破片がカタカタと動き修復し始める。


「私は攻略の正解が1つ分かりましたが、至高の私に任せますか?」


 浪人達が周囲を観察する中で、柘榴があっさりと謎解きの完了を告げる。もはや驚くこともなく、浪人達は顔を見合わせて微かに笑い、代表して田中が言う。


「小生達はこういう謎解きが好きなんだ。すまないが、付き合ってくれ」


「えっ困ります。私の好みはター〇ネーターですので」


「………まずは、あの扉から中に入ろう。柘榴君、援護を頼む」


 柘榴の戯言をスタイリッシュにスルーして、船内に入るための扉を目指す。復活したスケルトンを再度柘榴は砕いて扉までの道を切り開いていく。


 一切スケルトン達を寄せ付けることのない柘榴の螺旋鞭により、阻まれることなく一行は船内に入っていった。


魔物の名前が出たりでなかったりする理由の説明です。

情報が持ち帰られて名前を付けられます。

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