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第64話 ゴーレム、深層を蹂躙する(前)

ご来店いただき誠にありがとうございます。



 このはちゃんで一先ず希釈アルコノハを摂取した柘榴が復帰すると、浪人達一行は2か所目の小神殿に向かった。


 道中は遠いこと以外は何事もなくあっさりと小神殿に着いて中に入る。


 中に入ると砂浜と海が広がっており、空には雲が広がっていて全体的に暗い場所になっていた。


「明らかに建物よりフィールドがでけぇ。ほんとダンジョンの中って空間どうなってんだよ」


 小林がダンジョンの理不尽にぼやくと、その声に反応したわけではないであろうが海中から人の頭ほどある魚の顔が無数に水面から目から上だけをのぞかせていた。


「きもっ!!」


 ホラーさながらの光景に尼子が鳥肌を立てながら後ずさる。その尼子の姿を目にした柘榴が異常に気付いて、クラフトソーサリーを投げる。


「尼子、これを使いなさい!」


「え?え?え~~い、起動」


 訳が分からず使う間にも柘榴は次の手を打つ。


「耐性ー呪詛ー朋輩。これで問題ありません。これはディープワンズ。1体1体は下層ボス中位程度の力しか持ちません。田中、指示を!」


「下層ボスってかなり強いと思うんだけどな?とはいえ、こんな経験が出来る機会はないだろうね。柘榴君、まだ海にいる奴らを頼むよ。小生らは陸に上がった十数体を倒そう。皆、柘榴君の一撃を待つよ」


「はい!」「わかったわ」「ピーヒョロロロー」「りょーか…金田が昔のファックスみてーになってる!?」


 田中は多数の敵ならば柘榴が大規模魔術を使用すると予想して、仲間に待機を指示する。そして、柘榴も期待されるものを読み取り魔術を発動する。


「炎球ー拡散ー過熱ー全方ー極大」


 柘榴の魔術によって海の上空に巨大な炎球が発生して幾百に分裂して海に降り注いだ。降り注いだ炎球は海を熱して茹でられたディープワンズ達の孔という孔から蒸気を立ち昇らせた。絶命した1体のディープワンズの藻掻いて振り上げた手が海面に落ちると、過熱状態になって薙いでいた海面が一気に煮立った。


 蒸発の激しい音と、熱風にディープワンズ達が振り向いたところに田中が号令をかける。


「今だ!半兵衛君はデバフを!前衛組は最初の1手は1人1殺だ。後はいつも通りの連携で行こう。今の小生達ならやれる!」


 田中の言葉通り下層での激しい戦いの中で新しい技術をものにして、レベルも上がった浪人達に特殊能力が封じられた下層中位程度が10数体程度いたところで倒せないはずがなかった。


 いくらか負傷する場面はあったが全体的に危なげなくディープワンズを殲滅することが出来た。


 ディープワンズは群体扱いなのか、最後に倒した1体が消えたとことにドロップアイテムが落ちていた。


「これで2個目ね。そういえば、さっき戦い始めの時何をしたの?うちにクラフトソーサリー使わせたりしてたけど」


 とりあえず言われるがままアイテムを使っていた尼子が、状況が落ち着いたのを見計らって柘榴に問いかける。


「ええ、ディープワンズが同化の呪いをかけていたので、解呪のカードを渡したのですよ。貴女は気づいていませんでしたが、腕に鱗が広がり始めていました。その間に私は呪詛に対する耐性の魔術を貴女達に掛けたのですよ。放っておいたら貴女達はアレの1体になって海に帰ったことでしょう」


「うげ。危ないところだったのね……ありがと」


 因みに柘榴が無効ではなく耐性にしたのは、自己の魔力耐性と合わせれば防ぐことが出来るだろうという判断の上で無効にするとスキルの耐性が生えづらくなるからである。


 さすがにあのホラーな光景を見せられた波辺で休む気にはならず、疲れた体に鞭うって小神殿から出ると入口付近で少し休憩をとることにした。


 3か所目の中ボスはサハギンの上位種ツナギンが現れたが柘榴に一瞬で捌かれた。ドロップは捌いたことによる効果なのか、ツナギンの切り身盛り合わせだった。ツナギンは腹筋がシックスパックに割れていたのに、大トロには脂がのっているのは謎であったが。


 4か所目はガルグイユという名の竜種が現れた。初手で柘榴がガルグイユの口の中に如意螺旋鞭を打ち込み、帽子をかぶり右目に傷跡を書いた上でサングラス掛け、螺旋鞭を釣り竿のように引いているところに浪人達が全力で攻撃をして倒した。


 4か所目の攻略を終えたところで浪人達の疲労がかなり溜まっていたので、この日はここまでとして小屋キューブを展開して夜を明かすこととなった。


 浪人達が順番に風呂に入っている間に、柘榴は夕食を用意していた。メニューはツナギンのドロップを使ったツナギン尽くし丼にした。


 これには浪人達も絶賛してお代わりを何度もしていた。


「今日だけでボス格を4体も倒したけど普通は未踏領域のボスは数か月から数年って単位で攻略出来るもんなんだ。だから本来こんな速度で攻略なんてありえない」


 夕食を終えて寛いでいるところで、小林が姿勢を正して唐突に口火を切って柘榴に話し始めた。


「ところが俺らは今回あんたに引っ張って貰ってたった1日で中ボス4体、下層ボスを含めれば5体だ」


「それで………何が言いたいのですか?」


 ただの弱音か礼でも言いたいのかいまいち分からなかったので、率直に聞き返す。


「柘榴さん、あんたがいなければ俺らはこの深層の最初のボスで全滅していただろう。3か所目は分からないが4か所目のボスは純粋に下層ボスとは比べ物にならないくらい強かった。それ以外のやつらも危険度は段違いだ。アメリカのパワージャスティスも深層はまだ様子見をしていると聞く。なあ、俺ら人間は深層を攻略できるのか?」


 未知の凶悪な特殊能力を体感して、深層の魔物の強さを見せられた浪人達は眼に恐れを宿して、弱気から己にではなく他者(柘榴)に答えを求めていた。


しかし、


「攻略してもらわなければ困ります。賢者の卵ともあろうものが情けない」


 見下した顔であっさりと嗤い飛ばされて、小林はあっけにとられた顔で柘榴を見上げた。


「いや、割と真剣に悩んでんだけど?っつーか、賢者の卵ってなんだよ」


 責任感からくるプレッシャーを吐露した悩みを笑われてむっとした小林が噛みつく。


「学術士は最上級職への選択肢に条件を満たした場合、賢者への道が開かれるジョブの1つです。本来深層はレベル255を超えて最上級職にクラスチェンジした者が挑むような領域です。それこそ、上級職までとはジョブの性能も成長度合いも比べ物になりませんからね」


「へ!?」


 自身の悩みから思いもよらぬ情報の爆弾を落とされて小林は思考停止するが、流れ弾を喰らった他の浪人達もともに停止していたので問題はない。ないか?


「さて、用事がありますので外します」


 そういって柘榴が部屋から出て行った後もしばらく停止していて、復旧するのにしばしの時間を要した。


 一方で小屋から出た柘榴はこのはちゃんを抱きしめて蹲った。調子の悪そうな柘榴をこのはちゃんが心配そうになでる。


「ありがとうございます、このはちゃん。そろそろ精神が不安定になってきましたね。明日位に一度帰らせて貰いましょうか」


 柘榴がこのはちゃんを安心させるよう微笑みながらに言うと、木葉ちゃんが「え、あれって本当だったの?」という顔をしたのを見て、笑みの質が変わった。


「帰ったらマスターとOHANASHIしないといけませんね。せっかく邪魔をしないよう電話は我慢していたのに」


 それを聞いたこのはちゃんは震えあがり本体の無事を祈るように手を合わせたが、どう見ても合掌して冥福を祈っているように見えた。


 朝になり最上位職というとんでも情報はとりあえず棚上げにして、目の前のダンジョン攻略に集中することで平静を保っていた。本当は心ゆくまで情報を聞き出したいところではあるが、任務優先の為、断腸の思いで好奇心を押し殺していた。


「残りは半分だね。さあ、行こうか」


 田中が声を掛けて、一行は5か所目の小神殿に向かって歩き出した。



ダンジョン内は電話やネットができる設定を忘れていて、かなり書き直した回です。

時々読み返さないと以前書いていたちょっとした設定を忘れてしまいますね。


中ボス戦を1体1体書いていくと長引くので普通?の戦闘はダイジェストでお送りします。


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