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第6話 ゴーレム、ざまぁする(物理)

ご来店いただき誠にありがとうございます。


前半少しバイオレンスです。

 騒がしい方に目を向けて波賀を見つけてしまった木葉は、先ほどの出来事を思い出してしまい怯えて縮こまってしまう。


 しかし、その行動が余計に目立たせてしまい、大声でしゃべる芳賀の目に留まってしまう。


 木葉を見つけた波賀は木葉が生きていることに驚き、囮にしたことを報告されるとまずいと考えたが、今ここにいるなら少し脅せばいいと思いなおした。さらに、先ほど隠し部屋で木葉もいただいてしまおうと思っていたことも思い出し、その獲物が帰ってきたことに内心歓喜した。まさか、この場に怪物より恐ろしい存在がいるとも思わず。


「木葉ちゃ~ん。生きていたんだね~。よかったよ。心配していたんだぜ~」


 白々しいことを言い、にやけながら近づいてくる波賀に木葉はますます縮こまる。

 その様子を取り巻きの男たちはおこぼれを想像してにやにや笑い、女は苦々しい顔をして木葉を睨みつける。


「よくあの怪物から逃げれたね~。生還の祝いにちょっとそこらでーーーー」


 木葉を連れ出すために、手を伸ばす波賀の腕が掴まれた。


「おおん?おおっ、なんでこんなことろにメイドがいるかわからんが、綺麗なねーちゃんじゃんか。どうだねーちゃーーー」


 ぐしゃっと音を立てて波賀の腕が握りつぶされる。


「あ……あぎゃあああああああ。お、俺の腕-----ぼぎゅっ」


 最後まで言い終えることなく、柘榴により拳であごをかちあげられ強制的に黙らされた。

 

 ズドンッ!


 殴り飛ばされた波賀は天井を突き破り、腰から下だけが力なく垂れ下がる。


 突然の凶行に周囲が静まり返るが、取り巻きの男たちは息巻いて柘榴に向かってくる。


「てめえ女ぁ、よくも波賀さんをやってくれたなっ!」


 それぞれの武器を抜いて掛かってくるのを、柘榴は冷徹な目で見ていた。


 柘榴に搭載されている疑似人格が、激しい怒りを訴えている。


 たとえ、下等生物と認識している人間であっても、何もかも足りていない貧弱な者であっても、マスターに忠義を尽くすのがゴーレムの疑似人格に搭載された本能ともいえる特性。


 それが契約前にあったことでも関係ない。己の前で木葉にあのような顔をさせ、死なせかけたものを許せるはずがない。


 柘榴は本気の殺意を込めて、残りの波賀一行を見る。


(原形も残さずコワシテヤル)


 柘榴は男が突いてくる槍の柄を横から叩いてずらし、そのまま体を回転させて回し蹴りを顔面に叩き込む。槍の男はもんどりうって倒れこみ頬を陥没させぴくぴく痙攣している。


 もう一人の男が短剣で横なぎに斬りかかるのを後ろに1歩下がりギリギリでかわし、振り切って体勢が崩れている男の懐に踏み込み蹴り上げる。男の体が浮かび上がり、重力にひかれて地に落ちる。


 短剣の男は股間を押さえて、泡を吹き白目を剥く。今日から立派なオネェさんだ。


 周囲の男性探索者たちも、それを見て顔を青ざめながら股間を抑える。


 最後に残った女の方を向くと、女は「ひぃっ」とこぼし、へたり込む。


「君、そこまでにするんだ!何があったかは知らないが一先ずーーーーぶへっ」


 女に向かって、1歩踏み出した時に周囲から1人の探索者が静止を呼びかけながら近づいてくるが、柘榴に殴られ窓から飛び出していった。


「マジかよ。今のA級に最も近いB級と言われている竜崎じゃねえか。あの竜崎をぶっ飛ばすなんてあのメイドはなにもんだ?」


 ぶっ飛ばされた探索者は有名な人物であったらしく、周囲の探索者たちがざわついている。


 そのような喧噪も一切無視して、柘榴は女の前に立つ。


「貴様がマスターを家畜もどきに投げつけたんでしたね」


「え?え?マスター?あんたいったい何なのよぉーっ」


 柘榴は女の言葉に耳を貸すことなく、女の髪を掴み持ち上げる。


「ぐっ、は、放しなさいよ」


 そして、持ち上げた女の顔を勢いよく床に叩きつけた。


「ぶぎぃっ」


 ぐしゃりという音と共に床にひびが入り、血が滲みだしてくる。


 柘榴は女の顔を何度も床に叩きつけて、やがて女が動かなくなると手を放し、びしゃりという音を立て女が自らの血だまりに沈んだ。


 そして、柘榴がとどめを刺そうと拳を振り上げる。


 周囲が静まり返り、息遣いだけ聞こえる中、ガチャリと音を立て波賀達が出てきた扉から眼鏡をかけた30代後半ほどの男性が出てくると、周囲の雰囲気の以上に気づき、女を殺そうとしている柘榴を見つける。


「何か騒がしいですね。--あれは、まずいっ!アイシクルバインド」


 眼鏡の男性が魔法を、柘榴に向けて放つ。


 柘榴は拳を止め、氷の蔦を掴み砕く。


 眼鏡の男性に向けて足を踏み出した柘榴を、茫然と成り行きを眺めていた木葉が平静を取り戻し柘榴に抱き着き叫ぶ。


「柘榴っ!もうやめてっ!やりすぎだよっ!人を殺したりしちゃだめだよっ」


 木葉の叫びに反応して向き直ると、


「分かりました。マスターが殺りたいんですねっ。さあ、どうぞどうぞ」


 パッとにこやかな顔になると、どこかのお笑いトリオみたいに言い放った。絶対意味が分かってて言っているであろう。


「違うよっ!全然違うからねっ!」


 既に平静に戻っている柘榴に、からかわれていることに気づかない木葉がわめく。


「ああ、ちょっといいかな?」


「よくありません。失せなさい」


「ええ……。すまないがここの責任者として、話を聞かせて貰わなきゃいけないんだ」


 責任者と名乗った眼鏡の男性は、柘榴が己の放った魔法を容易く砕いたのをみて力で取り押さえようとすれば代償が大きいと判断したのだろう。務めて穏やかに刺激しないよう、柘榴に話しかける。


「ええっ、責任者って事は責任がある人ですか!?」


 柘榴が木葉に気を許す関係であると見た眼鏡の男性は、木葉にも丁寧に対応する。

 最も彼はもともと物腰が柔らかなので、普段通りでもある。

 そして、木葉は小○構文で驚いている


「はい。初めまして、僕は名古屋第2ダンジョン支部の支部長をしている鷹柳修也です。よろしくお願いしますね。」


「あ、はい。あたしは咲乃木葉です。」


「………………」


 支部長と聞いて緊張しながら自己紹介をする木葉をよそに、柘榴はガン無視を決め込む。


「ちょっと、柘榴。失礼だよ」


 木葉の言にわずかに顔を向けると、


「至高の私には、そこらの下等生物と交わす言葉など持ち合わせません」


 いつものごとく暴言を放つ。


 初対面からの暴言に、さすがに温厚な鷹柳も頬が引き攣る。


「あのメイド何様のつもりだってんだ」

「ちょっと顔がいいからって、性格最悪ね」

「すっごく狂暴だしね」

「はあはあ、踏みつけて罵って欲しい」

「でもホント何者だよ。竜崎ぶっ飛ばして支部長の魔法を掴んでたぜ?」

「なんか変態いなかったか…?」


 周囲がざわつくなか、木葉は涙目で柘榴を睨み


「柘榴!あんまり皆にひどいこと言うと嫌いになるからね!」


 小学生か?高校生と思えない木葉の言動に小柄な見た目も相まって、柘榴のせいで殺伐としていた雰囲気がほっこりする。


「かっかかかかか、下等生物のマスタタタタターに嫌われれれれたところろろろで、平家ですが」


 壇ノ浦で滅亡か?存外効いている柘榴に、周囲と高柳は期待を込めた眼差しを木葉に送る。


「本当?」


 天然で上目遣いを食らい、柘榴は全力で表情を平静に装い言い放つ。


「マスターに嫌われるからではありませんが!嫌われるからではありませんがっ!床に頭を擦りつけて謹聴しなさい。私は創造主メイアリスにより創られた至高のゴーレム!名は柘榴です」


 当初、探索者たちは名乗りよりも、2度言ったことが気になっていた。


 なお、波賀一行は忘れられている。合掌


「「「「ゴーレムっ!?」」」」


 言葉の意味を理解した、探索者たちから驚きの声が上がった。

ゴーレムなのでロボット三原則とかはありませんので、ばっちりトドメも刺せます。


設定として柘榴は契約に必要な資質などはないので、波賀が勇気を出せば主が波賀になるような未来も可能性はありました。

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