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第57話 ゴーレム、人類を信じてみる(ちょびっと)

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 白亜紀に存在したとされる魚竜モササウルスのような姿を持ちながらも、更なる巨体を持つ存在ーーー便宜上モササウルスと呼ぶーーー津波を起こし浪人生たちを呑み込まんとする。


「皆、寄って!結界ー障壁ー全周」


 浪人達が急ぎ尼子の傍によると、尼子は準備した結界術を展開して津波を防ぐ。引き潮により負荷を与えられて軋みながらも防ぎきると、陸地にスズキンやイクテュオケンタウロスに巨大な坊主ーーー海坊主達が合わせて数十体現れていた。


「こ、こんな………」


「今の津波は攻撃であると同時に仲間を呼ぶ効果があったのね」


「こいつってば、フィールドボスとかなのかねぇ?」


 浪人達は冷や汗を流しながら、一番警戒するべきモササウルスから目を離さずに新しく現れた魔物たちの気配を見逃さずとらえる。


「金田君、小生達と蒼君でまずは雑魚達を倒す。その間にボスを引き付けてくれ。半兵衛君は桃花君を守りながら牽制だ。桃花君は皆の様子を見ながら治癒と、ボスがまた大技を使いそうなら結界を頼む!」


「はい」「りょーかい」「('◇')ゞ」「任せて」


「柘榴君も雑魚狩りくらいは手伝ってくれないかい」


「ええ、いいでしょう」


 田中の指示に浪人達は即座にそれぞれの役割を実行に移す。田中に頼まれた柘榴もワイヤーを撚った鞭の先端に槍のような穂先と刃が斜めについた副刃がついた武器を取り出すと敵が密集している地点に向けて振るう。


 明らかに届く距離ではない場所に振るわれたそれは、鞭が伸びて回転する穂先が射線上の魔物達を貫いた。さらにそれを振るうと的確に魔物の急所を狙い、眼や足を潰して行動不能にしていく。


 前衛達が雑魚を掃討する間もモササウルスは挑発スキルを使う金田に噛みつきや体当たり、水魔法といった攻撃を続けていた。金田はそれを魔鉄にミスリルコーティングをした大盾で承けて、直接攻撃の際には魔闘術の破裂攻撃でダメージとヘイトを稼ぎ引き付けていた。しかし、下層の推定フィールドボスで20mもある相手の攻撃を受けていると流石に捌ききれずに傷と疲労が蓄積し始めていた。


「(;´・ω・)」


「いや、金田君。喋ってもいいと思うわよ…」


「ジブン、シンドイ」


「言葉を忘れてしまっているワ」


 幸い初手以降は取巻きを呼ぶ津波の攻撃を使って来ていないので順調に取巻きを減らして、あらかた動ける魔物がいなくなると田中と薬師寺、小林がモササウルスの攻撃に移る。


「薙刀技ー二重断」


「魔剣技ー雷鳴剣」


「複合魔法サンドストーム」


 薬師寺と田中がスキルで下顎を切りつけて、小林が魔法でモササウルスの表皮を削ろうとするが頑丈な表皮には僅かな傷しか付かなかった。


「攻撃そのものは最初の攻撃以外は単純なものだけど、とにかく頑丈でダメージが入らないわ」


「砂でやすりかましても全然削れてないしなぁ」


「しかし、背中側よりは腹側の方が柔らかいようだね」


 小林のサンドストームで背中側は無傷であるが、腹側は細かい傷がついたのを見て田中が分析を述べる。


「いやぁ~。リーダー達のスキルでちょっと血が滲んでるくらいだぜ。まっじで嫌んなるなぁ」


「そうだね。半兵衛君、彼に現代人の苦労でも教えてあげるといい。金田君、僅かでいい。彼の頭を持ち上げてくれ。蒼君は左側の喉元に傷をつけてくれないかな」


 田中の指示を受けて3人は即座に行動を移すと、まずにやりと笑いながら小林が火の範囲魔法でモササウルスの顔の上部を包む。


 田中は魔物のモササウルスには瞬膜があったのを見ていた。地上ならば目を封じれば田中達をとらえられなくなるのではないかと予想した意図を小林は的確に読み取り、火の魔法でダメージは与えられなくとも顔を乾燥をさせることが出来た。


 強制的にドライアイにされたモササウルスは狙い通り涙を滲ませて目を開けられなくなり、地上では感知器官も鈍くなるため敵を捕らえられずやみくもに頭を振り回す。


「鋼人技ー山岳崩」


 そこに金田が潜り込むと魔闘術とスキルを持って渾身の力でモササウルスを転がすように左側から叩きつけるように持ち上げる。さらに追撃で薬師寺が薙刀をすくい上げる様に魔闘術と二重断をもって斬撃強化をした1撃を叩きこむ。薬師寺の1撃によりつけられた肉まで届く傷口に、今度は田中がサーベルを突き入れて雷鳴剣を使うとさすがにダメージを受けたモササウルスが苦痛の方向を上げた。


「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 新しく覚えたばかりの技術も使い立ち回る浪人達は徐々にモササウルスに傷を増やしていく。水棲のモササウルスが陸上に半身を上陸させた状態であるのも浪人達にとっては有利な状況にしていた。


 ところで、その間に柘榴は何をしていたかというと…………何もしていなかった。離れたところからただ浪人達の戦いを見ていただけだった。


 胸元でこのはちゃんが非難するようにペシペシと柘榴の胸を叩くが、柘榴はこのはちゃんの頭をなでながら少しいつもと違う様子で話す。


「今、おそらくこのダンジョンのボスーーーすなわちエゴに観られています」


 その言葉を聞いてこのはちゃんがペシペシしていた手を止めて柘榴を見上げる。


「おそらくここのエゴは何かを見定めようとしています。そうであるならば、人間達を見せるべきでしょう。なぜなら……」


 そこで言葉を区切った柘榴を死んだ魚の目で見上げるこのはちゃんには次の言葉が予想出来ていた。


「この!至高の私を観てしまったら!目が眩んで有象無象など目に入らなくなってしまうではないですかっ!」


 このはちゃんは変なポーズをとる頭のおかしいゴーレムから目を離して、遠くで頑張って戦っている有象無象さんたちを応援するように手をぱたぱた振り回した。


「それに……少しは信頼をしてみてもいいでしょう。人の力を、そして意思を……」


 助けを求めることもなく自らの力で立とうとしている人類を観ながら、ポツリと口の中だけで漏らした言葉は誰の耳に届くこともなかった。


 場面は浪人達に戻り、幾重もの手段を使って傷を与え続けてきたことでモササウルスの下には大きな血だまりが出来ていた。


 一方浪人達も一撃も受けることが出来ない戦いに神経を削られていた。その体に直撃こそしなくても掠めるだけでもダメージを受け、暴れまわることで砕ける岩場すらモササウルスの武器となり浪人達に大小の傷をつくっていた。


 特にタンクの役割の金田などは、尼子の回復魔法がなければ疾うに倒れていたであろうといえるくらいにボロボロの状態であった。大盾も幾度もモササウルスの攻撃を受けてひしゃげてしまっていた。


 回復手段を持たないモササウルスは大量の出血により弱り、大分動きが緩慢になってきていた。このままであれば勝利の目が見えてきていた。しかし、


「SYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAA!!」


 モササウルスが大きく吠えると周囲の波が水しぶきを上げながら激しくなってきた。


「な、なによ。波が激しくなったところでこっちに届いてないし……」


 尼子が震える声で探索者の勘に引っかかる嫌な予感を振り払うように強がる。しかし、増援を警戒していた小林がそれに気づいた。


「リーダー!水位が上がってるぞ!」


 田中達が周囲を見ると水位が上がり、陸地が小さくなっているのがはっきりと目に見えるようになっていた。


「はあっはあっ。陸地を水没させて小生達を強制的に水中に引きずりこむつもりか!」


「ふぅっふはっ。そんなことになったら勝ち目はありませんよっ!水没する前に倒しきるしか……」


 田中の予想に薬師寺は顔を引きつらせるが、田中は冷静に思考を回して打開策を考える。


そして、


「半兵衛君、桃花君、今からかなり無茶なことを言わせてもらう」


「はっは、何でも言ってくれよ、リーダー。今なら柘榴さんの靴だって舐められるぜ」


「田中さん、方法があるなら教えて」


 小林が冷や汗を垂らしながら軽口を叩き、尼子は覚悟を決めて田中に問う。


「2人でモササウルスの周囲に水を遮断する結界を張ってほしい。それがもつ間に小生と蒼君で何としても倒しきる!金田君は全力で2人を護ってくれ」


「ほんとに無茶だなー!覚えたての術だぜ~。まっ、でもやるしかねえか」


「そうね。合体魔術とでも言えばいいのかしら?本当に無茶だわ」


 文句を言いながらも真剣な顔で2人で魔術を干渉させることで規模を拡大する方法を探る。ぶっつけ本番、しかも足元まで水位が上がっている中で時間はほとんど残されていない。


 まさに四面楚歌だが、S級パーティとなるまでにもなってからも何度もピンチの場面はあった。頭を冷静に冴えわたらせて解を導き出すと2人は同時に詠唱した。


「「結界ー障壁ー四方ー結束」」


 小林と尼子の詠唱により田中達とモササウルスを囲うように4方に壁状の結界が顕現して増し続ける水と田中達を隔てる。


「30秒しかもたねえ!リーダー、頼む!」


 結界の術者が小林達と察知したモササウルスが水魔法を放つが金田が全て盾と自らの身体で承けきる。


 その姿を最後まで見ることなく田中と薬師寺はモササウルスに向けて走る。


「付与ー鋭刃、強化ー腕力、強化ー脚力、二連撃、薙刀技ー天別半月(てんをわかつはんげつ)


「付与ー鋭刃、強化ー腕力、強化ー脚力、魔力増幅、魔剣技ー星奏一閃(せいそういっせん)


 強化魔術を重ね掛けして、更に魔闘術を重ねたスキルの一撃で左右からモササウルスの首を挟むように切り裂いていく。


 後を捨てて今持っている手段をすべて使って限界を超えた2人の一閃はモササウルスの首を半ばまで切り裂き、大量の血を噴き出させた。


 スキルを放った体勢のまま地面に倒れて起き上がることすらできなくなった2人は、それでもモササウルスを見据えて警戒を続けていた。田中は倒れる時もスタイリッシュであったのは余談だ。


 噴き出す血の勢いが弱まってくると、モササウルスの頭がぐらりと揺れて全身が地に落ちる。そして、再び起き上がることはなかった。 



誤字報告ありがとうございました。


恐竜って下手なモンスターよりモンスターっぽいですよね。

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