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第55話 ゴーレム、感心する

ご来店いただき誠にありがとうございます。

 スタリッシュに上層ボスを討伐した田中が入口付近にいる一行の元に戻ると、メンバーに速攻で取り囲まれた。


「田中さん!今のスキル何ですか?あれ?でも、スキル名を唱えてなかったような?」


「おいおいおい!リーダーあんなの隠してたなんて水臭いぜ」


「きゃあきゃきゃあっl!しゅてき♡」


「あ、あれって……」


「ナガイセンセイだかヨコヤマセンセイだか分からないやつは黙ってなさい」


「………(´;ω;`)」


 皆が田中に詰め寄る中、薬師寺はキャラ崩壊するほど色ボケしていた。そして、金田は柘榴に冷たく退けられて悲しそう。


「うん。これは皆に教えてもいいのだよね?」


 皆の疑問を置いて田中が柘榴に何かを確認していることに皆の頭に疑問符が浮かぶ。


「私は何かを教えたつもりもありません。ですから、貴方が好きにすればいいのです。まさか少し見ただけで応用までして見せるとは思いませんでしたよ。S級と言うのは中々のものなのですね」


「はっはっは。小生に魔力の操作から圧縮膨張まで見せてくれておいてよく言うものだよ。……やはり君は人が強くなる事を望んでいるのだね」


「まあ、これは剣崎達には言っていますので別に構いませんが。私はマスターのために人類が自分達で自分達を守ることができる事を望んでいます。そうでなければ毎回こうして駆り出されますし」


 最後の言葉に怨念が籠っているのは冷や汗ものだが、これで田中の予想にも答えが出た。


「さて、これは簡単に言うと浮遊魔力を疑似的に固有魔力に変換しているのだよ。そうすることで魔力と自身との親和性が飛躍的に向上する。それにより操作性も威力も上って、纏わせるも破裂させるも飛ばすも出来るということだね。ところで、これに名前はあるのかい?」


「ええ、これは《魔闘術》と呼ばれていました。魔術の様に様々な現象に造形する事はできませんが、魔力のまま使えますので速攻性は高いという優位性があります」


「なるほど。これは前衛に重宝されるものだね。後衛でも先程小生がやった様に足裏で破裂させて逃げたり、弾状にして飛ばしたりすることが出来る」


 魔闘術の説明に区切りをつけると、柘榴はボス部屋から出て適当な場所にワープポータルを設置して戻ってきた。


「さて、次は中層を攻略しますので、また絨毯に乗って下さい。2時間程度で辿り着いてみせますので、そこで野営でどうですか?」


「まるでゲームのRTAみたいね。でも、それがいいわ。うちもお腹空いてきたし」


「そうだね。うん、そうしようか」


 尼子が賛成すると田中も特に異論はなく、むしろペースが早いくらいなので賛成をした。


 再び浪人グ石達を絨毯に乗せると、中層を駆けていく。上層では田中以外の面々は柘榴が魔闘術を使っているのを見逃していたので、今度こそはと目を皿の様にして見逃すまいとしていた。


 背中に穴が空きそうな視線を受けているが柘榴の速度は緩むこともなく、まるで上層の焼き直しの様に中層の魔物を倒していく。


 しかし、中層からは遠距離から水弾を撃つライフルウオや針を飛ばしてくる上に毒のあるギガシーアーチンのような魔物がいるので、見切った上で魔力弾で迎撃しており流石に上層よりはペースが落ちていた。柘榴自身は直撃してもダメージを負うことはないが生身の浪人達はそうもいかない。


「結界ー障壁ー全周。自分で牽引すると言った手前、文句も言えませんね。はぁ」


 流石に遠距離攻撃の迎撃を混ぜ込むのが面倒くさくなったので、浪人達の周りに結界を張り飛び道具は躱しながら敵を倒していくスタイルに変更した。後衛の小林や尼子は魔闘術よりも結界の方に興味が向いているようだ。


 以降はスムーズに進み、大凡の予定時間で中層ボス部屋前に到着する。


 時間にすると大体午後7時頃になっており、中層ボス部屋を越えるとしばらく休める場所がないため事前に話をした通りに、ここで野営をすることになった。


 5人が思い思いに座り込みマジックバッグから取り出した弁当を食べているのを横目に、一抱えもあるルービックキューブのようなものを取り出すと人のいないところに放り投げる。


 放り投げられたキューブはその場で展開していき、あっという間にプレハブ小屋くらいの大きさになったというか、プレハブ小屋そのものの見た目になった。


 ポカーンとしている浪人達を置いておいて、ドアを開けてさっさと中に入り閉めようとしたところで最初に尼子が再起動する。


「待って待って待って。ちょ、お願い待ってっ!」


 食べかけの弁当を置いてダッシュで追いつき、扉が閉まりきる前に足を挟み込んだ。


「いったーーーーい!」


「うちは新聞は間に合ってますが?」


「勧誘じゃないわよっ!?あ……あのね、ちょっとこの家を見せてもらえないかしら?」


 目をギラギラさせてかなり押しが強く頼み込んでくる尼子に熊用スプレーでもかけようかなどとひどいことを思っていると、ペシペシとこのはちゃんが何かを主張し始めた。


 3等身の身体で懸命に尼子を腕差して、室内に向けてぶんぶんと振るしぐさをする。


「む。仕方ありません。入ってもよいです」


 このはちゃんの説得に応じて尼子に入室の許可を出すと、その後ろで4対の期待の目が待ち構えていた。


「セーフティゾーンとはいえ、見張りはしないのですか?ブレイク中ならばセーフティゾーンにも魔物が現れる可能性はあると思いますが?」


「「「見張りは金田(君)がする!」」」「………(´;ω;`)」


「………仕方ありません」


 柘榴はそう言って、門番型ざくろちゃんを小屋の前に置くと全員を小屋の中に入れる。


「これ、これってどうなってるのーーーーっ!?」


 後から入室した4人の耳に先に中を見ていた尼子の声が届く。いや、おかしい。外観は中に入った瞬間に内部すべてが見えるくらいの広さのはずなのにLDKがあり、更に扉がある。明らかに外と中の広さに整合が取れない。田中は現在の自宅と同じ状態なので特に動揺がないが、他のメンバーは驚きに声を失っていた。


 1つの扉が開き尼子が姿を現す。


「あ、みんな!これ、すごいわよ!」


 興奮した様子の尼子が4人の元にきて薬師寺の手を引いてまた奥へ向かうと、今度は部屋と洗面に風呂トイレまであるのを見た薬師寺の声が響いた。


「「「「「お願いします。泊めてください、ドラ〇もん」」」」」


 結局心行くまで内部を見学した浪人達の最初の言葉がそれだった。薬師寺などはつい数時間前まで険悪だったとは思えない変わりようである。しかし、殆どの人類は快適という概念の前に無力なのである。さらに言うと、柘榴の性格が悪いと思っているのは変わらないが、人に対するスタンスを田中との会話や道中の行動で見て、薬師寺は嫉妬によって当たりが強かった最初の態度を反省もしていた。


「はあ、もう好きにしてください」


 浪人達の自由っぷりに匙を投げた柘榴がこのはちゃんを抱きしめて隅っこで座る。浪人達は食べかけの弁当を取りに行って食事の続きをしたり、勉強したり、風呂に入ったりと自由に過ごしていた。木葉達用の小屋のつもりだったのでさすがに布団は3人分しかない。女性陣と体力のない小林が布団で寝て田中がソファを使い、金田は床で寝た。


 夜中に目が覚めた薬師寺が暗闇に光る柘榴の赤い目に驚いて悲鳴を上げるアクシデントはあったが、ダンジョン内とは思えない快適さで体を休めることが出来た。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 一方その頃、木葉達も本日の防衛戦を切り上げ、夜の人員と交代をして都斗の実家にきていた。


「急にお邪魔しちゃってごめんなさい」


「いいえっ!いいえっ!あの、都斗がお友達を連れてくるなんてっ!あのっ!都斗がっ!」


 突然訪問したことに木葉が恐縮していると、都斗の両親はなぜか感動をしており、母親に至っては滂沱の涙を流していた。


「何を言ってるっすかっ!わっちだって友達くらい連れてきたこと………」


「あったかしら?」


「………なかったっす」


 社交性は低くないが眼のせいで人との関わりを深くしてこなかった都斗は図星を突かれて沈黙した。


「と、とにかく、客間を用意して欲しいっす」


「はいはい。ああ、夕ご飯を用意してあるからダイニングに来てね」


 都斗が必死に話を逸らすと、両親はにこにこしながら流して客間を用意しに行った。探索よりも疲れた都斗は猫背になりながら都斗の部屋に荷物を置いてからダイニングを案内する。


 川崎ダンジョンに向かう際に都斗の実家には連絡を入れていたので、食器が不足しない様に大皿での夕食が用意されていた。


『お食事まで用意していただいて申し訳ありませんわ』


「あら、気にしないでいいのよ。噂のお嬢さんに会えたって自慢しちゃうんだからね」


 母親が冗談めかして言う傍らで、父親が色紙を持ちながら頷いている。


 木葉達のことを聞きつつ、都斗の過去のあれやこれやをバラされて当人が逃亡を図る一面もあったが、和やかに夕食の時間は過ぎて、翌日の作戦会議という名のガールズトークを都斗の部屋ですることになった。



なんと今回出た小屋は閑話で麗華と話をした後に作った試作品です。

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