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第52話 ゴーレム、参戦決定する

ご来店いただきまして誠にありがとうございます。

 柘榴がワープポータルを出してからその場は阿鼻叫喚となった。


 それも当然であって、これまでの探索では日帰りができない領域まで探索をする攻略勢はダンジョン内に持ち込む物資を厳選して、命を危険にさらしながら野宿をしていた。もちろん深く潜れば潜るほど長居をすることになり水・食料などは尽きてくる。


 松本ダンジョンのように自然が多いダンジョンであれば現地調達も多少は出来るところもあるが、大多数のダンジョンは長期滞在に適した環境ではない。


 物資を多く持てる容量の多いマジックバッグを持っているかどうかが、ダンジョン攻略の鍵といっても過言ではなかった。ーーーーーー今までは。


「何かあるとは思っていたけど、思った以上の爆弾が出たわ……」


 柘榴から秘密道具を引き出した依和那は、ざくろちゃんがあるのだからコピーロ〇ットみたいなものがあるのではないかと思ったが、出てきたのはどこ〇もドアであった。


「それは攻略最前線のダンジョンで使いたい……いやしかし、川崎では……ぶつぶつ」


 鷹柳は血走った目で勝手に使い方を妄想しているが、柘榴とものの考え方が近い鮫羅木は取らぬ狸のなんとやらとばかりに狂騒を冷めた目で見ていた。そもそも柘榴の持ち物は間接的に木葉のものであり、接収などしようとするものなら柘榴の反感を買うだろうし、木葉が自由に使わせてもらえるのであればご褒美制度などは取らないだろう。もっとも、割と甘やかしていて、分不相応なやや高性能な装備は与えているようだが。


「おい、鷹柳。妄想に浸ってる暇なんてあんのかよ」


「はっ!そうでした。あまりの出来事に思考が飛んでました。ーーーそれで、柘榴さん。それを使うことでこちらの要請に応えていただけるのですか?」


 鮫羅木に意識を呼び戻された鷹柳はワープポータルをどのように使うことで、調査部隊加わってくれるのかを確認する。


「川崎ダンジョンも一般的な洞窟型ですので、明日中には下層入口まで進めます。そして、中層と下層のセーフティゾーンに設置します。定時になったらGET〇ILDを流しながらポータルから帰ります」


「サラリーマンですかっ!?探索に定時などありませんよっ!」


 定時ダッシュするサラリーマンのような作戦に思わずツッコんでしまう。


「しかし、私はコノハシウムを1日摂取しないと萎れてしまいます」


「あたし、なんか光の巨人の必殺技みたいな成分を出してるのかな?」


 自分のにおいを嗅ぎだす木葉を背後からきゅっと抱きしめると、濡鴉もてくてく近づいてきて木葉に抱き着いた。


「これは冗談ではなく、()()は主から長く離れると精神がとても不安定になります。これは私の…というよりは、ゴーレムタイプ従魔の性質ですね。濡鴉もそうでしょう?」


「wood!」


 柘榴に問いかけられて濡鴉が肯定するように頷いたのを見ながら話を続ける。


「かつて主と引き離された私の妹が一都市を滅ぼしたこともあります。あの子は戦闘型ではなかったので、都市程度で済みましたが……」


 それを聞いた者たちの顔は血の気が引いて蒼白になった。鷹柳としてもリスクが大きいだけなのであれば柘榴を外したいところではあるが、A級が未帰還になるような異常に対してはたとえS級を投入するにしても少しでも成功率を高めるためにこの強大な戦力はどうしても欲しい。


(クククッ。迷っていますね。嘘は言っていません。濡鴉のような自我の薄いタイプは暴走するでしょうが、私達のようなはっきりとした自我を持つタイプであれば不安定にはなりますが、それくらいです。妹が暴走した要因の一つに主と引き離されたことはありますが、直接の原因はまた別です。しかし、これなら諦めるでしょう)


「それはどれくらいの期間でどのような症状が出て、どれくらいで取り返しがつかなくなるのですか?」


(な…ん…だと?)


 鷹柳が柘榴の運用を考えるために恐る恐る詳細を尋ねるが、当の本人は内心驚愕しながら首を捻る。


「うーーーん?1日も離れると手が震えてイライラしますかね?そして猛烈に主を構いたくなるのです。そして2日目には激情のままに暴れだすでしょう、多分?」


(さっさと諦めなさい!この海鮮揚げ物が!)


「wooood?」


 内心で鷹柳を罵りながら、確信が持てないような感じで首を捻りながら答える。濡鴉も一緒に首を捻っていた。それを聞いていた探索者も首を捻りながらどこかで聞いたような症状だと記憶を掘り起こすと、すぐに思い出して手を叩いた。


「ああっ!なんか聞いたことあると思ったらアル中か!」


 その探索者の言葉で一斉に木葉に視線が集まり、いまだ柘榴の腕の中にいた木葉が動揺する。


「コノハシウムじゃなくてアルコノハだったわね。ふふっ、柘榴と濡鴉はコノ中なのね」


 依和那がくすくす笑いながら言うと、それが引き金になって探索者たちから笑いが漏れる。


「確かに症状としては近いものがありますが、私たちのこれは種族特性なので治しようがないのですけど……」


 不服そうに柘榴が言うと、笑いを収めたがまだ漏れそうになっている依和那が謝る。


「ごめんごめん。でも、あの柘榴が性格以外にこんな弱点があったのね」


「どういう意味ですか、依和那?雲中白鶴、清廉潔白、品行方正な私がまるで性格に難があるようなものいいですが」


「「「「「それはない!」」」」」


「悪辣、非道、凶悪、あっk……ぶへぇ」


 全員に否定されても動じていないが、更に調子に乗って続けた1人が神珍鉄拳でぶっ飛ばされた。


「ああっ、救援に行く前に人数を減らさないでくださいよ。というか、緊急事態中なのになごんでる暇などありませんよ!とりあえず、さすがに毎日帰っていただくわけにもいかないので、柘榴さんはそのコノ中?の対処法はありませんか?」


 鷹柳に問われた柘榴は手のひらサイズの人形を1体取り出すと、人形の手をひらひら動かす。


「これって、あたし?」


「はい。このこのはちゃん人形にマスターの陰も……はありませんでしたね。髪の毛を少し貰いますね」


((((生えてないのか))))


 視線が再び集中して、今度は別の意味で顔を真っ赤にした木葉の髪を毛先を整えて少し切り取ると人形に入れた。


「それ……釘を打ったりしないよね?」


「しませんよ。っと、複製ー精神ー転写」


 不安そうな木葉に上の空で返事をしながら人形に魔術を掛けると、柘榴の手の中で人形が勝手に動き始めた。


「わっ、動いた!?」


「マスターの思考パターンの一部をコピーしたので、マスターのとるような行動をとってくれます。このこのはちゃん人形で誤魔化しながら、時々帰って本物を摂取しながら行くしか出来ません。ーーーと,

いいますか、いい加減諦めなさい!なぜ、私が行かなければいけないのですか!?途中からしれっと私が助力することが確定した流れになっていましたが、私は断りましたよね!?」


「柘榴、お願いっ!」


「分かりました。至高の私に任せてください!」


 はっと自分がダンジョンブレイク解消に助力する雰囲気に流されていることに気づいた柘榴が駄々をこね始めようとしたところで、木葉の伝家の宝刀でこれまでのやり取りをすべて無にするような早さで了承した。


 かくして柘榴のダンジョンブレイク対策参戦が決定した。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「そういえば、俺装備がねえなぁ」


 話がまとめられて川崎に移動しようとしたところで、決闘という名の戦闘訓練で愛用のハルバードも鎧も壊された鮫羅木がポツリとつぶやく。


 ヒヒイロカネという現代では未知の素材を受け取ったが、加工の方法から研究をしなければいけないので装備に使えるようになるには少し時間がかかるだろう。


 とはいっても、壊れた装備はドロップ品であったので同等の予備はない。


「どーにかならねえかぁ?」


「気安く肩を組まないでくださいチンピラが。……貴方は運転は出来ますか?」


「おお、出来るぜ」


 肩に腕を乗せられた柘榴が心底嫌そうに腕を払いながら聞くと、ニンマリ笑って肯定する。


「でしたら、貴方が川崎まで運転しなさい。その間に修理しておきます。あと、3人分の部屋を一晩用意してください」


「よっしゃ!さんきゅーなっ!」


「部屋はわっちに任せるっすよ。いやーてっきり木葉ちゃん達はお留守番させるのかと思ったっすよ」


「……マスター達の顔がついてくる気になってましたので。それに、探索者になることを目指すのでしたら少し早いですがダンジョンブレイクは必要な経験かと思います。1日だけというのも初めてならちょうどいいかと」


 気合の入った顔をしている3人に顔を向けて返事をすると、都斗もそちらを見てなるほどと納得した。


「仕方ないけどパーティとしての動きはぶっつけ本番になるっすね」


「都斗にはこれを渡しておきますので、私がいない間に覚えておきなさい」


 柘榴に渡された初級魔術の本をめくると、都斗の瞳が眼鏡の奥で輝きだした。


「おおーーーーーっ!ありがたいっす!でも、わっちが貰ってもいいんすか?」


「マスターに所有権を渡して、マスターが広めることを決めたのです。ならば、経路がギルドからになろうが私からになろうが、それは私にはどうでもいいことです。魔術の習得が許可制でもないのですから大丈夫でしょう」


「法整備の隙をついたやり方っすね。でも、嬉しいっす。やったっすーーーっ!」


 都斗が小躍りしながら本を抱きかかえて歩いていくのを、やれやれという風で見ながら連れてきてよかったと思っている鮫羅木が柘榴が乗れる特注のカチコチ座席と重心のずれたワゴン車に悲鳴を上げるまであと5分。

 


鮫羅木は正体の分からない悪い予感によるストレスから解放されて、更には強者と思う存分喧嘩が出来たのでイライラが解消されてただのチンピラになっています。

柘榴に近い精神をしているので身内にはある程度鷹揚ですが、一般市民からするとただの怖い人です。

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